今年のベスト的な話

気づいたら12月ですよ。年の瀬ですね。

家にいる猫もそろそろ寒くなってきたのか積極的に膝にのってくるようになりました。こっちとしてもあったかいし暖房いらずで便利な事この上ないんですが、ちょいちょい爪をたててくるのだけはホントにやめてほしいです。テメーは気分よくなって「ちょっくら指でも伸ばしてみようかな!?」なんつっちゃってるのかも知らんけど結構なとこまで刺さっちゃってるんだわ。

あと僕の分まで毛繕いしてくれるのも汐らしいといえばそうなんだけど舌がブッチャーの肌の200倍はギザギザしまくってて舐められるたびにヒリヒリ痛いんす。チェッカーズもちょっと勘弁してくれっていうレベル。ちょっとでも体勢を変えようとしたら不満タラタラですからね。わかってくれとは言わないがそんなにオレが悪いのか。。。

そんなこんなで今回は猫の爪切り......ちがう、今年よかったなにかの話。

↑今年を締めにきてくれ!


この季節になるとこぞってやってくるのがAlbum of the YearとかBest Track of 2015とかその手のヤツ。まだ今年も半月くらい残ってるのに勝手に終わらすなよ!とにわかに思いつつ鉄は熱いうちに、今年の汚れ今年のうちに、さもなくば老木曲がらず、モノにも時節、と言った具合になにかしら都合があるんでしょう。

そういう性分なのでまだ自分の中でベストを決めることは出来ないんですが、候補は順調に絞られてきています、というのが今回の本題。

まずみなさんの興味が失せないうちに紹介しておきたいのがLe Millipedeのデビューアルバム。レーベルのAlien Transistor自体がすでにカルトなんですが、その中でも群を抜いて怪奇派。だけどポップ。

ナンセンスでシュールな世界観をチャイルディッシュな音で包み込んだ逸品です1曲目のHappy Planet Indexがいきなり全開で超ナイス。

MoondogPascal ComeladeHerbert好き、Kozeのギャグセンスが愛しい、ジャンピエールジュネシュヴァンクマイエルここ10年のNHK教育に受信料を払いたくなる人にはドンピシャです。たぶん。
HercelotさんTomgggさんDE DEさん好きにもオススメ。ファンタスティックプラネットにやられたあなた、そろそろ志人以外にも聴けるアーティストが結構出てますよ。

カシオのVL-1がまたいい味をだしてます。このシンセを使う人に普通の人はいないってことなんでしょうか。シンセ、シーケンサー以外にもなぜか電卓としてつかえる優れもの。カシオだからね。

1980年発売、通りの奥さんが家計簿を計算しながら飽きたら音も奏でられるという全主婦待望の機能つきでした。イッツ・ア・未来。スーパー未来過ぎておののいたロックフェラーが三菱にロックフェラーセンターを明け渡したのはあまりにも有名な話。世界中に衝撃を与え地球幸福度指数を爆上げしたこの楽器はその快楽質ゆえに堕落を生むとして当時の大蔵省により総量規制が敷かれ、巷から存在を消し、そして人々の記憶からも失われてしまいました。ロストジェネレーション。あれから20余年、ようやくこっそりと顔を出したのがこのアルバムって訳です。

Le MillipedeはMathias Gotzというトロンボーン専攻?のアーティストによるソロプロジェクトらしいです。Millipedeってのはヤスデの意。そんでもってヤスデにはいっぱい手がありますよね。1人でこんだけのことをやるには手がいっぱい必要......ってイマイチわからない方はグリーヴァス将軍をイメージしてください。余計わからないって?まぁこの話はもういいや。

ここまで要らない話が8割を超えてて、まずはそっから総量規制しろって話なんだけども、kozeのギャグセンスとかも引き合いに出した割にはこのアルバムは真面目なアプローチでつくられてるとおもいます。"どちらかというと"現代音楽的な、それこそMoondogとかComeladeとかの方。だけどまぁプログレになりすぎてやれ精神拡張だ、宇宙の仕組みがわかっただ、そういうことを言い出さないようなバランス感になっているのはお見事。
キッチュでノスタルジックな音を散らしつつ、その文脈の地続きの果てとして今現在の世界に仕立て上げるのっておもったより難しいんですよね。


いつの時代もファンシーでドリーミーなものは我が味方です。
中2中3の頃にはipodで池田亮司さんとかキックしか鳴ってないようなテクノとかを聴いて、家に帰ってもムダに部屋を真っ暗にしてみたりしちゃったもんですが、それもまた夢のトリップのひとつでした。

Don't Be Afraidは硬派な下地の上にいつもちょっとした(それこそ)冒険心が乗ってる優良レーベルです。そこにライドしてきたのがMr. Beatnick

本作、Formed in the Stance EPは一歩踏み出すことの緊張感とdon't be afraidなんつってどこからか見守ってくれてる安心感が良いとこで混ざった「これぞ」な一枚。一曲目のStutterはダンスミュージックとしての機能性も兼ね備えてて中々のボム。リンク先はBoiler Roomのチャンネルにアップされてるものなんですが、それも納得の出来。4曲目はMixmagの今年のベストトラックランキングにもランクインしてました。

でも僕のお気に入りは2曲目のJellyfish

淡々と進んでるんだけどポジティブなエネルギーがエンジンになってる気がして最高。pigeさんとMathias KadenのKONOMAMAとブレンドしながらかけるとより最高。

音の嗜好としてはBenjamin Brunnなんかとも共鳴する感じで、そこにより黒いニュアンスとUKイズムを感じるのがMr. Beatnickです。そういう訳でベースミュージックファンにも刺さるんではないでしょうか。可愛い子には旅をさせよ。mp3とともに。


順調にジャケの色が暗くなってきますが大丈夫でしょうか。

指向をぐっと変えてねじ込みたいのはOMSBのThink Good。日本のアーティスト。

おなじ国内のHip Hopだと今年はKOHHさんのDIRT、梔子だとかPUNPEEさんの加山雄三大先生とのコラボだとか、特別詳しくない僕がアンテナを特に張ってなくても耳に入ってくるようなエポックな出来事がままあったとおもうんですが、このアルバムはその中でも最上級でした。

Dr. DreKendrick Lamarの新譜とか、各所で文句なしに今年のベストにあがってくるような作品にも肉薄する素晴らしい作品だと個人的には思ってますが解説のマサ齊藤さんいかがでしょうか。

一番好きなのは12曲目のMemento Mori。と15曲目のOrange Wayネットでは試聴できないのでしつこく購入リンクを貼っておきます。ぜひ買ってください。

DopeでSwag、なんていってまとめちゃうのは簡単なんですが、ここは一回我慢して音としてのサウンドメイクのクオリティの高さを聴いてほしいです。スモーキーだけど包容力のあるOMSBさんの声とセルフでつくってるトラックの絡み方。煙と煙が混ざりあうみたいに自然で柔らかくて、だけども一癖ついちゃう感じは音数が少なくなればなるほど活きてくるように思います。ロバートグラスパーの琴線にふれて急にセッションがはじまったりしちゃうのも必然だわな。

そういえばここ最近はフリースタイルダンジョンがはじまったり、戦極のyoutubeチャンネルの人気があがってきたり、高校生ラップ選手権とかもありつつで空前のバトルブームにさしかかってますね。チャットサイトとかネット掲示板とかで一昔前は喧嘩師とかよばれてたレスバトラーたちの居場所が今やどこもかしこもフリースタイルの披露会になってて笑いました。かくいう僕もMCバトルは大好きでずっとチェックしてます。


旧譜にもほどがあるんですが、今年遭遇したというくくりでいうとLloyd MillerのOriental Jazzも良かった。

てか今さら聴いてて気づいたんですがこのGol-E Gandomって曲、一時期DJでめっちゃ使ってたNikola GalaのWhite Flowersの元ネタですね・・・。

今更気づいた僕に対してみなさんは既にお気づきかと思いますが、結構息切れしてます。もっといろんな話したかったんだけどなぁ。最初の勢いはどこへやら。


今年遊びにいったパーティで一番よかったのはAIRのsecretsundaze

GilesJamesのDJにまじでやられた。大きな抑揚はあまりないんだけどひたすらグルーヴを繋いでいって時間をすっとばしていく感じ。だけど似たような曲をただダラダラ並べてるだけじゃなくて、四つ打ってることで生じるエネルギーがどこまでも入り込んでくるような開放感とパワー。AIRという場所もまた完璧な要素のひとつ。ストーリーとしてよかったのはRainbow Disco ClubStar Festivalはもちろんなんだけど、どちらも3日通しの開催で、途中からの参加になっちゃったので、全日参加できた人が羨ましい。それでもめっちゃ楽しかったけどね。


以下はその他今年よかったものの羅列


New Grass Revivalはその名の通りブルーグラスの第二世代、プログレッシヴブルーグラスのバンド。ブルーグラスってそもそもなんぞやというのは聴けば一発でわかるくらい聴感そのままなんだけど、USとスコッチ、アイリッシュの埃臭いウイスキーみたいな部分がまじりあったジャンル。これは1979年の作品。


音楽が次の形に向かう途中、まさにまっただ中、プログレの定義も固まりきってなかったころに出てきた多国籍バンドのBrainticket。サイケともアヴァンギャルドとも言えるこのアルバム。結局定義のなかに収まりきらないやつが好きなんす。1971年。新日が出来るさらに前の出来事。


Mac DeMarco。前作の2Salad daysがヒットし勢いにのってるアーティスト。勢いとは裏腹にゆるいバイブスとチージーな見てくれで見事僕の心をロック。今年出たAnother Oneも良いアルバムです。アルバムを出すごとに音が良くなっていっててなんかサクセスを感じる。


2012年に制作されたこのおばあちゃんのドキュメンタリーとベストアルバムがセットになったCD+DVDがようやく今年日本でもリリースされました。シグリドゥール・ニールスドッティルはアーティストとしては全くの無名、というか普通のアイスランドのおばあちゃんでしかないんですが、60代後半になってから作曲をはじめ、70になってから娘にプレゼントしてもらったカセットデッキでアルバムを録音しはじめ、2011年に81歳で亡くなるまでの間、なんと59枚もアルバムを自主制作したという。BjorkSigur Rosmumなど北欧のトップミュージシャンからも敬愛される最強のおばあちゃんなのだ。


どこまでも柔らかい世界観はサイモンとガーファンクルを彷彿とさせる風格、だけどそのフォロワーには留まらない個性が光ってるのはシリアスな内容が示す通り徹底的に自分を曝け出した至極パーソナルな内容としての音楽になってるからかも。今年のベスト候補の急先鋒なんだけど、ほんと良いアルバムだから溜めてるうちにこの位置に。。。


自己の自己、究極のパーソナルを他者に曝け出しぶつけていくということでいうとこれもそう。自分と向き合うってことはエラい簡単に言葉にはできるけど、本当の意味でいうと人間のコアのコアってのは曝け出そうと思っても自分自身ですらこじ開けられないくらい強力なATフィールドが張られてて、向き合おうと思っても向き合えないもんなんですよね。それをこじあけて人前に送りだす決断っていうのはそれだけでもとてつもなく偉大なことだったり。


ケンモチさんのトラックのポップスとしての洗練されたクオリティが高すぎる。100%やばいトラックを200%のヤバさにしていくコムアイさんのエネルギーも凄い。凄いとしかいえません。なお今年一番の後悔はカレーメシに限定でついてたラーという曲のパラデータをゲットし損ねたこと。

正直にいうとピューロランドでのライヴを見るまでちゃんと聴いてなかったこともあってあんまりぐっと来てなかったんだけど、いまや完全に掌返し。完敗です。。。で、でもピューロランドの日は僕も頑張ったんだぞ〜!





という感じで今年もやっぱりヒリヒリくるようなものが好きなんでした。「無害なものは無いのと同じですから」って僕の好きなひとも言ってましたからね。ホント仰る通りでぐうの音も出ません。そう言う意味では今年一番、ベストオブ同感パンチラインですね。

でもいま僕の膝の上にいる猫のお前。ずーっと手を舐めてくるのだけは勘弁してくれ。ヒリヒリ通り越してかぶれてきとるわ。



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