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夏のキッチンは、生命力にあふれている

アメリカのSF作家・ハインラインが『夏への扉』(ハヤカワ文庫)という小説を書いている。冬になると主人公の飼い猫が、そこを開ければ夏があるはずだと家中の扉を開けさせるという一節がある。もちろん、どこを開けても外は冬なのだが。

夏到来を実感するいま、そんな物語を思い出す。今年は、家で大人しくしているうちに、いつのまにか夏になっていた。

さて、何か食べようかと、キッチンへ行く。夏野菜を並べると、わが家が農園になったようだ。太陽をいっぱい浴びた赤、紫、緑、黄の野菜。彼らから、エネルギーをもらえる。

夏は印象派の絵を思わせる。いや、もっと南の風景を描いた絵画や写真のように、色が踊って…。気候は、人の気分や気質を左右するものだなと改めて感じる。

  住めば都69-2

夏の料理は、輝く日射しが似合う。「今日は、あっさりと、そうめんで」と思っても、ほら、薬味があるでしょう。それにハムやエビなどが彩りを添えて、やっぱり、明るい空間で食べるのがピッタリだ。

住めば都も遷都する。夏の生命力をたっぷりと取り込める住まいは、そこに暮らす人を生き生きとさせる。四季の移ろいごとに、その季節へのすてきな「扉」を備えている家は、住んでいて気分がいい。

東京カンテイマンションライブラリ コラムより


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