切なさの中に輝く美しさ

 25年前、高校生だった私はThe Beach Boys関連の作品を貪るように聴いていた。ライナーノーツの解説、歌詞の和訳など空で暗唱できるくらいまで聴いたものだ。その中でやはりリーダー各のブライアン・ウィルソンにはより興味を惹かれた。当時は今よりも圧倒的に情報量が少なかったが自叙伝『ビーチボーイズ光と影』、自伝映画でのベッドに仰向けに寝転がる衝撃の姿、もしかしたら当時心療内科に私も通っていて勝手な親近感を持っていたのかもしれない。
 そんな彼が盟友ヴァン・ダイク・パークスと連名で作品を発表した時、私は急いでその作品を手に入れた。作品のタイトルは
『Orange Create Art』

暖色系のジャケットが私の心を明るく照らした。一応ブライアンが先に出てるが、作品はカヴァーを除き全てヴァン・ダイクが手がけており、ブライアンはヴォーカルのみに専念している。だが、そこは名手ヴァン・ダイク、このジャケットの雰囲気に違わない牧歌的な作品を生み出した。その作品の世界観をブライアンの声がヴァン・ダイクの曲に色をつけていく光景に叙情的な感情が音楽が流れる部屋には確実にあった。勿論レニー・ワロンカーのプロデュースも忘れてはならない。四半世紀前に発表されたこの作品、ギスギスしたこの時代にもう一度聴かれるべき隠れた名盤である。

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