「二度ゲームを支配したリバプール」~2019.4.14 プレミアリーグ 第34節 リバプール×チェルシー レビュー

スタメンはこちら。

【前半】
時間を支配する『いつもの』ハイプレス

 火曜日にホームでCLを戦ったリバプールと木曜日にアウェイでELを戦ったチェルシーの対決。舞台はアンフィールド。ということでリバプール優位は動かないだろう!というのが大方の試合前のメジャーな意見だったと思う。岩政さんは「中2日俺は楽なんだぜ!」って言っていたけど、中2日と中3日は全然違う!みたいな論文が昔出ていたような。中3日と中4日は変わらない!とも書いてあった気がする。

 そんなわけで体力的にはリバプールが超有利な試合。リバプール×体力の公式から導き出されるものはハイプレス!というのはプレミアを見る人なら誰もが解ける方程式である。そのハイプレスに相対するチェルシーのビルドアップのキーマンといえば誰だ?という問いも先述の方程式が解ける人ならば簡単。ジョルジーニョとルイスである。というわけでジョルジーニョとルイスをいかにリバプールのプレスから逃がすかが、チェルシーがボールを前を進めるためには避けては通れない命題である。
 本日のリバプールのジョルジーニョ番はフィルミーノ。サラーとマネは外を切りながらCBにプレッシャーをかけていくスタイル。カバーシャドウトリオ。いつもと同じである。チェルシーのGKのケパは足元はうまいものの、アリソンやエデルソンという化け物コンビほどは球足が速くない。なのでそこまでボールを戻させると、プレスの逃げ場になるサイドバックには、スリーセンターがスライドすれば捕まえられるでしょ!という仕組み。

 チェルシーがボールを前に進めるパターンはかなり限られていた。マネとフィルミーノに比べればサボりがちなサラーのところは糸口。ルイスへのプレッシャーが十分でなく普通に蹴られたりとか、見かねたフィルミーノがルイスに飛んで行ったおかげでジョルジーニョが空くとか。中盤でいえば、行動範囲が広くなってしまうファビーニョをカンテが出し抜いて突破するとか。しかし、こういうシーンは非常にまれ。基本的にはリバプールの網に引っかかる場面がほとんどである。いつも思うけど、リバプールのプレスは時間を奪ってくる感じがすごい。味方がどこにいるか認知させない、どのプレーが効くかを考えさせないことを念頭に置いたプレスを仕掛けているなと思う。

【前半】-(2)
右からきっかけを作るリバプール

 チェルシーのプレッシングはボール保持の4-3-3からインサイドハーフが飛び出して4-4-2に変形するのが定番。この移動に際してのマークの受け渡しが怪しくて、プレス回避がうまいチームはここを突くのが定番になっていた。ただ、この試合ではスライドが間に合わないインサイドハーフの飛び出しは封印。4-5-1っぽく構えて、前線のプレスにもう1人参加する際はウィリアンがやや絞り目に位置することが多かった。アザールをトップで使った理由は、サイドだと守備時にこのタスクを任せられないからじゃないかなと思ったり。アザールがサイドで押し下げられちゃうのももったいないし、全体が押し下げられる想定なら、トップで1人でなんとかできるのはジルーやイグアインよりアザールでしょ!っていう攻撃面での話もあるのかもしれないけど。

 構えた形のチェルシーをどう動かすか!というのがリバプールのボール保持。今季はハイプレスからのショートカウンターだけじゃないぜ!というクロップの腕の見せ所である。彼らのボール保持で面白かったのは右サイド。前線へのプレス参加はあまりしないものの、その前のファビーニョにボールが入ったときはチェルシーのインサイドハーフが撃退に出てくる。ファビーニョがボールを持つときに、アーノルドでウィリアンの位置を固定。ヘンダーソンがワイドに開くサラーとフィルミーノの間を抜けることでルイスとエメルソンを釣る。リュディガーはフィルミーノでピン止め。という一連の流れ。

 図でいうとアーノルドからの大外→同サイド大外の縦パスでチェルシーの守備陣のベクトルを後ろに向ける。そうなると今度は浮くのはその場にとどまるサラー。PA前のスペースは空いているというおまけつき。カットインするもよし。カンテが寄って来たら今度は中央にいるケイタが空く。彼を経由して逆サイドまで展開すれば、マネには広大なスペースが。ケイタがヘルプに行けば2対1だし、ロバートソンのオーバーラップで3対2にしても良い。

 さすがにアーノルドまで戻すと逆サイドへのチェルシーのスライドは間に合う感じだったので、チェルシーの理想としてはサラー→ケイタに出させないこと。ウィリアンやロフタス=チークはそのあたりに気を使っていた。カンテではなく、なるべくロフタス=チークが釣れた時にボールを前に進めるファビーニョはニクい。人を引き寄せてからボールを離すのもニクい。
 マネはサイドでの勝負においては比較的早くクロスを選択。PAに侵入できる位置にいるフィルミーノ、ヘンダーソン、サラーの3枚に早くボールを届ける意識が強かった。アスピリクエタ相手のタイマンに完勝を目指すよりは、チェルシーの最終ラインのPA守備はゾーンの意識が強めなので、3枚入ればクロスで何か起きそう!みたいな。

 もちろん、前進もこの形だけにこだわらないのがリバプールの強み。チェルシーのインサイドハーフがファビーニョにプレッシャーをかけなければ、裏に抜けるのはよりダイレクトにゴールを陥れられるサラーでもいいし、右サイドが手厚いならケイタが左サイドに降りてきてロバートソンやマネと多角形を作って前進してもいい。先述したロングプレスで相手からリズムを奪うだけでなく、ボール保持でゲームを作ることができる部分が18-19のリバプールの強さを下支えしている。序盤戦にまいた種が実を結んだ感のある引き出しの多さである。シュートは少なくとも、ゲームをがっちり握ったリバプール。チェルシーは数少ないチャンスを逃さないルイスのフィードでなんとか散発的にチャンスメイクをするのがやっと。相棒のリュディガーは負傷交代してしまうという痛いおまけもついてきてしまった。スコアレスでも展開はリバプールペース。そんな前半だった。

【後半】
実った狙い

 後半のキックオフからネジを巻きなおし、前プレで襲い掛かるチェルシーをいなすリバプールという構図で後半はスタートした。後半のリバプールの変化は後方からのボールの運び役がファビーニョからマティプになるケースが出てきたこと。そして、フィルミーノが右に流れ始めたこと。狙いを考えるに、あくまで後方からの運びで釣りだすのはカンテではなくロフタス=チーク!なのかなと。ファビーニョだったらどっちが出ていってもいいけど、マティプが右から持ち上がったらロフタス=チークが出てこないわけにいかないでしょ?みたいな。ロフタス=チークが釣れたらどこのパスコースを消したらいいのか、ウィリアンが困ることに。サラーとの1on1が危ういエメルソンを助ける位置取りをするのか、絞ってフィルミーノを消すのか、あるいはワイド低い位置のアーノルドなのか。マティプには豊富なパスコースがあった。

 狙っていた先制点はその右サイドの崩しからであった。インサイドハーフ2人同時にエリア内に送り込むという賭けに勝ったリバプール。ルイスを釣りだした分、ファーサイドで余ったのがマネだった。エリア内に人を送り込んでクロスを待ち受けるぜ!っていうのも、ロフタス=チークを釣りだして右から崩すっていうのも、前半からやっていたことが実を結んだ感じである。

 その2分後に生まれたスーパーゴールに何か言葉を付け足すことは野暮かもしれないが、ヘンダーソンが裏に抜けていくことでサラーがカットインするスペースを作っている。この2得点はリバプールがチェルシーの左半分を動かして作り上げたスペースがきっかけで決めたものである。試合を通してチェルシーの左サイドを動かすことは念頭にあったゲームプランのように思えるので、フィニッシュはスーパーだけど形の作り方としては狙い通りだったのかなと。

【後半】-(2)
流れを変えたワンプレーのお話

 もうもたもたはできなくなってしまったチェルシー。イグアインを投入して、アザールをサイドへ。サラーのスーパーゴールで高まったアンフィールドのテンションに後押しされるように、ここから試合はオープンな展開になる。アザールが前残り気味に4-4-2のような構えになるチェルシーに対して、薄くなった中盤を突いてリバプールが試合を決める3点目を取りに行こうとすれば、チェルシーはアザールに決定機が2回。なんか、今のリバプールを相手に決定機を作ろうとするなら、ファン・ダイクのところまで含めてどうやってすっ飛ばすかが大事!って思わされたシーンだった。ハイプレスなんとかしのいでも「残念、そこはファン・ダイク!」が多すぎるし。まぁそのあとに「残念、そこはアリソン!」っていう最後のヤマもあるんだけど。最終ライン裏にピンポイントで送り込んだエメルソンのフィードも、虚を突いたタイミングで上げたウィリアンのクロスもアザールの決定機を作り出した2つのラストパスはファン・ダイクをうまくすっ飛ばしてるな!って感じた。

 オープンだった打ち合いは60分過ぎにスローダウン。この試合に限ったことではないんだけど、試合の流れを変えるワンプレー!っていうのを実感することが個人的に最近は多い。この試合でいえばサラーのゴールシーンとかはもちろんそう。そうなんだけど、ゴールシーン以外でも展開の変化を感じるワンプレーが気になるようになった。例えば、ルイスのスルーパスに抜け出したイグアインがシュートを打てなかったことは、追撃の1点が欲しいチェルシーにとっては大きなブレーキになったワンプレー。そして、もう1つこの試合の展開を変えたと感じた場面はウィリアン→イグアインのパスが通らなかった後のナビ・ケイタである。リバプールは元々オープンな展開が得意だし、ましてやアンフィールドはサラーのスーパーゴールに情熱を爆発させている状況。リードはしているものの、前に前にという意識が強くなってもおかしくはない。そんな中で前にスペースがある状況で63分過ぎにボールを受けたナビ・ケイタがスローダウン。本当に小さいプレーかもしれないが、このワンプレーがサラーのゴールとイグアインの投入から始まった激流を終わらせたように感じたのだ。直前のスルーパスを受けたイグアインが、よりゴールを脅かすようなプレーの終わり方ができていたら、あるいはアザールがどちらかの決定機を決めていたら、ケイタは同じようなプレーの選択ができていただろうか。そんな思いを巡らせたくなるシーンだった。プレミアファンなら誰もが胸が熱くなったような10分間をチェルシーが無得点で過ごしてしまったこと、そしてケイタにどちらに点が入るかわからない展開を鎮火させる心の余裕があったことが、この試合の勝敗をより決定的なものにした印象を受けた。

 疾風怒濤の時間が経過したのち、終盤は再度ゲームの主導権を手中に入れた感のあるリバプール。ロバートソンが転んでも、あの日のように勝ち点を失うことはもうなかった。カオスの時間帯を耐えきり、二度ゲームを支配したリバプールがチェルシーを下し、数時間ぶりにシティを抜いて暫定首位に舞い戻った。

まとめ

    4位争いの旗色が悪くなってしまったチェルシー。絶望をするほどの内容ではないだろうが、リバプールには力の差を見せつけられた格好だ。カンテのオフザボールの動きやウィリアンの献身性など、ポジティブな材料はあるが、ボールを前に進める手段が限られているという課題はシーズン中盤から継続した課題である。テンポを変える配球ができるジョルジーニョ、冴えているルイスの縦パス、そしてアザール。この3本立てというのが正直なところ。チーム全体でハイスピードなプレーをするリバプールのようになるにはもう少し時間がかかりそうだ。

    気になるのはサッリのプレーモデルとチェルシーに根付くクラブカルチャーの乖離。個人的に見れば、サッリのチェルシーは前には進んでいるように見えるが、結果が出ない時にチェルシーファンの心に思い浮かぶであろうフットボールは、サッリが今チェルシーで見せているものとは全く別のものである。エースの去就が不透明なことと補強禁止処分も手伝い、サッリの立場は側から見て非常に不安定なように感じる。プレーモデルとクラブカルチャーの乖離はあらかじめわかっていたことなはず。チームがぐらつく要素が重なるチェルシーだが、サッリとしてはEL優勝とCL出場権獲得をダブルで達成し、少しでもクラブの立ち位置を安定させたいところだろう。

    強かったぜリバプール。前半戦から取り組んでいたボール保持における取り組みは着実に芽が出て、大きな花を咲かせた。チェルシーも悪くなかったが、前半を支配したのちに、後半の自分たちの時間帯で得点を挙げ、相手の攻撃を受け止めた上で終盤にもう一度ペースを握るという試合運びは、ビック6の中でもワンランク上の内容である。前半戦は代替不可だと思われたワイナルドゥムとミルナーがベンチに控えていても、ファビーニョとケイタの働きを見れば懸念だった中盤の層は厚くなったことは疑いの余地はない。

    終盤戦の懸念を挙げるとすれば、一戦必勝の試合が続くこと。シティも状況は同じだが、CLもプレミアもタイトルを視野に入れ、全試合フルスロットルが求められる状態である。プレミアファンの一人としては、新たな負傷者を見ることなく今シーズンのリバプールの結末を見届けたいと願うばかりだ。

試合結果
プレミアリーグ 第34節
リバプール 2-0 チェルシー
アンフィールド・ロード
【得点者】 
LIV:51' マネ, 53' サラー
主審:マイケル・オリバー

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せこ

Football

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