図3

「先制点でミスマッチ解消」~2019.10.6 J1 第28節 湘南ベルマーレ×川崎フロンターレ レビュー

 スタメンはこちら。

画像1

【前半】
オウンゴールで拓けた道筋

 川崎の選んだスターティングイレブンは前節の神戸戦と全く同じ。これに対するサポーターのリアクションは結構いろいろあったようだが、まぁそれは置いておくとして。メンバーを見で読み取れたのはとしては「ショートパスで湘南のプレスを外そうぜ!」というコンセプトと前節の内容を鬼木監督が比較的評価しているという部分。いわば、「かつてのいつも通り」を狙った人選という印象を持った。

 湘南は大量失点で敗れた前節の清水戦では明らかにプレスの連動が遅れており、相手に縦パスを許す展開が続いていた。寄せの距離も遠く、ペナルティエリアにおいてもボールホルダーには空間が与えられる。どう見てもいつもの湘南ではなかった。この試合を見るに当たって湘南がいつも通りなのか?というのは大きなポイントである。

 キックオフしてすぐに分かったことはこの試合の立ち上がりの湘南は「いつも通り」であるということ。1トップの山崎のプレスには後方が連動して囲い込み。川崎の中盤に時間を与えなかった。むしろ、「いつも通り」でなかったのは川崎の方だ。ショートパスをつなぐか、つなげないか?のデュエルになる試合かな?と思ったけど、その予想が外れたのは川崎が縦に長いボールを主体に組み立てを行ったから。2分の登里が縦に急いだシーンは、普段の川崎なら戻して組み立てなおしてもいい場面だ。谷口も同様に縦に速く意識したパスが出てくることが普段より多かった。極めつけは新井のゴールキックで、これも長いボールが出てくることが多かった。

 というわけで試合は川崎がボール保持で湘南がプレスという立ち上がりにはならず、長いボールが飛び交いながら、競り合い時の軽微なファウルでゲームが止まりまくるという展開になった。

 あわただしい展開の中で、川崎のボール保持をやや落ち着ける役割を果たしたのは阿部浩之。高い位置を取ることが多かった登里の代わりに、左サイドの低い位置でボールを受けることでボールの預けどころになっていた。とはいえ、増えてきた川崎のボール保持に対して、湘南のプレスは互角以上にやりあっていた。やり直しをさせたり、横パスをカットしてカウンターに転じたり、清水戦の面影を感じさせない湘南を前に個人的には徐々にめんどくささを感じていたほどだった。

図6

 そんな試合展開が一変したのが湘南にとってはアンラッキーなオウンゴールである。これを機に前線からのプレスが非常に弱まってしまった湘南。清水戦で見せたあの弱気な顔が徐々に垣間見えてきた印象である。特に中盤の寄せが遅く、低い位置での川崎のボールホルダーにチェックがかからなくなる。中村憲剛の今季2点目を生んだプレーは田中、家長、小林、阿部、登里、そして中村など多くの選手のパス交換が起点になったが、いずれの選手にも湘南がボールの持ち方を制限できていない。最後は登里に奥行きを作られて発生したマイナスのスペースを活用された形だった。特に、ラストパスを出した登里にスルーパスを出した阿部は3人をひきつけながらも、寄せに苦しまずにプレーをしていたのが印象的。ボールホルダーには厳しいマークに行く湘南らしくない失点になってしまった。逆に川崎の左サイドは素晴らしい崩し。

 プレスをあきらめたわけではないが、出足が悪くボールホルダーは捕まえられない湘南。プレスに出た時の中盤と最終ラインの間延びはもともと湘南が抱える弱点であるが、プレスに出ていった選手がボールホルダーを捕まえられないことによってさらに顕在化。下田や阿部がDF-MF間に入り込んで縦パスや小林のポストの受け手になったり、家長が左に流れることでオーバーロードを作り出すことで相手陣側にてボールを回す展開に。後方からの楔を入れる意識はこの日の川崎は非常に高く、縦パスを入れつつ一気にシュートまでいく流れが多かった。3点目の阿部のゴールはまさにその過程を踏んだ美しいゴールだった。

 攻め込んだ後のゲーゲンプレスに問題があったのが4点目。ロスト後に棒立ちした湘南の選手を尻目に、川崎は少ないタッチでパスをつなぎ、家長にボールが渡りカウンターが発動。小林の素晴らしいフィニッシュでさらに突き放した。

 得点シーン以外で気になったのは湘南のシャドーの守備。絞ったり、最終ラインに出ていったり、ワイドに出ていったりしていたが、どこをどういう風に塞ぎたいのかが見えてきにくかった。川崎のCBに湘南のシャドーが出でいくため、川崎のSBは時間を得ることができる。ここから斜め方向に侵入するパターンはあった。CHに横パスするパターンはFWの山崎が狙っていたけど、パスをカットされても全体が下がってしまっているのでカウンターの鋭さは下がってしまっていた。

図7

 じゃあ初めからシャドーがSBを塞ぐような立ち位置を取ると、今度はCBから普通に縦に入れられる楔を防げないというジレンマ。阿部、家長、下田、憲剛はDF-MF間のスペースを狙っていたし、小林も降りてきてポストプレーをこなすシーンがいつもより多かった。

図8

 湘南の2列目を動かしながら楔を入れまくった川崎。大量4点リードで前半を折り返す。

【後半】
交代策で起点づくり

 湘南はハーフタイムで選手交代を実施。野田を投入し松田を中盤にスライド。前線のストライカー色を強化。湘南は後方から数的優位を生かした3バックからの長いボールを前線に当てることで前進を狙う。長いボールに合わせて、中盤や最終ラインを上げる動きが連動し始める。これにより徐々に川崎を押し込んでいく湘南。湘南は裏取りと大外のWBで前進する形が多かったけど、この日はスリートップに当てるパターンも見られた。

 この流れに輪をかけていくのが、後半10分に投入されたクリスラン。前線で強力な起点となり、川崎のCBを苦しめる。中央で相手を押し下げられるのならば、サイドからもチャンスを作りやすくなる湘南。突破口を見出したのはハーフタイムの交代でWBに移った鈴木冬一。対面の守田を突破した鈴木のクロスからクリスランが決定機を迎えるも、新井のファインセーブで川崎は何とかしのぐ。

 対する川崎も交代策で変化をつける。脇坂を投入することでボール奪取後にアクセントをつけられるように。ボール保持は湘南に許しつつも、カウンターの時の一刺し!はこの交代で決まりやすくなった。次の交代カードである長谷川の投入で脇坂がトップ下に入るとさらにアクセントは強まる。得点こそなかったものの、後半はやや省エネモードだった川崎に再び決定機をもたらす活躍。押し込むだけだった長谷川の5得点目をお膳立てしたのも、バーに直撃した脇坂のミドルのおかげである。

 後半頭こそペースを取り戻した湘南だったが、脇坂の投入と共にトーンダウン。ロングカウンターは徐々に間延びしていき、クリスランは孤立無援の状態になってくる。4点ビハインドの中で無得点の時間帯が続くと仕方ない部分はあるけども。

 試合はそのまま終了。神奈川ダービーは明暗くっきり。川崎は今季初の5得点での勝利を飾った。

あとがき

 試合結果で言えば前半がすべてだった湘南。この試合を振り返りながら、湘南の今後を展望する!なんて大層なことはできないので、湘南についての所感はここでは割愛する。

■気になるミスマッチ

 快勝!めでたい!特に今季不発だったMVPトリオ+阿部の広いスペースでのカウンターがいくつか決まったのはいい兆候。今季はスペースある状態でもチャンスが作れていなかった。後半はやや省エネモードだったが、これは中2日のルヴァンカップを見据えれば許容といえるだろう。

 懸念があるとしたら前半である。幸運な先制点が入るまで湘南のプレスに屈していた後方でのボール回しはやや不安定だった。おそらく今季残りも取り組むであろう狭い地帯でのボール回しの精度は何とも言い難いところ。序盤はロングボールに頼っていたのも気になる。メンバー構成としては明らかにショートパス主体のメンバーだったが、選んだ序盤のプランはややミスマッチ。たらればを言うのはナンセンスかもしれないが、先制点が入らなかったら意外と苦戦が長引いていた可能性もある。試合展開が徐々にメンバーの持ち味が出やすいように向いたことで非常に試合を進めやすくなったように思う。立ち上がりのプランとスタメンのミスマッチはやや気になるところだ。

 個人で言えば、ここまで不調のチームをけん引していたCHコンビに若干の懸念。田中は代表招集で離脱、下田はここにきてやや精度が落ちてきた印象。大島の復帰は焦らせたくないものの、鹿島戦の重要度を考えるとスクランブルの可能性も否定できないだろう。SB起用が続いている守田も含めて、水曜日の試合のCHの構成は気になる部分だ。

試合結果
2019/10/6
J1 第28節
湘南ベルマーレ 0-5 川崎フロンターレ
Shonan BMW スタジアム
【得点者】
川崎: 15' オウンゴール, 21' 中村憲剛, 26' 阿部浩之, 35' 小林悠, 81' 長谷川竜也
主審:高山啓義

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

8

せこ

06年、高校球児時代にドイツW杯を見てサッカー観戦にハマる。アンリのプレーの影響で、アーセナルとプレミアを追いかけるように。国内では川崎(2012~)のファン。「なんかいい感じ!」や「なんかうまくいかない。。」を言語化した記事を書くのが目標。乃木坂46の推しメンは西野七瀬。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。