「『困難』に立ち向かう色選び」~2019.5.17 J1 第12節 川崎フロンターレ×名古屋グランパス プレビュー

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Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第12節
川崎フロンターレ(4位/勝ち点22/6勝4分1敗/得点18 失点7)
×
名古屋グランパス(2位/勝ち点23/7勝2分2敗/得点20 失点7)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

直近5年間の9回の対戦で川崎が7勝、名古屋が1勝、引き分けが1つ

川崎ホームでの戦績

直近10試合の対戦で川崎が7勝、名古屋が3勝。

Head-to-Head

Head-to-Head①
【公式戦での対戦成績】
・公式戦における両チームの対戦は過去31戦で川崎が19勝、名古屋が7勝。ドローは5つ。
・J1での直近の対戦は3季連続で川崎がシーズンダブルを達成している。

 仙台、清水に続いてまたしても相性がいい相手との対戦になった川崎。名古屋との対戦成績は勝ち点でいえばダブルスコアである。特に近年の対戦成績は顕著。直近3年間のJ1での対戦は川崎が全てダブル。さらに5年間遡っても、4回は川崎がダブル。直近10戦のリーグ戦で名古屋が勝利したのは一度だけ。名古屋が勝利すればおよそ7年ぶりのリーグでの川崎戦勝利になる。

Head-to-Head②
【等々力での対戦成績】
・等々力での対戦は過去16戦で川崎が9勝、名古屋が4勝、ドローは3つ。
・等々力でのリーグでの名古屋戦は川崎の5連勝中。

 等々力の成績においても傾向は変わらず。直近の5試合は川崎が全勝しており、この間に15得点を挙げている。

Head-to-Head③
【5月開催+フライデーナイト】
・5月の対戦は過去4回。川崎の3勝1分
・等々力での名古屋との金曜開催は過去2回。いずれも川崎が勝利している。

 5月の対戦は過去に4回。ここでもすべて川崎が勝利している。
 等々力での名古屋戦も金曜開催だと川崎の2戦2勝。金曜開催はもともと川崎の得意分野。金曜開催のJリーグは直近14試合負けなしである。最後の負けはおよそ8年前にさかのぼる。しかし、その8年前の対戦相手こそ名古屋。川崎がJ1での金曜開催の試合で唯一負けたことのある相手が名古屋なのだ。

Head-to-Head④
【上位対決】
・両チームとも4位以上で迎えた対戦はこれで4回目。過去の3回は川崎がすべて勝利している。

 こちらも川崎に有利なデータ。頑張ってかき集めたんだぜ。有利なデータ。上位対決はこっちのものだ!!

【川崎フロンターレ】

Match Facts

川崎のMatch Facts①
【直近のリーグ戦】
・勝てばリーグ6連勝。
・昨季の同時期より勝ち点が1多い。

 リーグ戦6連勝は09年6月以来のこと。達成すればトップカテゴリーでのクラブのリーグ戦連勝記録に並ぶことになる。去年もおととしも優勝はしたけど、連勝はしまくってはいないシーズンなのだ。
 連勝記録とは裏腹に昨年並みなのが得失点と勝ち点。スロースタートだった序盤戦だが、10戦そこそこ戦ってみれば、去年並みの成績になるのは地力がある証拠だろう。

川崎のMatch Facts②
【嫌な話】
・今季敗れた3試合はいずれも最後の15分に失点を喫し、0-1のスコアで終わっている。
・ショートパスからの失点は5つでリーグ最多。

 「いい話と悪い話、どっちから聞きたい?」
 あなたも一度くらいは聞かれたことのある質問だろう。僕は悪い話から聞きたいタイプ。というわけで川崎にとって悪い話から先にみていこう。

 一つは失点の時間帯。今季敗れた試合はすべて1-0。得点ができず、焦れて前がかりになったところを仕留められている。実はこの時間帯は名古屋の大好物。75-90分の時間帯で今季10得点を挙げており、リーグで最終盤に最も得点を挙げているチームなのだ。

 そしてもう一つは失点の仕方。Football Labによると川崎はショートパスからの失点が最も多いチーム。ショートパスからの失点は「セットプレー、クロス、スルーパス以外の30m以下のレンジのパスから失点」という定義らしい。そして、このショートパスからの得点が最も多いチームが名古屋である。嫌なめぐりあわせだな!

川崎のMatch Facts③
【いい話】
・等々力でのリーグ戦でアウェイチームの外国籍の選手がゴールを決めたのは、2018年3月のパトリックが最後。

 いい話は「等々力は外国人にとって要塞」ということ。実は1年以上相手の外国人選手には得点を決められていない。昨季の等々力でのリーグ戦の外国人選手の得点もこのパトリックの1点のみ。リーグ戦の全20ゴールのうち、11ゴールをブラジル国籍の選手が決めている名古屋を相手に迎える川崎にとっては、これはポジティブなジンクスといえる。

川崎のMatch Facts④
【個人成績】
・小林悠は直近5試合の公式戦で5ゴール。
・登里享平が先発すれば8試合連続の先発出場。これは2014年9月以来のこと。

 小林悠がやっと着火したようだ。これでリーグ戦直近3試合の出場で4ゴール。川崎×名古屋の得点者ランキングで上位に名前がなかったから「名古屋戦は苦手なのかな?」と思ったけど、直近2試合ともゴールをきっちり決めていた。

 そんな小林と対照的にややガレ気味なのは登里享平。先発すれば公式戦8試合連続となり、およそ5年ぶり。例年怪我が多く、ここまで連続出場することは非常に稀。車屋の負傷による事情は大きいが、ついに前節車屋が復帰。ライバルが復帰した中での一戦になるが、この試合でも先発記録は伸びることになるだろうか。

【名古屋グランパス】

Match Facts

名古屋のMatch Facts①
【好調な序盤戦】
・11試合での勝ち点23は、延長戦が撤廃された03年以降で、クラブ史上最も良いスタート。
・昨季の同時期より失点は16(23→7)少ない。

 調子がいいと思ってはいたけど、まさかクラブレコードのペースで勝ち点を稼いでいるとは思わなかった。11試合で勝ち点22のシーズンは過去2季くらいあったけど、23は未知の領域。つまり、優勝をしたシーズンをこえるハイペースで勝ち点を積んでいることになる。その理由の1つは失点の少なさ。昨季のおよそ3分の1に減っている。得点も11→20とほぼ倍増しており、このスタッツならばこの勝ち点も納得せざるを得ないところだ。

名古屋のMatch Facts②
【クリーンシート】
・リーグ戦のクリーンシートはここまで6試合でこれより多いのはFC東京(7)だけ。

 川崎戦でクリーンシートを達成すれば7試合目となる。単にこの数字だけ言われてもピンとこない人も多いだろう。過去のシーズンと比較すればすごさが際立つ。2018年は4試合、2016年は3試合。第11節終了時点での数字?いいえ、シーズンを通してこの数字。
 ということで名古屋はあと1試合クリーンシートを達成すれば、過去2季でのトップリーグ68試合で記録したクリーンシート数に並ぶことになる。2年分のクリーンシートを3カ月で達成する。そりゃ勝ち点も伸びるわけだ。。

名古屋のMatch Facts③
【苦手なもの】
・アウェイゲームは直近6試合勝ちなし(D3L3)
・5月のJ1の試合は直近15試合で4勝。

 そんな名古屋にも苦手なものはある。公式戦直近6試合はアウェイでは勝ちなし。攻撃力が持ち味の名古屋が無得点試合2つに、複数得点した試合はわずかに1つ。さらに5月のアウェイゲームは直近6戦で1勝のみ。不利なデータがそろう「5月×アウェイゲーム」だが・・・?

名古屋のMatch Facts④
【個人成績】
・ガブリエル・シャビエルは2018年の開幕から15アシストを記録。リーグで最多。

 昨季のアシスト王こそ柏木に譲ったものの、今季を含めるとアシストはシャビエルの方が多い。今季はシミッチに2アシスト、昨季はジョーに4アシストとやはり外国人デュオでのアシストが多いようだ。セットプレーのキッカーとしての貢献も光るシャビエル。外国人が苦戦する等々力でホットライン開通はなるだろうか。

名古屋のMatch Facts⑤
【風間八宏】
・風間監督は等々力でのリーグ戦2連敗中。過去に等々力でのリーグ戦で3連敗を喫したことはない。

 最後は風間監督のお話。川崎在任時は等々力で強さを誇った指揮官。しかし、川崎在任時のリーグ最終戦のG大阪戦と、名古屋の指揮官として初めて凱旋した昨季は共に負け。川崎時代はリーグ本戦(CS鹿島戦はカウントしていない)での3連敗は記録したことのない風間監督。かつて得意だった本拠地でキャリア初の3連敗を喫してしまうのだろうか。

予想スタメン

展望

ジョーとシャビエルでスイッチオン!

 予想スタメン、ぱっと見だと外国人枠オーバーに見えますね。恥ずかしながら上位躍進の名古屋はあまりちゃんとここまで見る機会がなかった。サンプルとして少し観戦したのは直近の浦和戦。

 まず目についたのはオフザボールの動きの少なさだ。この日の相手の浦和が前線からハードにチェイスするチームではないということもあるだろうが、後ろの選手がボールを持った時にパスコースを作る動きはとても少ない。主に自由に動くことを許されたジョーやシャビエルの2人が後方からの受け手としてはメインの選択肢。彼らに後方からボールが入ると一気に攻撃が加速。楔に呼応するように一斉に動き出し、相手を攻め落とすフェーズに入る。長谷川アーリアジャスールを使っているのが面白くて、人に合わせるのがうまい彼のプレースタイルはこういった生かし方もあるんだなと感心した。

 米本拓司と吉田豊という脚力はあるが、ボール保持というイメージとはそぐわない補強も、この攻撃のスイッチの入れ方ならばフィットするのだなと思った。最終ラインでは宮原和也がボールの収めどころとして機能。丸山祐市のタッチダウンパスももちろん健在だ。

川崎的シミッチ対策の考察

 とはいえ後方で最も警戒すべきはシミッチだろう。名古屋のラグさんのプレビューにもあるように、名古屋と対戦する相手はことごとく彼の対策を打ってきているようだった。

 川崎的シミッチ対策はどうするか。中村憲剛に期待する向きもあるが、彼が昨季ネットを封じたのは元チームメイトという明らかなアドバンテージがあったから。同じアプローチがシミッチに通用するとは限らない。それに、中村憲剛は負傷からの復帰明けというおまけつきだ。イニエスタとのマッチアップを制した田中碧にしても、シミッチを抑えるには立ち位置がやや後ろ過ぎる気も。

 個人的にはパスの出し先を抑えちゃう方がベターだと思う。長谷川健太メソッド。しかし、それが川崎の中盤やバックスが得意な守り方かといわれると、とても微妙。身も蓋もない結論になって申し訳ないが、今までの鬼木さんの戦い方を見ても、チームとしてキーマン抑え!みたいなことはあまり見たことがないので、トップ下やCHに入る選手のアドリブということになるのではないかと予想する。

 警戒したい得点パターンはもちろんジョーがフィニッシャーになる形。特に気を付けたいのは浦和戦で見せたパターン。ファーにクロスを上げた後、中央で折り返しのパスを待ち受けてフィニッシュ。浦和戦では宮原が高い位置を取りクロスのターゲットになっていた。直接ジョーではなく、ワンクッション入れてジョー。SBに身長が低い選手が多い川崎としては警戒したいパターンである。

鬼木監督はどの色を選ぶのか

 名古屋はボールをもっていない局面でもシミッチは米本と共に重要な役割を担う。川崎のボール奪還の方法が前に強くガンガン出ていくというイメージならば、名古屋のボール奪還はサイドに追いやり、圧力で押しつぶすやり方がメイン。シミッチと米本はボールサイドに大きくスライドし、そこから展開することを許さない。川崎方面に伝わりやすそうな例えでいえば、ユンジョンファン時代のC大阪だろうか。サイドへのスライドの意識の強さは、ソウザと山口蛍がコンビを組んでいたあのチームに近い印象を受けた。

 好調の川崎だが、名古屋に立ち向かう時の懸念は直近の試合の勝ち方である。仙台戦、清水戦と川崎の攻撃が2試合続けて流れたのは脇坂泰斗の働きによるところが大きい。彼が中盤中央でボールを受けることで、川崎は高い位置で預けどころができる。ハーフスペースを裏抜けしてくれる彼の存在がサイドの攻撃を活性したのは明らか。ここ数試合の川崎の攻撃陣を牽引する役割を担っていたというのも言い過ぎではないだろう。

 そんな彼について何が懸念かというと、脇坂の持ち味は米本とシミッチのボール非保持における持ち味と相殺する可能性があるということ。対人に強い彼ら相手に脇坂がボールの収まりどころになるかはわからないし、脇坂が流れて行う手数をかけたサイド攻撃はそもぞも彼らの圧力を前に押しつぶされる可能性もあるからだ。

 川崎には別の選択肢もある。知念、ダミアン、小林の3人のFWは好調で特にダミアンと知念のフィジカルは名古屋にとって脅威だろう。中谷、丸山といえど彼らと対峙するのは脅威なはずだ。中盤から楔を打ち込むことで攻撃を動かせる大島がFWにダイレクトパスを届けるほうが、名古屋の強力なフィルターを回避するには楽な方法かもしれない。

 サイドで攻めるにしても、広いスペースで齋藤や長谷川に勝負させる作戦もある。名古屋は片側サイドに圧をかけると、抜けられた場合は逆サイドが非常に手薄になる。好調なワイドアタッカーを起用し、サイドチェンジでここを一気に攻略するというのもアリ。その場合はサイドチェンジのリンクマンとして優秀な登里は起用しておきたいところだ。

 どちらの作戦もフィルターとして機能するシミッチと米本とのデュエルを避けていく戦い方である。

 しかし、去年等々力で川崎が名古屋に勝利したのはほかでもなく、名古屋からボールを取り上げ、考える時間を奪ったからこそである。すなわち正攻法。川崎が正攻法でくれば、名古屋は浦和戦のようにバックスがまったりボールを持つ時間は得ることができない。名古屋のその時こそ、今季の名古屋の真価が問われる局面かもしれない。
 ボール保持においては名古屋の圧力をはらりとかわすマタドールのようなボール回しが川崎の正攻法。その場合はここ数試合と同じく脇坂が持ち味を出しやすい展開になる。

 いずれにせよ、キーになるのは鬼木監督の決断だ。連勝でチームとしての流れはいい。しかしながら、主力には勤続疲労も見られる中で故障者が戻ってきて上位対決に向かう。今季ここまで選手の入れ替えで色を変えてきた川崎もまたここで真価を問われることになる。シミッチと米本というわかりやすい武器を持つ名古屋に対して、困難を避けて戦うか、正面から叩き割り返すのか。今季、川崎はメンバーの変更に伴ってその色を変えながらここまでを戦ってきた。来る大一番に、鬼木監督がどの「色」を選ぶのか。この試合の展開を決めるのは、まずはこの点に尽きるだろう。

 最後にみぎさんのプレビューも素敵だったのでぜひ。

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)

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せこ

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