試される私のCreativity

先日、某国際機関の新規プロジェクト形成のために情報収集をしているというコンサルタントさんに依頼され、パキスタンの保守的な州で女性の保健医療サービス利用を促進させるためのコミュニケーション術についてお話ししてきました。

何度か書いてきたことでもありますが、パキスタンの風習・文化(多くは厳格なイスラム教の解釈に基づく)のために、女性の社会参画が進まないのはもとより、医療を含む公共サービスの恩恵を享受することすら難しいのが現状。そんな女性たちに、無料で提供されている保健サービスを「使ってもらう」ためにどう働きかけをするコミュニケーションを取れば良いのか、というのは私たちの仕事にとっても最大の難題です。

ポスターやパンフレットを作りましょう。→字を読める成人女性の割合はたったの3割です。

携帯のSMSを使ってメッセージは?→字も読めないし、女性の携帯所持率はまだ33%です。

ラジオでメッセージを流しましょう。→地方は一日のうち半分は停電、送電されていない地域も州の3割ぐらいあるので、ラジオを聴ける人は少数です。

だったら戸別訪問で保健サービスや保健教育のメッセージを届けましょう。→女性の医療従事者でなければ家に入れてくれませんが、医療従事者の中の女性割合は1割程度で、戸別訪問なんてしてる暇ありません。

じゃあ女性医療従事者を育成しましょう。→今も女性の平均で教育を受けた年数はたったの5年で、高卒後に医療や看護の資格を取る前に基礎教育を終えるところから始めなければならず、即戦力は作れません。

えーい、だったら、巡回タクシーで女性を病院まで連れてきてしまえ!→そもそも女性は、父・夫・兄弟・息子の誰かがついてきてくれなければ外出できません。

じゃあ仕方ない、男性たちに女性・子どもの健康のために受けるべき保健サービスを教えて、彼らに病院に連れてきてもらおう。→そんなことをしたら、ますます女性が自分の健康についての自己決定力を失ってしまう!ジェンダーの視点からもダメ、絶対。

ということで、色々なコミュニケーション術を考えても考えても成果が上がらなそうなものばかり。こうやって様々な啓発手段を考えて、それらを複数組み合わせて実施してみては、なかなか思ったように成果が上がらないことに悔しがることばかりです。 途上国支援というのは、こうやって解のない課題に対してクリエイティブに解決策を考えて実施してその成果を評価することの繰り返し。ある国でうまくいった例が、他の国でうまくいくとは限らないので、横のつながりから学ぶこともあまり役に立たないし、過去の成功例もなかなかいつまでも適用していられない。 パキスタンのように非常に制約の多い環境でのアイディア出しには、こちらのクリエイティビティが試されているようです。ま、それもこの仕事が飽きない醍醐味ではあるのですが、時々、あー、私ってなんてアイディアの乏しい人間なんだ!と思うこの頃です。


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Sekomo

開発ワーカーの胸の内

途上国を転々として、相手国政府に技術支援する「開発ワーカー」なる仕事。 何してどんなことを考えているのか、たまにご紹介。
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