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社会変革×Transformation:「社会の変え方」は、どう変わろうとしているのか? ~多様な主体が“わたし”でつながり出現する未来をさぐる~

“「社会の変え方」は、どう変わろうとしているのか?-多様な主体が”わたし”でつながり出現する未来をさぐる-”をテーマに、Next Commons Lab ファウンダー 林篤志さん、合作株式会社代表取締役CEO 齊藤智彦さん、NPO法人SELF共同代表理事 野崎でセッションを行いました。モデレーターはスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版共同発起人 井上英之さんです。

野崎 恭平
株式会社musuhi 代表取締役CEO
NPO法人SELF 共同代表理事
Collective Coach / プロセスファシリテーター。鹿児島生まれ、鹿児島育ち。同志社大学を卒業後、大阪にて政治家の秘書、社会起業家支援プログラムの立ち上げに携わった後に、東北の復興支援事業に関わり岩手で活動。その後東京にて参画した会社で組織開発・リーダーシップ開発の仕事をするようになり、独立。2015年にUターンし、一般社団法人テンラボにて鹿児島未来170人会議などを手掛けた後、仲間と共にダイアログファーム「musuhi」を創業。対話をベースにした人-組織-社会-環境の結び直しをテーマに、様々な活動を行っています。

井上 英之
スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 共同発起人
さとのば大学 名誉学長
慶応大学卒業後、外資系コンサルティング会社を経て、2003年に社会起業向け投資団体「ソーシャルベンチャー・パートナーズ(SVP)東京」を設立。若い社会起業家の育成や、新しい試みの生まれる生態系づくりに取り組む。2005年より、慶応大学(SFC)で社会起業やソーシャルイノベーションに関わるカリキュラムをつくり、そこから生まれた「マイプロジェクト」という学びの手法は、全国の高校生から社会人まで実践されている。2009年に世界経済フォーラム「Young Global Leader」に選出。昨年、「スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版」を創刊。

林 篤志
Next Commons Lab ファウンダー
Crypto Village 共同代表
社会彫刻家。ポスト資本主義社会を具現化するための社会OS「Local Coop」を構想。自治体・企業・起業家など多様なセクターと協業しながら、新たな社会システムの構築を目指す。新潟県長岡市山古志地域で2021年2月に始めた「電子住民票を兼ねたNFTの発行プロジェクト – NishikigoiNFT」もプロデュースする。Forbes Japan ローカル・イノベーター・アワード 地方を変えるキーマン55人に選出。

齊藤 智彦
合作株式会社 代表取締役CEO
一般社団法人大崎町SDGs推進協議会
専務理事(業務執行責任者) 大崎町 政策参与
美術家・企業経営者。1984年 東京都生まれ。中国北京の中央美術学院に留学後、国内外で創造性と都市機能の関係をテーマにした活動を展開。 2019年 役員を務める東京の企業と鹿児島県大崎町の間で連携協定を締結。自ら大崎町に出向し、外部との連携により政策を推進する政策補佐監に就任。SDGs未来都市モデル事業、総合計画策定支援等を担当。2020年7月大崎町に新たな事業会社として合作株式会社を設立。2021年4月大崎町・県内企業とともに「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」をテーマにした大崎町SDGs推進協議会に参画、協議会の専務理事(業務執行責任者)に就任。


社会変革の根底にあるパーソナルな部分

井上:今回のこのテーマ、野崎さんのアイデアで始まったんですよね?社会変革っていうとすごい怖い感じもするけど…。笑

野崎:確かに。ソーシャルイノベーションって言い換えれば少し柔らかい感じになりますね。

井上:まずはじめに、SELFを始めた時の思いを少し語っていただいていいですか?

野崎:SELFのようなことを考え始めたのが6年ぐらい前です。社会変革は頭にあって、より良い社会をつくりたいと考え3年前にSELFを始めました。そこから試行錯誤を繰り返し、ここまでやってきたSELFの物語の先に「薩摩会議」という場があります。今日これから話したいのは“社会の変え方を、変える”なんです。

井上:社会の変え方を、変える。

野崎:そのことを探求してきた中で一つ、「多様な主体が関わり合えるような場をつくれないか?」と思ったのが6年前でした。そして、今、こうして活動していますが、自分たちでも“僕らがやってることの意味”を本当の意味で分かってるわけでもないと思っていて…。

井上:“僕らがやっていることの意味”ですか?

野崎:最初に話した「よりよい社会をつくりたい」と思って続けてきてたことは確かです。でも、「これが、正解」というのはわかってないし、もっというと「僕らは今何をしてるのか?」「周りの人や社会にどんなインパクトを与えているのか?」ということもわかってない。そんな中で、僕たちがやってることの意味やこれからの道筋みたいなものがこのセッション通じて見えてきたらいいなと思ったのが最初の思いでした。

井上:えーと、そもそも、より良い社会をつくりたいって、どうしてそんなこと思ったんですか?

野崎:どうしてそんなことを思ったのか…(しばらく沈黙)。僕が生きづらさを感じて生きてきた一人だと思っているんです。例えば、学校で色々な人がいて、それぞれ、みんな楽しい学校生活を送りたいんだけど、いざこざがある。それに対して「これ、どうにかできないかな?」「そこに自分が間に入ることで違う現実をつくり出せないか?」ということを、人生通して考えてきたのかなと思っていて。延長線上に今SELFとして活動していることもずっと繋がっている気がしますね。

井上:自分が間に入ることで、違う現実をつくれないかと思ったんですね。

野崎:お互い思っていることをストレートに伝えるって結構人間恥ずかしいし、受けとってもらえないかもしれない。だから逆のこと言ったりするじゃないですか?すれ違いが起きている時に、自分で言いながら「いやいや、そんなこと思ってないじゃん」みたいな。家族の中で、自分がその間に入って対話することで、それぞれに変化が起きていく。そういう経験をしていた時期があったんです。

井上:こういうの、メタストーリーという言い方をするんですけど、恭平くんの家族の話を聞きながら、もう1段上から視ると、自分との共通点や何か感じるものがあると思います。お互いに同じ家に住んでいても、家族は、それぞれ違う立場やフィルターで同じ状況を見ていて、互いのことを想う気持ちもあって、がんばってやった結果のすれ違いだったりする。誰だって、家族の仲が悪くなりたいとは思ってない。これって、環境問題と一緒ですよね。

 誰も、はじめから地球の気候変動を狙っていて、しめしめ!と思って、ゴミを捨てている人なんていない。でも、意図もしていなかった不都合な未来を、日常のパターンの積み重ねによって生み出している。成人病になりたいと思って、食べ過ぎているわけではないように。でも、今何が起きているのかに気づき、パターンをどこかで変えていかないと現状は継続していく。気候変動だけでなく、パンデミックだって、今後も起こり続けるかもしれない。

 社会変革といった時に、実は画素数を高くしてよく見てみると、こういうパーソナルな話や文脈が縮図となって、同じ構図で、地域や社会にいろんなことが起きてると思います。…今、みなさんが恭平くんの話を聴きながら感じていたこと、話してみたいこと、何でもいいです。周りの人2~3人とかで、おしゃべりしていただいていいですか?

(5分間会場内で話し合い)

井上: わー、皆さん盛り上がって、いい笑顔してる…。

それぞれが身の丈に合った未来をつくる

井上:多様な人たちが集まって、さまざまな動きが始まる拠点を各地でつくってきた林さんだからこそ、今までの話を聴いて思うことはありますか?

林:物理的な「重力」とは違うんですけど、空間の磁場・重力みたいなのって、インターネットで世間と繋がっていても、公共交通で外に行けたとしても、山に囲まれたような地方の空間の中ではどんどん土地に引っ張られて、定期的に抜けないと自分を保てない

 僕らが各地で拠点をつくったりする中で、そんなことがよく起きるんです。起業家の卵みたいな人とかが、僕たちのプログラム通じて地域に入って、色々なことやるんですよ。大手企業を辞めて地方に移って何かチャレンジするようなことが起きると、地元で引きこもりがちだった高校生や、結婚して地方に移住した奥さんといった人たちが、その拠点に集まってきて「ここは軽い」「ここはいられる」と思ってくれるんです。

 だから、関係性が固定されている中だと身動きがとれないんだけど、“抜け”があったり新しいコネクションが生まれたりするところは、社会のいろんなとこにあった方がいいんだなというのは各地で拠点をつくって思うことではありますね。

井上:ともさん(齊藤さん)、そろそろ喋りたいでしょ?(笑)

齊藤:喋りたいか?喋りたくないか?でいうと、少し喋りたい(笑)。今日のスタンスとしては、自分は自由でいたいなって思っていて…。登壇してる以上喋らないといけない、というプレッシャーから話すのも変だから、「登壇しても、なるべく喋らなくてもいいかな~?」って思っていました。

 僕は今、大崎町というところで活動しています。大崎町って僕が関わり始めた 当時、11年連続でリサイクル率日本一を達成していて、まちの人たちにとってリサイクルってすごい誇りだったんです。まちの多くの人たちが強い思いを持って取り組んできたからこそのオーラを感じるんですよね。僕にはそれが非常に素敵で「仲間に入りたい」と思って移住もしたんですけど、ただ同時に、そのリサイクルについてよそ者が好き放題言うことに対して、プレッシャーを感じていました。

 でも、その中で一番ドキドキしたのが「大崎のリサイクルって本当に環境にいいんですか?」という言葉だったんです。あまりにも大切にしているものだから、「大崎の皆さんがやってきたことをよそから来た人間が評価していいんだろうか?」みたいな部分がありました。でも、信頼関係ができてきたり、よそから他にも色々な人が入ってくるようになって、今は、そこに向き合えるようになってきたっていうのは、僕の中ではすごく大きいことだったんです。地域の中に、そういう言ってもいい場所が少しずつ増えてくることが、僕はすごい可能性だなって思って。

林:僕は「社会は、変えなくていいかな」、そして、「つくればいいじゃん」ってずっと思ってるんです。

 僕も幼少期語りをすると、僕は三人きょうだいの長男で、僕だけ親元を離れて、小学校時代は農業と繊維工場を営んでた祖父母の家で育って畑を手伝ったりとか、夏は祖父と近くの小川に入って小さなコブナを捕まえて、家で夜佃煮にして食べたりしてしました。それが自分の原風景なんですよね。その延長線で来ているので、今もあんまりその感覚って変わってないんです。社会人になってからまずサラリーマンのエンジニアとして仕事してたんですが、「会社にずっといなくてもいいかな」、「じゃ、自分で起業しよう」って、なんとなく入社してから3ヶ月ぐらいで思ってしまいまして。

 社会変革起こしてやろうみたいな感覚は全くなかったです。「とりあえず会社辞めるかな、何やろうかな?」って思っていたら、怪しいおじさんと知り合って「自分でやりたいんだったら、とにかく人を集めてみろよ」と言われました。そこから、池袋の汚いビルの会議室借りて、月一で自前のセミナーみたいな場を自主企画し始めたんです。でも、「セミナーって世の中にいっぱいあるから違うことやりたい」、「自分の興味が赴くままに話を聴いてみたい人を呼ぼう」と思って、当時1年間で12回開催したんだけど、そこで呼んできた方々っていうのが、ヤクザの組長や歌舞伎町のぼったくりバーの店長、さらに風俗嬢のお姉さんや、有楽町の靴磨き職人のお兄さんだったりとか。初回は、一晩一緒にビール飲んで仲良くなったホームレスのおっちゃんでした。やってみて思ったのは世の中には色々な人がいて、皆頭すごく切れるし、すごくロジックも通ってて、そして社会をしっかり違う角度から見ているということ。「世界は本当に一つじゃないんじゃないか?いろんな世界があるんじゃないのか?」って段々と思い始めました。その後、1年やって、種を探して放浪を始めたんです。メタファーとしての種ではなく、リアルな種をね。

井上:えっ、リアルな種?

林:そうそう、かつてあった種を探し歩いて日本の地方をぶらつくっていう、シードバンク・プロジェクトを始めたんです。そんなことやっていると、とある限界集落のおばあちゃんしか持ってない珍しい大豆とかあったりして。ずっとフラフラ歩いて探すのをやっていたら、地方が面白いなって思ってきたし、色々やっていく中で「どうして変わんないのだろう?」という壁にブチ当たるわけなんですね。憤りを感じたりするんだけど、「面倒臭せぇ」が溜まりすぎて「もう変えるのをやめよう」って思って。社会や世界は一つじゃないはずなので、「自分たちで無数につくれるんじゃないか?」と思い始めて、今の活動に至るという感じです。

齊藤:僕もちょっとだけ幼少期語りで。生まれた時から反抗期の末っ子で、納得のいかないものが世の中に多すぎるということに対しての反抗がすごく強かったです。このセッションの話を頂いて1つだけ言葉として残せるかなと思ったことがあります。
 それは小学生の頃に感じた「どうして勉強する必要があるの?」という疑問を、そのままにしないでずっと生き続けていることです。社会の当たり前でモヤモヤする、もしくは、納得できないものをちゃんと無視しないでつくって向き合っていきたい、という僕の根源的な欲求で続けていることなんですよね。美術の畑の人間には、納得いかないものに対して、ちゃんとつくっていける素地が若干あるのではないか 。そう感じて、今は一つ一つ気になることを潰しながら生きていくことを続けています。

野崎:なんでしょうね…。昨日、革命セッションの中で川原卓巳さんが「色々なところで色々な人たちが色々な取り組みをしてるだけど、それがいくつもの点になってきていて、もうそろそろ本当に変えないといけないじゃん」、「それが点じゃなくて、面にしていくということをやるタイミングに来てるんじゃない?」って強く言ってくれています。
 要するに、「社会を変える=大きなことでなくてもいい」と咲ちゃん(山川咲さん)が、同じセッションで言ってくれたんですが、そうなった時に“「社会の変え方」は、どう変わろうとしているのか?”というテーマが置かれているこのセッションの中で、「社会、変えなくてもいいんじゃないか?」って篤さん(林さん)も言ってくれたけど、そのことは昨日の問いから、このセッションにちょっと持ってきてみてもう一度話してみたいことだなと思いました。

(川原卓巳さん登場)

川原:革命セッションの話や今日の話の流れを受けて、すごい感じていることがあります。それは「それぞれの身の丈でいいんじゃない?」ということです。
 社会を変えることに対して、僕まだ元気なんですよ。だから「やろうぜ」って言えるターム(時期)だけど、篤さんの話を聴いていると「いや、そんだけ変なことやり切ってて、そりゃ疲れるわ」とも思った。逆に、そこで培ってきた知見を共有してもらって、今元気な人に渡してちょっと休んでて、と思いました。それぞれの身の丈っていうのを合わせていった結果、みんなにとってのちょうどいい未来をつくれるんじゃないかと感じています。なので、喋りたくなかったら喋らないでいいし、嘘つかなくていい。「このセッションの環境が、社会変革の話題そのものになってる感じがするなぁ」と思いながら、言葉にさせてもらっています。

(川原卓巳さん退場)

齊藤:ちょっとしゃべりたい(笑)。すごい良いお話聴いたな、と思って。僕もそれなりにまだ若いって思ってはいるんですけど、変えたいことに対して欲のある若い人たちの力っていうのはすごく改めて感じています。実際僕自身は、そこに対するパワーが無くなってきていると感じたりするんです。子育てが始まったりすると、単独で社会に突っ込んでいくことに、ちょっと限界を感じるというか…。家庭も守りたいし、でも、そっちもやりたい。その間に揺れたりするんですよね。

 僕らは“合わせて作ると世界はもっと面白い”をコンセプトに、「合作」という会社をやっていて、二人のサイトウで創業したんですよ。アートをやっている齊藤と、素粒子理論ソリューション物理学をやっている西塔っていう、全く関係ない二人で創業した会社なんです。僕とは全く関係ないことやってきた、もう一人の西塔とのコラボがすごい面白い。
 自分が持ってないものを持っている人間と何かを一緒にやるってことが人生最高の楽しみの一つ、という感じで始めた会社ですが、社員の一人が突然、「今回の統一地方選出る」って言い出したんです。単純に大崎町のためにやりたいからって。それを僕は「すごくいい、よかった」と思っています。僕らじゃできないことを、考えてもみなかったことを若い子たちがやってくれて、そんな環境が生まれ始めていることの嬉しさっていうのがすごくある。
 それぞれにフェーズというものがあって、変革に対する欲求が少しずつ変わっていくんじゃないかなと思っているのですが、ちょうど僕と同世代でお子さんもいらっしゃる林さんはいかがですか?

林:激しくつくれよ」って思ってるんですよ。つまり、もちろん“変える”と“つくる”というのは解釈によって違うんで、似てはいるんですけど、敢えて僕は分けて表現をしています。変えるということは、ある種、そこにいる生き物たちを殺すみたいな感覚があるんです。でも僕は「殺す必要はないんじゃないか?」って思ってるんですよね。
 例えば、色々な生き物がいる池があったとして、そこの環境をドラスティックに変えると、結局は人の死にまで及んでしまう事態になるかもしれないんだけども、その隣にもう1個違う池をつくって、そこに自分が表現したいタイプの 生き物が生きられる環境をつくっていくと、それと共存することは可能だと思うんです。でも、元々あった池を無理やり変えて生き物を殺しても、変わるかどうかわかんない、もしかしたら何も生まれないかもしれない。

 それは国だったりとか自治体だったり、今の社会制度だったりするかもしれない。本当に変えるつもりあるんだったらいいんだけど、「本当に変えられますか?」「変えて色々なものを殺さないですか?」って、問いたい部分はあります。だって、変えたいと思っている対象も、結局昔誰かつくったものじゃないですか?国や自治体という概念もそうだし。フレームワークそのものを再発明していくっていうことが、今必要なのではと思っています。変えなきゃいけないっていう思い込みから外れて、皆さんが「こういう世界いいよね」と思うものをつくれよって話。それが多元的に成立している世界はあるんじゃないか、って思っていて。もう今日はそれだけ言いたかった!以上!

(会場から大きな拍手)

違うものがあると理解することで生み出される変化

井上:この時間を踏まえて三点お伝えしたいことがあります。一つ目がコレクティブインパクト。簡単にいうと、異なる背景や立場の人たちが、互いに協力し合うことや、そのためのよいやり方を見つけていくことですね。
 そのテーマが、今、さらに、「エクイティ」と言って、“社会の構造を背景にしたいろんな差別や格差の解消に向き合うことなしには、協働は進まない”という話に進化しています。

 この会場のステージに、空席の椅子をひとつ置いたのも、その象徴でした。サッカーのサポーターが、12人目のフィールドプレーヤーみたいな話で、この席は、会場やネットでこの場をつくってくれている皆さんです。同時に、こういう、言論をベースにした場にはきっと来ないだろう、たくさんの地域や社会の人たちの存在を代表してもいます。

 この社会には、さまざまなマイノリティの人たちがいます。同時に、どんな人も、どこかで必ずマイノリティでもあるんですよね。家族で唯一の男子ですとか、転職や引っ越してきましたとか。マイノリティであると同時に、同じ人の中で、マジョリティとして、「それ、そういうものだよね」とこれまでのパターンを踏襲することで、誰かを端っこに追いやることに加担もしている。だから、自分をまず理解してみる。自分がどんな前提で生きていて、何を大切に思っていて、なぜこれに駆り立てられるのかを理解すると、他者の気持ちがより分かるようになる。完全に共感はできなくても、違う立場への理解が進み、そこから、新しい選択肢が生まれてくる可能性にもつながる。

 二点目、地域の循環。鹿児島の街をちょっと歩いただけで様々な歴史や自然の資源があって、そこには文化や物語が必ずあります。それらは実際見えにくいし、聞こえにくい。でも、そこに注意を向けて、耳を澄ませてみることで、大切なリソース(資源)や、よいやり方や考え方、よい習慣などがみえてくる。それらも、あるものとして扱っていくことで、これからの新しい地域での循環をデザインし、生み出していける可能性があります。

 最後に、テクノロジー。技術というものが大きく世界に影響を与えていますよね。それこそ僕がソーシャルイノベーションに関わり始めた90年代後半にインターネットブームが起きて、若者の起業がガンガン増えたんです。その時に一度、社会起業ブームが起きてるんですね。「テクノロジーで世界を変えた、次は社会だ」ということで、ビジネスセクターの若者たちが社会セクターに流入してきた。一方、その後、何が起きたかというと、インターネットは、自分と似た人たちをどんどん繋げ出したんです。その素晴らしさもあったと同時に、分断を生んだ部分もある。さらには、GAFAのように支配的な大きなデータを握って、囲い込むような企業も出てきた。

 それに対し、先日、NTT東日本の社長さんともお話したのですが、より自律分散的な世界観をもって、地域の循環に関わり、いちプレイヤーとして、社会のイノベーションのために一緒に何かをしたいと考えている企業も出てきていて、技術的にもいろんなサポートを始めてるんですね。これからの世界は、一人一人の力や毎日のパターン、例えば「誰かの話をもうちょっと聴いてみよう」「ありがとうと言ってみよう」といったことが、システム全体の変化にいかに重要か、より意識的になっていい。こうした、個々の努力や地域での取り組みが、技術的にも、より互いに連携しやすくなっている。

 プレイスベースド(place based)・ソーシャルイノベーションという言葉が、このところよく登場します。今ベースを置く地に足をつけて変化を生み出し、そういう場所同士で連携していくんですね。ほとんどの人は、やっぱり、どこかの場所で生きていく必要がある。その時、やっぱり、必ず自分と違う立場の人と出会い、協働する必要があるんですね。

 人が生きていく中で、新しい未来をつくろうとした場合、どうしても、違う立場の人と対話をする必要がでてきます。現状の延長において、僕たちの社会には危機の期限が迫っている。そんな中、それぞれの中に、「こんなふうにやってみたら、うまくいくよ!」という、たくさんの、セオリーオブチェンジの火種があると思うんです。こうすると人はもっと近くなれる。こうすると何かが前に進むよ、って。それを共有し合って生み出されていく変化っていうのが、もしかすると、今これだけの深い変化が必要になっている時代の、社会の変え方のひとつなのかもしれない。

 今日、この時間、三人とも“私”を主語に自分の話を、参加した皆さんも、たくさんお話してくださいました。そして、その背景に興味深い共通の物語がいくつもあった。それぞれが、お互いの違いを知り、共通点を見つけながら、そして繋がりながら、システム自体が変わっていく。そんな一歩をここに集まった人、そしてオンラインで見てくださった方々含めて、共有しあえたように感じたこの時間をすごく嬉しく思っています。

齊藤:何が良かったかって、最後に、林さんがすごい問いを残していかれたなと思って。これからこの話をしたい気持ちですし、実は、この後スライドで色々聴きたいことがいっぱいあったんですけど、ちょうどそれがこの話だったんだなって思います。別にここで話が終わる必要もないから、続きはまた皆さんだったり一人だったり、色々な形で考えていきたいです。

林:今ここで喋っている僕と、家に帰って子供と接している僕と、地元に帰って同級生と喋っている僕は違うんですよね。だから一人という人間でも全然違う。そういった多面的な個人が当たり前に生きられる社会をつくんなきゃいけない。
 つくるのは何でもいいんです。家帰って畑探して野菜をつくってもいいかもしれないし、家を建ててもいいかもしれないし、国をつくってもいいかもしれない。自分たちで理想するものをつくればいい。僕はそういった意味で、そういうつくるためのアーキテクチャみたいなものをつくり続けていこうと思います。

野崎:全然まだ消化しきれないけど、ザワザワやモヤモヤといった、気持ちのいい問いみたいなものがある気がしています。社会の「変え方」を変える、ということをこのセッションのテーマとしてそれぞれの話を聴いていると、「だから、社会の変え方自体を、変えようとしてるんだ」というのが腑に落ちてきました。「今までの変え方だと変わらなかったなら、変え方自体を変えないといけないというところに来てるんだな」と、改めて思いました。
 SELFでは“transforming our SELF、transforming our world”と言ってるんですが、僕らは「自分が自分だ」って思ってる。そもそもの自分に付与してる、「自分」という存在自体に会いに、開いていく。そこにヒントがあるのかもしれません。僕にとってSELFというものは、皆で一緒につくってきてるし、つくらされたみたいな感覚を持っている中で、僕らのSELFとして進んでいく、社会の新しい「変え方」は、SELFということの探求の先にあるのかもしれない。今日このセッションの中で、最後はそういうことをずっと考えていた時間でした。

井上:今日はどうもありがとうございました。

(ライター:上 泰寿 校正:SELF編集部)



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