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【SELSHA通信1月号】 「宝石と鉱物の文学誌」&ガーネット

SELSHA通信は天然石ショップSELSHA が2022年から始めたメルマガです。ここでは天然石の話だけでなく、日頃私、ショウ・コハンが気になった「本」を合わせてご紹介していきますので、SELSHAを運営している人ってこんな人なんだなと思って楽しんでいただけたら幸いです。

『SELSHA通信』 第一回目でご紹介したい本と天然石は

宝石と鉱物の文学誌

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著者はジョージ・フレデリック・クンツという鉱物学者、鉱物収集家。既に知っている方もいらっしゃると思いますが、紫とピンクの間のような色合いの「クンツァイト」という宝石の名前の由来になった人です。なぜこの本を紹介しようと思ったかとういうと、たまたま我が家の本棚に手を伸ばして見つけた一冊です(笑) ほんの一瞬の出会いですが、読んでみるとどんどん興味を持つようになって、こんなに考えさせられる本ならちょっと皆さんにも紹介したい・・・というのがきっかけです。

どうやらジョージ・フレデリック・クンツはティファニー創設者に若くして希少なトルマリンを売り渡したことがきっかけでティファニーに加わり、その後大活躍されたということですが、この本を読み進めていくと、著者は特に古書や言い伝えなどから、古代の人の宝石に対する迷信について深い所まで調べ、かつ自分なりの考察がしっかり加えているという印象を受けました。クンツ氏は多くの書籍を残していますが「宝石と鉱物の文学誌」はもっともよく知られたものです。

本書は第1章から11章までありますが、1章~6章は石にまつわる迷信や、魔除けとしてどのように使われていたのかが細く書かれています。

本文からの引用:
「身に着ける人が信頼するのは護符や宝石という物質そのものではなく、それが意味し形にする概念である。国旗や軍旗が数メートル四方の記事でしかないのに、もっとも高貴な概念や感情、祖国や同国人への愛国的な献身のシンボルである」

読んでみるとうなずける箇所は沢山あります。”迷信”というとなんだかネガティブに聞こえますが、確かに人の知性のもっとも高度な特質である想像力と関係していますので、安易に全否定してはいけないんですよね。ちなみに私は中国生まれですが、9歳までを過ごしていた現地の学校では毎朝全校生徒が校庭に立ち、国旗が上がっていくのを見届けるのが一日の始まりでした。しかもその国旗を揚げられる生徒は必ず学年成績トップでければならない。いわば憧れの存在です。(私はには程遠かった世界です)これも立派な迷信でしたね。

宗教が絡んだ話も多く書かれていて、宗教の中で石をどのように使っているのか、なぜそれを使うようになったのかについて述べられています。

本文からの引用:
「宝石、あるいは特集は石を主教的な目的で用いるのは、それらの石に護符としての力あるという原始的な考え方が自然に発展し、石に超自然的な性質が宿っているならば、神々の彫像を飾り、聖なる書物からの引用句を刻み、死者の魂がよりよい世界へ安全に旅経つのを保証する「パスポート」として死骸に添えるのに、これほどふさわしいものが他に考えられるのだろう」


私は石のパワーよりも自分のパワーを信じる人ですが、この本を読んだことで自分の考え方をアップデートできたような気がします。”迷信”というのは、人間が一生懸命不確実なものの原因を探ろうとする姿勢、それでも解明できないことで何かにすがろうとする姿であるようです。そのど真ん中にいると周りが見えないかもしれませんが、その事実を客観的に見ると”迷信” とはとても人間らしい営みのようにすら思えてきますね。

ガーネット


さて、1月の誕生石としてガーネットについてもずっと調べていました。ガーネットは多彩な色と種類がありますので、ネットで検索すれば大量の情報が出てきます。SELSHA通信でガーネットの情報を紹介しても個人的に面白くないなと思うので、一般的な知識はここでは紹介せず、あえて的を外したところに焦点を当ててみたいと思います。 (ガーネットの基礎知識を知りたい方は、昨年私が妻のジュエリ用に製作したYouToube動画を見てみてくださいね)


では、いきなりですが
2021年の年末に誕生石が新に増えたことは皆さんはもうご存じですよね。私はそれを聞いてよく理解できなかったので、全国宝石卸共同組合が発表内容を調べたのです、下記はその一部分を抜粋しました。

「今回改訂する理由としては、国内においても様々な誕生石リストが混在しており、消費者が混乱するため、業界として誕生石を統一することを第一に考えました。また、コロナウイルスの感染拡大により、ジュエリー業界は大きな痛手を被っています。誕生石改訂により、消費者の選択の幅が広がり、宝石への関心を高めて頂きたいという願いも込めています。」 

今回新たに加えられた誕生石の説明を見ますと、そもそもなぜ1月の誕生石はガーネットなの?と疑問が湧いてきませんか(笑)インターネットで色々検索したのですが、あまり収穫が得られず結局家にあった「宝石と鉱物の文化誌」の中にヒントがありました。

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そこで私が調べた誕生石の起源をざっくり紹介しますと、まず最古のヨハネの黙示録で描かれたエルサレムの土台石の名前の順番が各月の誕生日石をきめていたそうで、その後紀元前1世紀の歴史家・政治家のヨセフスという人が書いたユダヤ古代史の中で一年12の月と大祭司の胸当ての12個の石、そして王道12宮との間につながりがあると本に書かれています。そして実際誕生石を広げたのはポーランドに移住してきたユダヤ人で、彼らは移住の際に常に貴重な宝石をたずさえていたのです。

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時代は変わり、1912年8月にカンサスシティーで開かれた米国宝石商組合
(現在のJewelers of America)の会合で正式に「誕生石」が制定され、1952年には改訂を経て現在のものになります。当時アメリカにいる宝石商もやはりユダヤ人で、宝石の交易を活発に行われいました。当然ユダヤ聖書の影響を受けていることは言うまでもないです。ちなみに、日本では、1958年 同じくアメリカの原則をベースに、桃の節句にちなんで3月にはサンゴ、5月には緑色の翡翠を追加し、制定したといわれています。

つまり私が思うに、超シンプルに一言でいうと、いろんな理由でいろんな人が主張している中、力を持ている国が「1月はガーネットだ!」と決めたのではないでしょうか?
もし違う理由を知っている方がいらた教えてください(^-^)

多くの人が誕生石を用いたジュエリーを好むのは、自分とその宝石との間の繋がりを感じるからです。思い入れがあるジュエリーは、そうで無いものに比べてはるかに「価値がある」と認識され、それぞれ固有の物語が重ねられて満足感を得ているはずです。この感覚は人としての素晴らしい能力の一つ「想像力」だと思います。ナポレオンが言ったように想像力こそが世界を統治する、想像は人生の中でもっとも強い影響力を持つ要因です。想像力、感じる取ることは本当に大事にすべきだなと思いました。

調べる途中でいろな歴史的な背景を知って見えてくるものや、考えが少し深まったように感じました。ガーネットという石がきっかけで、関心の赴くままに進んでいくとどこかの歴史のワンシーンにたどり着き、また現代に引き戻される。これこそ本を読むことは旅することに似ていますね。

この記事をを読んでくれている皆さんにも心の赴くままに探検して頂けたら嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
次回のSELSHA通信でまたお会いしましょう(^^)/
SELSHAのインスタグラム:selsha_stone


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