見出し画像

🇹🇭タイの旅行紀 Part 1《宝石買付編》

10月は3年ぶりにタイ🇹🇭 へ行ってきたので、今回のブログでは旅の話を中心に綴りたいと思います。
- Part 1では買い付けをメインに
- Part 2 では旅で見たこと感じたことについてお話します。
タイに暮らしてみたい方、あるいはタイで買い付けをしてみたい方はきっと何か良いヒントになるかもしれませんので、ぜひ読んでみて下さい(^^)

Part 1 《買い付け編》  学んだこと、感じたこと

コロナ自粛後3年ぶりの海外ということもあって、最初は私もちょっと緊張気味でした。でも、いざスワナプーム国際空港に到着すると「おかえりさない」と言わんばかりの喧騒とアジア独特の匂い。タイは私にとって第3のホームなので、おのずと緊張もほぐれ安心感を感じました (笑)

久しぶりのタイでの買い付けは楽しかったが、結構体力を使いました。長距離バスに乗ったり、飛行機で移動したりといろんな場所を周ったのですが、その中でも、最近一般的にも名前が知られるようになってきた買い付け場所のひとつ《チャンタブリ―》について紹介してみたいと思います。

チャンタブリー宝石マーケットの様子

バンコクに住んでいた頃、妻はAIGSというバンコクにある鑑別機関兼スクールで宝石のグレーディングについて学んでいてました。そこではカリキュラムの中にチャンタブリーの視察が入っていて、私も行ってみたかったので生徒ではないけど参加しました (笑) その辺のゆるさがタイらしいですよね。GIA出身のフランス人の先生に案内され、始めて訪れたチャンタブリ―。それから頻繁に妻と2人で買い付けに行くようになり、だんだんと現地の人と繋がるようになりました。今は慣れましたが、こういった場所での取引は独特なので、初期の頃は圧倒されて思い返せばレッスンピースをかなり買っていましたね (笑)

平日は静かなチャンタブリーの街並み

このマーケットは週末に開催されます。海外バイヤーはむしろ少数で、バンコクにいる宝石業者が仕入れに来ます。ここはプロの仕入れの場所であって定価や値札もないので、宝石の専門知識がないと価格も価値も判断ができません。旅行者や初心者はすごい高い値段をふっかけられていいカモになるわけですが、こういった場所であってもそれはそもそも小売ですし、業者相手であっても相手はできるだけ高く売りたいので、”交渉” が必須になります。何度も通うと人脈が出来てくるので、今はある程度欲しい石を事前に連絡して用意してもらえるようになりました。

バンコクからチャンタブリ―行きのバス

バンコク市内からはバスに揺られて5時間、3年ぶりのチャンタブリ―に到着してみると、街には思っていたより活気がありました。コロナでずっと店が閉まっていたようですが、6月くらいから回復してきたようです。今回も数日間滞在してみたのですが、ごくごく普通の一般ウケするルビー、サファイア、スピネルをブローカーはたくさん持ってくるのですが、SELSHAが求めるような「個性的な石」は1つも見当たらない。 

チャンタブリ―で泊まったゲストハウス

初日はずっとテーブルに座ってブローカーが持ってくる石を、受け身で吟味していましたが、ピンーと来る石がほとんどなくて、2日目は自分の足を使って探し始めました。タイはすでに乾季に入っていて北部は20℃くらいまで下がることがあっても、南側のチャンタブリ―は35℃を超える真夏日の日々が普通です。こまめに水分補給しながら歩き回って、やっと自分が求める綺麗なコランダムを見つけられました。

成長線が綺麗なバンカチャサファイア 

タイはもともと多くのコランダムを産出していたのですが、既に殆どが枯渇しています。しかしその加工技術はそのまま残り、今では世界中から原石が入ってきて、ここチャンタブリーで加熱処理などの加工が施されています。そしてバンコクではジュエリー加工も大きな産業です。世界的に有名なジュエリーブランドもタイで作っていることが多いのです。

買い付け先のこの道40年のタイ老夫婦から聞いた昔話ですが、40年前はスリランカから大量に原石を買って、加熱するのが当たり前の時代でした。原石を高温で焼くことによって不純物が溶けて透明度が上がるし、色も鮮やかになるので、当時は一攫千金を狙って多くの人が原石を仕入れ加熱していました。しかし「ハズレ原石」もたくさんあるので、財を成せたタイ人はほんの一部分だったそうです。

ですが近年は処理の認知も広がって、天然の状態を意味する「非加熱」を好む人が多くなりました。極端に言えば、過去には価値が低かったような石が、今は〇〇産非加熱という札を付けるだけで価値を主張できるという訳です。逆にいうと価値をあげる要因だったはずの ”処理” は価値を下げる要因という認識になりつつあるのですから、『価値』というのは時代によって変わるものだとつくづく思いました。

希少な12条のブラックスターサファイア

今回私がチャンタブリ―で買い付けた石の中でも、個人的に好きなのがタイ産のブラックスターサファイアです。一見真っ黒で良く分からないが、光を照らすと綺麗なスターが見え、青や黄色の成長線が見えるものもあります。中でも妻に『絶対に探し出してこい』と念を押されたのが希少な12条のスターサファイア。殆どが6条のラインなのですが、それが2つ重なって12条になるものがあります。時間がかかりましたが見つけることができました。

スターサファイアの多くはスリランカ産やミャンマー産ですが、ブラックスターサファイアに限ってはタイ産が有名です。男性にも似合うところがいいですよね。今回仕入れた石の一つで私も指輪が欲しいなと思っています。

ちなみにスターが見えるのという現象は内部に”シルクインクルージョン” と呼ばれる針状の内包物が平行に並ぶことに起因するのですが、今では『ベリリウム拡散処理』と言って、人為的にスターを強めることが出来るようになってしまいました。それを”天然のスターサファイア” といって販売されているのを見かけることがありますが実際にスターは人工なので、ちゃんと明記して欲しいです。ブラックスターサフィア1つにとっても奥が深いですね。

こんな在庫の中から実際に仕入れるのはごくわずかです。

最後に買い付けの旅を通して、個人的に感じたことは・・・
ちょっと宝石から内容がそれるかもしれませんが、やっぱりどんなにビックバイヤーだろうと、どんなに偉そうにしていても、結局私たちはマーケットの中にいるのです。つまりゲームプレーヤーなので、時代の流れ(ゲームのルール)には大きく逆らえないのです。処理石の価値と非加熱の価値も時代によってゲームのルールが変わればそれに準ずる。自営業でチャンタブリーに来ても、会社勤めのサラリーマンでも、自分の内側にある「判断軸」を持って物事を決めれるかどうかが、非常に大事です。

それともうひとつ。日本には茶道という総合芸術があります。茶道で用いられるお茶碗は非対称のものでも、色むらがあっても、それで良しという世界なんだよね。そこで大事にされているのは日本で独自に進化した美学で、わびさびという神髄が表してるように、不完全なものこそ礼賛する。私は今まで数年間茶道を学んできましたが、その中で得た体験や気づきが宝石の買い付けで自分が大事にしている「感覚」と通ずるものがあるなと感じました。

妻の音声配信で夫婦対談してみたので、買い付けの様子など、声でも聞いてみてくださいね。

旅行記の生活編はこちらから⬇︎

最後まで読んで頂きありがとうございました。
(^-^) ご感想やご意見があればお気軽にメールやDM下さい。
それではまた来月にお会いしましょうー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?