「ヴァノスギア:アビスアリス」

このたび仙望廊では、ゲームマーケット2019春にて頒布された、サークル「OZplanning」さんの「ヴァノスギア:アビスアリス」のテストプレイおよび一部カードデザインを担当致しました。

当記事では我々がデザインしたカードのうち4枚を取り上げて、
●既にお手に取っていただいた方へ、製品コンセプトのより深い部分
●これからお手に取っていただく方へ、世界観の魅力
を、それぞれお伝えできればと思います。

なお、6/30(日)には「ヴァノスギア:アビスアリス」を体験できるイベントが開催されます。当セット未収録の、18枚目となる隠されたカード《ジョーカー》が配布されますので、すでに楽しんで頂いている方も、まだお持ちでない方も、どうぞお越しください。
大人気、第二版も即完売多出の「赤い扉と殺人鬼の鍵」も体験できます。


《マーチヘア》

マーチヘア、すなわち三月ウサギは、不思議の国のアリスにおいて「狂ったお茶会」を開くマッドなウサギです。

●ハート:全てのプレイヤーはそれぞれの山札の上からカードを1枚引く

舞台はお茶会です。主催者は品物を振る舞うのが義務というものでしょう。マーチヘアはお茶会の参加者にカードを「プレゼント」します。ゲーム上相手の手札が増えることは好ましくありませんが、しかしこれはヴァノスギア、山札が減ることはキャラクターの寿命を減らすことにもつながります。
手札を増やしたことで一時的に相手は強くなりますが、しかしそれはお茶会の享楽の時だけで、実は寿命が縮んでいるところがミソです。ひょっとしたらお茶の中には遅効性の毒が、とか。

●ダイヤ:対戦相手1人の山札の一番上を公開し、絵札でなければその山札を上から2枚捨て札にする

お茶会ではちょっとしたゲームも催されることでしょう。ちらりと山を拝見し、絵札でなければ罰ゲーム。やはり当座に影響はなく、お茶会を邪魔せず寿命に干渉する。そういう効果です。

●スペード:場札の数が3の倍数の対戦相手1人に1点ダメージ

主催者は少々おいたが過ぎるお客様へペナルティを与えることもできます。三月の数字に引っ掛けて、条件に合致するお客様にダメージ。3ぴったりでは範囲が狭過ぎるので、倍数になっています。

●JOKER:すべての対戦相手は手札をすべて捨て札にする

「ヴァノスギア:アビスアリス」のゲーム的魅力は、とにかくJOKER能力の派手さに尽きます。
コストとなるカードが3枚(アリスは2枚)しかない代わりに、見た目やゲームへの影響が色濃い能力が勢揃い。キャラクターの個性を活かし、かつ「なんとか狙って使いたい!」と思われるようなテキストを目指しました。

さて、マーチヘアのJOKER能力は相手全員の手札を全て捨てさせるというもの。これが決まると他のプレイヤーはそのラウンドではもう動けなくなってしまいます。
三月ウサギはお茶会の主催者です。主催者ですから、いつでもパーティーを終わりにすることができます。参加者が遊んでいるのは主催の用意したテーブル。最初から全てウサギさんの掌(足ですが)の上だった、ということです。
ハートの能力を使った後でJOKERを使うと、相手はせっかく引いたカードを無駄にさせられてしまいます。「お茶をどうぞ」「やっぱりあげない」というシニカルで無意味なやりとりが再現できます。

また、ヴァノスギアにおいては、手札を減らすということは、すなわちまた引くということ。JOKERもまた、寿命を削る能力なのです。


《ハンプティ・ダンプティ》

擬人化された、ずんぐりむっくりな卵。バランスを崩して落っこちる童謡から、現代においても様々な作品でモチーフに使われています。

●ハート:自分の山札の一番上のカードを捨て札にする。それが絵札でなければ、このターンの自分へのダメージはすべて0になる

ライフが1しかない、とても脆い彼を守る唯一の手段です。一度踏ん張れれば、少しの間は大丈夫。「よろめいておっとっと」な危うさを表現したいと思い、運要素を付与しています。逆に言えば、これが成功していない間はすっとよろめいているのが彼です。重心は高め。

●クラブ*2:自分の場札の数がもっとも大きい時、全てのプレイヤーに3点ダメージ

割れます。それはもう、派手に。派手であるためには影響力が必要です。影響力とはすなわち場札。自分の場札が一番大きければ、皆その爆発を避けることはできません。
ゲーム的にはハートの能力を使ったあとであれば自分だけ回避することもできますが、ハートが失敗した隙にうっかり押されないように気をつけましょう。

●スペード:自分の場札の数を+2

ヴァノスギアの基本をなす数値調整です。場札の数が重要であり、ぐわんと膨らむ彼をイメージさせます。また、「勝たないとそのまま死んでしまう」ケースを回避できる策としての側面も大きいです。なにせ、ライフが1なのですから……

●JOKER:自分の場札の数だけ、すべてのプレイヤーの山札の上からカードを捨て札にする

彼の爆発の真骨頂はクラブの能力にとどまりません。大きな場札とJOKERを用意すれば、山が切れかけた相手をライフに関係なく巻き込んでしまいます。カッと光り、次の瞬間には跡形もなく周囲が吹き飛ぶ……バランスを崩した結末は、いつだって大爆発。

相手は不発に留められるようなんとか知恵を絞り、こちらはハートに祈る。雰囲気がガラリと変わり、全く別のゲームになります。ぜひ一度お試しあれ。


《クイーン・オブ・ハート》

ハートの女王。癇癪持ちで激昂し、すぐに首を刎ねさせようとする。もとより切れ味鋭いキャラクターであり、「アビスアリス」ではその性質をそのままに、アリスと並ぶ目玉として捉え、存在が際立つようにデザインを進めました。

●ハート*2:対戦相手1人に1点ダメージ。自分のライフを1点増やす
●ダイヤ:対戦相手を1人選ぶ。その対戦相手は手札からカードを2枚選んで捨て札にする
●クラブ:対戦相手1人の場札の数を-2

上3つの能力は、全て相手を損させる能力です。すぐに癇癪を起こすこと、女王という立場でトランプを使役することから、「自分を強くするよりも、刹那的に誰かをいたぶって高みの見物をしたい」という方向性で一貫させています。

基本的には、すべてが「首をはねておしまい!」を起源とするものです。そんな命令をする女王ですから、直接ライフを狙う能力は必要です。ハートでそれを賄うことが相応だと考え、ハートの能力として配置しています。その首は戦利品として献上され、女王を満足(=回復)させるのです。

他2つは直接首を取りにはいきませんが、「一方的な断罪」のような捉え方がしっくりきています。「いやがらせ」であり、自分が手札(=兵隊)を使って、相手にもっと損をさせる。弱くする。ハートの女王はとにかく他罰的です。そして、それを可能にする権力があります。

●スペード:自分の山札の上からカードを1枚引く

「誰かをいたぶる」説明には該当しませんが、1枚使って1枚引くこと自体は「自分を強くする」というわけでもありません。上3つの能力につなげ、結局は誰かをいたぶる手段になるわけです。
また、《マーチヘア》で少し触れた通り、自分の山札を減らすことは寿命を減らすことを意味します。女王は癇癪持ちで刹那的です。今満足することが何より大事なのです。

●JOKER:自分の手札をすべて捨て札にし、ライフを13にする

「ヴァノスギア:アビスアリス」の中核といっても過言ではない能力です。類を見ない、まさに「桁違い」を実現する能力で、一度決まれば何もせずとも相手が先に勝手にライフを散らします。
スート単位である13体の兵隊をずらりと並べ、次々に身代わりにする自分勝手さを表現しました。

一見ド派手(物理的にはもっと派手。画像参照)な能力ですが、その分最も時間をかけた検討がなされています。
・山札がその場で10枚程度減少するので、その実使い所を選ぶ
・手札も全てなくなるので、次に4枚の山札減少が確定する
・他の能力が他罰的なため、山札を減らさないように場札だけで勝つのが難しい
……といった、テキストの裏側のデメリットを踏まえて提案に踏み切りました。

当初は手札を全て捨てるテキストはありませんでした。13という数字にこだわりたいが、バランス的にはもう少し山札を……というところで試した中、「癇癪を起こした」表現(=刹那的)として最も優秀だと判断。ちょうどよいデメリットで、かつ納得のいく表現ができたと思っています。

ちなみに、原作ではハートのジャックを思い切り断罪しようとしているハートの女王ですが、「アビスアリス」ではハードのジャックである《グリフォン》が、逆に(クイーン・オブ・ハート》のJOKERに対抗できる能力を持っています。暗黒化した世界での逆転現象も、それはそれで面白みが出るものと判断しています。


《深淵の国のアリス》

「世界が暗黒化したのは、アリスが不思議の国を訪れたから……」と、事象を察知したアリスは責任を感じ、「自分がこの世界に対して責任を取る」ことを選びます。しかしながら、それは救済というよりは、破滅に近い信念によるものだった……というのが今作のストーリーです。

●ハート:切り札のスートがハートのすべての対戦相手に1点ダメージ
●ダイヤ:切り札のスートがダイヤのすべての対戦相手に1点ダメージ
●クラブ:切り札のスートがクラブのすべての対戦相手に1点ダメージ
●スペード:切り札のスートがスペードのすべての対戦相手に1点ダメージ

OZplanningさんから頂いた原案は、それを見た瞬間に「狂気の全てを消し去る」狂気の表現が必要なのだということがありありとわかるものでした。
原案では同スートから1人選んでダメージを与えるものでしたが、
・アリスの目的は個々のキャラクターではなく世界にフォーカスしている
・誰を落とすかの政治ゲームではなく、アリスvs世界という一時同盟を演出したい
という目的から、スート全てが影響範囲となっています。

●JOKER:対戦相手1人のライフを3にする

《クイーン・オブ・ハート》へ突きつける刃であり、まさしく女王を打ち倒す「切り札」です。
即死とまではいきませんが、癇癪を起こした女王はお城(=山札)の資源を浪費していますから、これまで兵隊の上から高みの見物だった女王が一点、寿命をカウントダウンされる立場へと急転直下するわけです。

最初はもっと露骨で「対戦相手1人に13点ダメージ」でしたが、さすがに確定キルはね……ということで落ち着ける形へ。



本記事を通して世界観、フレーバーの魅力が伝われば幸いです。
どうぞ「ヴァノスギア:アビスアリス」をお楽しみください。
深淵の国の戦乱、その結末を見届けるのは、あなたです。

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仙望廊

カードゲーム、ボードゲームをはじめとするアナログゲームのプレイテスト/ルールマネジメント/大会運営を担う団体、仙望廊。自作ゲーム企画も進行予定。 同人ゲームのお手伝い、いたします!
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