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『パクチーとアジア飯 (阿古真理)』【読書ログ#20】

以前読んだ「小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代」の著者の新作だ。スパイスとアジア飯を愛する人に読んでもらいたい力作。立花隆がアジア飯研究をするとこうなるのかもしれないと思わせるほどの力作。いいすぎた。でも、力作。いい本だ。

パクチーを起点に、HanakoとDancyuの全バックナンバーを調べ、日本の老舗アジア飯レストランや、農家、関係者を取材し、日本にパクチーやアジア飯が、カレーが、スパイスが、中国料理が、如何に日本人の生活に浸透していったか。これを丁寧に紐解いた。

雑誌がブームを煽って牽引したという点もあるが、スパイスの無い所にカレーは湧かない(火のないところに煙は立たない)。その種火は日本への移民たちの歴史であり、スパイスやハーブに熱狂した人々の手弁当の記録であり、それに乗っかり日本でのスパイスの栽培に手を上げた農家さんたちの勇気の狼煙だった。

短期的なブームが繰り返され、ファンの裾野が広がり、その一部は熱狂化し新たな文化を作り上げ、新たな裾野が形成されている。エスニック料理ブーム、タイメシブーム、スープカレー。そして今なら大阪の出汁カレー?

ブームを繰り返しながら、日本人に様々な料理が紹介され、消費され、一部は忘れられ、一部は定番化し、家庭料理に組み込まれ、日本人のDNAに定着していく。

100年前は、赤ちゃん並みに辛いものが苦手だった日本人が、いまじゃこんなに多彩なスパイス、ハーブにかこまれ、複雑な味を楽しんでいる。いい時代に生まれた。

おなじみの名前がどんどんでてくるので、関係者の皆様もちょっと楽しめます。以前お話を聞いたケララの風Ⅱの沼尻さんとか。ナイルさんも出てきた。初代のナイルさんは怖かったんだって。へー、意外。

さて、ナイルレストランに行こう。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。