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毎日読書#5 『死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』(ドニー・アイカー)

少年時代、北海道の札幌に住んでいた。北国は気候が極端なので、生活も極端な気候にあわせて工夫満点となる。

今でも北海道の気候由来のニュースなどがあると、その生活環境の厳しさ、異質さ、それに対応する道民の特殊な生活様式が面白おかしく伝えられる。

そんな北海道での生活エピソードは沢山あるけど、あまり信じていただけない話の一つに、壁から灯油が出る話がある。

住んでいたマンションでは壁から灯油が出た。

出たと言っても、灯油がジワジワ滲み出る訳ではなく、壁に灯油の出るコンセントがある。

そのコンセントにストーブのホースを突っ込むと、灯油が供給される仕組みだ。壁にはストーブの煙突用の穴もあった。本当だよ。

それを聞いたある友人は「テレビや電子レンジも灯油で動いたの?」と聞いてきた。そんな訳ないよね。

灯油の話でもうひとつ。一般家庭の玄関先には灯油のタンクが設置されている。多分今でもされている。一軒家に置くものだと500リットル位は入ると思う。冬になると、灯油屋が各家を回ってタンクに灯油を補充する。各家は、その灯油で暖房を燃やし暖を取る。本当だよ。

前述の友人は、貯水タンク的なものを想像したのか「蛇口からも灯油が出るの?」と聞いてきた。そんな訳ないよね。

何の話をしたいのかというと、こういう、エスニックな話を面白おかしく楽しめる人には、この『死に山』はおすすめだよということを言いたかった。

内容は、ディアトロフ峠事件を取材し、真相を求めた記録だ(「ディアトロフ峠事件」でググちゃうと、怖い画像がたくさん出てくるので、やめておきましょう)。

本の内容はアマゾンの説明を読むとだいたいわかるのでそちらで。(大変申し訳ございません)

結論のつけかたは正直微妙だなという感じだけど、そこに至るまでの話は、事件を紐解いていく推理小説的な面白さがあってスリリングだ。事実は小説よりも奇なりを地でゆく。

そして、事件がこんなに奇妙で凄いのに、それ以上に興味をそそられる事がある、それは、本の内容が僕らの知らないソ連時代のロシア民族の記録になっている点だ。

事件の当事者たちの当時の記憶、筆者が丹念に調べた当時の記録や、それを裏付ける当時の関係者への取材記録。これらは、ソ連の外部に紹介されてこなかっただろう、当時の生活の様子や風俗等を知ることが出来る資料になっている。

50年以上前の共産圏に住む大学生の恋バナとか、労働者達の様子とか、極地に住む他民族の話とか、なかなか知る機会の無いことが出てきて興味深い。

事件自体は悲惨だし、最後はあらかた死んじゃって気の毒なんだけどね。

読んでみてください。おすすめです。

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