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ギフテッドからギフテッド教育@UConn。

コネチカット大学(以下UConn)の修士プログラムに入ってすぐのオリエンテーションで「ギフテッド教育に携わっている者ではなくて、ギフテッド・チャイルドを育てている者です」と自己紹介をしたら、レンズーリ教授から「ギフテッド・チャイルドではなくて、gifted behavior(才能行動)を(exhibit)見せている子だと言ってほしいんだな」という洗礼を即座に受けてしまいました。

そのときから私のなかで "ギフテッド" という概念がこんがらがってしまい、理解に苦しんで苦しんで、しばらく混沌とすることになります。

ギフテッドについて研究するとき、教育学側からと心理学側からではアプローチがまず違い、又、目指すゴールも違うのだ、ということをUConnで勉強しはじめて初めて痛いほど思い知らさられました。それまでの私は、ギフテッドをソーシャル&エモーショナルに支援するアメリカの団体SENG(Supporting Emotional Needs of the Gifted)などの英文献、要は心理学的アプローチからでしか独学しておらず、ギフテッド=優秀児なり才能児、というアメリカでの一般認識がそこまでなかったのです。

「クラスのみんなと うまくやれない」「授業中ぼーっとしている」などと問題行動が幼少期から見られた息子がギフテッドかもしれない(から特別なサポートが必要なんです)とインターナショナルスクールで訴えた当時、欧米人の教師や保護者の皆さんに見事に引かれたことに、UConnに進学してようやく合点がいきました。厄介で勘違いした面倒な母親だと思われたのではないかと思います。

アメリカでギフテッド認定を受けたのはインターナショナルスクールで微妙に引かれてしまったあとですが、6年前の当時は、ギフテッド=G wordなどと言われ、とくに保護者間では暗黙の了解的に禁句であることを理解できていませんでした。故に息子がギフテッドだ(から支援してほしい)と訴えれば訴えるほど親子で孤立していったわけです。

蛇足ながら「うちの子は学力優秀で学校から表彰されました」と言う保護者は結構いますが、「うちの子はギフテッドです」はアメリカの多くの普通校では引かれると思います。「うちの子はギフテッドプログラムに所属している」はギリギリOKかもしれません。

紆余曲折あって(苦笑)今があるわけですが

とんでもなく雑に説明すると、教育学ではギフテッドの高いポテンシャル=才能を伸ばすことを、心理学ではギフテッドの強烈かつ繊細で非同期な発達を支援することを、それぞれの目的として研究されているように思います。

とはいっても研究対象もしくは(ギフテッド教育を提供する)目的の対象は「人」という複雑な個体ですから、それぞれの研究分野の境界線は曖昧で、重なる部分も多くあります。

ちなみにUConnでは、ギフテッド教育の研究は、教育学のなかの教育心理という分野に分類されています。

ギフテッドにまつわる研究に関しては各大学院によって分類のしかたが若干異なるようで、私が見た範囲では、教育学のなかの特別教育のなかにあったり、心理学のなかの臨床心理で研究者が個別にギフテッドを研究していたり……と、なんとも不明確な印象でした。(故に進学先に物凄く悩んだ)

いずれにしても今の段階で私が感じているのは、生徒個人が才能行動を見せていようが見せてなかろうが、ギフテッドネスがアチーブメントというかたちであらわれていようがなかろうが、要は世間一般的に才能を開花させていようがなかろうが、ギフテッドとdefineされる子達は心理学的に(脳科学的に?)存在するだろう、ということです。

ただ、ギフテッド判定をする専門家も不在で、ギフテッド教育も確立されていない日本では、ギフテッドか否かで悩んでいるあいだに我が子が浮きこぼれたり落ちこぼれたりしたままどんどん成長していってしまって、埒があきません。

故に "すべての子のためのギフテッド教育" として定評のあるSEMとは一体どういうものなのか?という強い興味が私のなかで湧いたのでした。

レンズーリ教授らが提唱するSEMは、すべての子になんらかの才能があるという理念のもと、研究やテストを重ね、開発、改良されてきました。(注:すべての子がギフテッドであるとはレンズーリ教授も一言も言われてません。)

ギフテッドであろうとなかろうと、個人それぞれに合わせて才能を伸ばすというカリキュラム・モデルは、すべての子が恩恵を受けられる才能教育、ギフテッド教育で、ギフテッドだとidentify(判別)された子達だけが受けられるギフテッド教育が主流だった当時のアメリカではじつに画期的でした。

心理学側から考察されたギフテッドネスについては、UConnの修士プログラムではカバーされていないため、こちらでシェアする機会もなかなかないかもしれませんが、SEMほかUConnで学んでいる諸々を、課題の隙間時間に紹介していけたら幸いです。

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