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才能伸長教育SEM@homeの記事について。

梅雨入りしたようで、早速ジメジメしますね。

私はひき続きコロナに気をつけながら、自宅にひきこもり、大学院の未完の課題にヒーヒー言ったり圧倒されてフリーズしたりしております。

そんななか、子育ち研究家でライターの長岡真意子さんに、「家庭で実践できるギフテッド教育」ということで、SEMについて先日インタビューしていただきました。こちらでもお知らせしたいと思います。


SEMやら全校拡充モデルやら拡充やら才能伸長やら、なんだか聞き慣れない言葉がごちゃごちゃ出てきて混乱する、と思われている方も多いでしょう。ですので今日はここで少し補足してみようと思います。

SEMにおける「好き」という才能

ギフテッド教育の方法には 元来 大きく分けて
・早修教育(アクセラレーション, acceleration)
・拡充教育(エンリッチメント, enrichment)
・個別化/個性化教育(ディファレンシエーション, differentiation)
と 3種あります。

学校によってこの3つを組み合わせたり、学年飛び級や科目別飛び級などの早修や、プルアウト方式やアフタースクールプログラムなどの拡充(探究学習)を、それぞれ単発で行ったりしています。SEMは、カテゴリーとしては拡充に属しますが、じつは早修、拡充、個性化を効果的に組み合わせたカリキュラム・モデルです。

私がSEMについて話すときに使う「才能伸長教育」は、英語でいうところのtalent developmentで、ギフテッド教育/才能教育(gifted education)とは綿密にいうと若干違います。ギフテッド教育は、物凄く雑に言いますと、一部の優秀な子たちやギフテッド認定された子達の才能を開花するための教育と一般的に認知されています。

そのイメージを払拭する意図があったのかはわかりませんが、SEMは、一部の層に行うギフテッド教育というよりは、もっと窓口を広くした、2eを含む、より多様でより多くの子達の「好き」や才能を伸ばしていくタレント(才能)デベロップメント(伸長)とUConnでは好まれて表現されています。関西大学の松村愓隆先生が「才能伸長教育」と訳されたのは、レンズーリ先生の意図を可能な限りくみとられての訳語だと思いました。

もちろん「ギフテッド教育」も才能を伸長する教育プログラミングですが、やはり選定基準はselectiveであり、inclusiveを目指しているわけではとくにないので、そこもSEMとは大きく違うところだと思います。

記事のなかでもお話しましたが、SEMでいう伸長すべき「才能」、もしくは伸長したい「才能」は、前提として好きであることが絶対条件です。得意で、誰から見ても明らかに高い能力がその分野であることがわかっていても、生徒本人がその活動を楽しめないのであれば、(もちろん話し合いは重ねますが、それでも本人が追究したいほど好きでないのであれば)、その活動は、Type 3 エンリッチメントという最も高いレベルで探究する拡充プロジェクトの対象から外すことになります。いくら得意であっても、本人が好きでなければ、プロ意識を持って最後までやり抜く気持ちが保てない、とSEMでは考えるからです。

実際に1年かけて Type 3 エンリッチメントを息子と家庭で実践してみたところ、これは「好き」という強い気持ちがなければ親子にとって拷問になるであろうと確信しました。言い換えれば、今はとくに得意でなくても、「好き」という強い気持ちさえあれば、「好き」が伸びて「才能」と言われるものになるのだな、と実感したわけです。(少し専門的にいうと、レンズーリ先生の言われるところの「才能行動が明らかになる」とはこのことか、と納得したのでした。)

SEMは「好きこそものの上手なれ」ともいえるレンズーリ先生の3Esという概念がベースとなっています。(3Esの詳しい説明はここでは省略します。)プロ意識を持って徹底的に遂行する、苦しくて投げ出したくなることがあってもプロのようにコミットしてやり抜くには、「好き」がなければ達成できません。故にSEMでは生徒個人の「好き」や興味関心ごとをまず明らかにして、研究に裏づけられた方法で才能伸長/拡充を行っていくのです。最終的に「好き」を「自分のもの」にまで高めること、自分の学びに対してオーナーシップを得ることで、達成感はもちろん、自信や自己効力感を生徒は得ることができます。

「好き」から「自分のもの」へ

息子の話を少しします。

息子は昔から好きな物事に没頭する性格でしたが、今思い返してみると、私たち親も息子の情熱の火をかなり焚きつけてきたことに気がつきました。知らない間に自己流SEM(この段階では Type 1 と Type 2)を行ってきたわけです。(Type 1 は「好き」探索、Type 2 はスキル磨き。)

以下は、息子の主な興味関心ごとと、私たちが息子に+α で投入してきた学びの機会を時系列でリストにしたものです。赤字は、息子が受け入れなかったものや、投入のタイミングが息子の意欲のピーク時とズレてしまった(故に受け入れられなかった)ものです。

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このリストを見てもわかるように、私たちは昔から(基本は)息子の情熱の火をさらに燃やすために同じ熱量で息子と遊び学びつつ、機会をみながら「いろいろな世界を見せる」目的でSEMでいうところの Type 1 を投入していました。しかし 4 の 7~8歳以降は、息子の興味関心の方向性がかなりかたまってきたため、親として投入するものは「好き」のスキルを磨いたり知識を深める Type 2 がほとんどとなっています。(Type 1, Type 2 に関しての詳細は、上の長岡さんの記事を参照ください。)

多くの親御さんもされているように、私も息子が生まれてから自己流SEMを家庭で行ってきたのですが、花を咲かせたもの、やり切ったもの、「これは自分のものにした」という体験が何一つないことが気になっていました。「好き」を情熱に発展させることはできても、Type 2 のスキル磨きを投入しても、息子はそれを「自分のもの」にする前に勝手に自己完結して、勝手に終わらせてしまうのです。自分である程度までマスターしたら、チャレンジを感じられなくなって、熱が冷めてしまう。そして新たな興味に移っていってしまう。それの繰り返しでした。まさに器用貧乏です。

そうこうしているうちに思春期になり、息子は「好き」を失っていきました。何かに夢中になって没頭しているときは楽しくても、ふと我に返って「これをやり続けても意味がない」「何にもならない」と空虚な気持ちになり、意欲を削がれ、好奇心をどんどんどんどん失っていったのです。

「好き」なだけでは(この子は)もうダメなのだ、と思いました。「好き」で自己満足する時期が終わったのだと見ていて思ったのです。「好き」を仲間と共有したり、さらなる物やアイデアを共に試し失敗を繰り返し創り出していったり、メンターについてスキル以上のものを経験して得たり、そういう段階に来ているんだと思いました。だからこそホームスクール以外のオプションを、ここ2~3年、家族で模索し続けてきたわけですが、同時に、息子のこの虚無な状態をなんとか打破できないか、「好き」を一つ上の段階に(ホームスクールでも)持っていけないか、と試行錯誤していました。

そんなとき、偶然にもUConnで学び始めたSEMに、ふと希望を感じたのです。SEMは学校に導入するカリキュラム・モデルですが、その柔軟さから家庭でも難なく応用できるだろうことはわかっていました。ただ、SEMを成功させるために譲れない点が幾つかあり、そこが引っかかっていました。中途半端にSEMが行われると、生徒はその自由度からダラダラになり、せっかくのプロジェクトも、タスクだけがやたらと多い面倒な自由研究のようになってしまうからです。

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2 と 3 は家庭で行う分には問題なく、1 のテキストは(熟読してないけど)手元にあるし、4 が一番不安でしたが、私もまたプロ意識を持って(SEMの Type 3 エンリッチメントを)実践すれば、息子も、学校で行われる本物のSEMと同じレベルの成功体験が得られるかもしれない、と思い、決行することにしました。

記事でも紹介しましたが、私自身がまず家庭で応用しやすいように、SEM(正確にはSEMのコアの部分であるETM: Enrichment Triad Model)のガイドラインをやさしく噛み砕いた「6ステップ」というのを作りました。そのステップを踏みつつ『SEM@home』を実践していったわけです。

結果、好奇心と元気を失っていた本人が、まず「楽しい」という気持ちを取り戻し、やり甲斐を感じ、いまだかつてない達成感を得て、プロジェクトを終えた頃にはモチベーションもさらに上がり、その「好き」を将来の可能性の一つとして捉えるようになっていました。スキルとしてはまだまだ未熟ですが、学びが初めて「自分のもの」になったのです。

プロ意識を持って徹底的にやる、というのはじつは結構大変です。いくら好きなことでも、そのすべての体験やプロセスが好きという人は滅多にいません。独学だと、やはり「好き」なことのなかの特に好きなことを優先で学びがちになってしまいます。でもプロ意識を持って、要はプロになりきって、プロと同じようにやり始めると、プロはそれで生計を立てているわけですから、好きなことだけやってはいられないことに生徒も気づき始めます。それで嫌になってしまう生徒も多いことから、Type 3 エンリッチメントというプロジェクトは、すべての生徒には勧めないのです。

わが子の「好き」や情熱、得意を伸ばすことは素晴らしく楽しく、有意義です。だからこそ、知的欲求が満たされた時点で満足し、本人のなかで自己完結してしまう前に、もう一つ上に行けるレンズーリ先生らのSEMを、今回「家庭で実践できるギフテッド教育」として記事にしていただけたことを心から嬉しく思っています。

プロ意識を持ち、できればメンターをつけ、プロと同じような発表の場を設けることで、本物の(オーセンティックな)学習体験が家庭でも可能になります。「この学びは自分のものだ」というオーナーシップを実感したとき、自己満足/自己完結の一つ上に行けて、学びが次へと繋がっていくのです。息子は、自分の学びを大学の専攻やその先のキャリアに何かしら絡めていこう、と考えるようになりました。

最後の確認事項

長くなってしまいましたが、私がSEMのガイドラインを独自に噛み砕いて編み出した「6ステップ」は、レンズーリ先生らUConnの研究チームが打ち出したものではないこと、しかし私の実践課題としてA評価はいただいていること(つまり家庭で実践するにあたってはお墨付き)を、こちらで明確にしておきたいと思います。

そして、今回インタビュー記事が公開されるにあたり、学校のカリキュラム・モデルであるSEMは、柔軟で創造的な学びであることから、「家庭で行うにも適していますよ」「『SEM@home』はありですよ」とレンズーリ先生&リース先生ご夫妻から直接承諾をいただいたことも記しておきたいと思います。

最後に、これは非常に重要ですが、SEMはウツや不安感、焦燥感などの症状を軽減なり解消する治療法では決してありません。お子さんの調子が優れないときは、医師やメンタルヘルスの専門家に相談なさってくださいね。心身健康であることが何よりも一番大事です。

SEMに興味を持って熱心にインタビューしてくださった長岡真意子さん、素敵な記事にしてくださってありがとうございました。又、記事をブログやSNSで紹介してくださったあーちゃんママさん、ギフテッド応援隊のスタッフさん、ありがとうございました。



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