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特徴の理解と適切な支援の必要性。

コネチカット大学(以下 UConn)の修士プログラムでオファーされている『ギフテッドのソーシャル&エモーショナルに関するコース』で学んだこと、改めて気づいたことをメモしておきます。

尚、このコースで使用された教科書はこちら(↓)です。
”Understanding the Social and Emotional Lives of Gifted Students” by Thomas P. Hébert, Ph.D.


結論

ギフテッドのソーシャル&エモーショナルの特徴を理解し、その(ギフテッド個人それぞれ違うであろう)ニーズを適切にサポートすることが、ギフテッドの教育者には求められます。


ギフテッドの8つの特徴


以下の8項目は、コースで使用された教科書 ”Understanding the Social and Emotional Lives of Gifted Students” にリストアップされていたギフテッドの特徴です。著者の Dr. Hébert が、ギフテッドやギフテッド教育の研究者のリサーチ文献を調査して まとめたものだと書かれています。

このリストのなかに、心理学側からのアプローチでは頻繁に目にする非同期発達(asynchronous development)が入っておらず、衝撃的ではありました。が、ギフテッドとは言っても千差万別で、すべてにおいて比較的均等に発達していく子達がいるのも事実です。

非同期発達については National Association for Gifted Children(NAGC)のペアレンツのための Parent Tip Sheet のなかでも説明されています。蛇足ながら2eの子達は、二重に特別という特性により、凸凹感がより顕著に見られるでしょう。

以下が Dr. Hébert の調査結果によるギフテッドの8つの特徴です。

・Perfectionism(完璧主義)素晴らしいパフォーマンスの原動力
・Internal Motivation / Inner Locus of Control(内発的動機 / 内部要因思考)
・Emotional Sensitivity, Intensity & Depth(過敏性、強烈な感性、深さ)
・Empathy(共感性)
・Advanced Levels of Moral Maturity with Consistency between Values and Actions(高いモラル意識&善悪の基準)
・Strong Need for Self-Actualization(自己実現欲求)自分らしく生きたい!
・Highly Developed Sense of Humor(高度なユーモア)
・Resilience(レジリエンス)逆境力、しなやかな強さ、困難から立ち上がる力


注目点


すべてのギフテッドに上記すべての特徴が見られるわけではなく、又、これらの特徴があるからこそギフテッドは「生きにくい」「社会に順応しにくい」というわけではないことがNAGCの調査結果として報告されました。

この結果は「ギフテッドは生きにくい」「ギフテッドは学校や社会に順応しにくい」という心理学的見解を否定されたようで、個人的にショックでありました。


詳細


ギフテッドの子たちの親や家族、学校の教師らは、上記のギフテッドの特徴を実際(日々)目にし、困難さも体感し(続け)ています。アメリカではギフテッドを心理的にサポートする団体も多く(例えば SENG や Gifted Development Center など)、ギフテッドの特徴と、その適切な支援の重要性の理解を深めるために、積極的に活動しています。

興味深いことに、同じくギフテッドを心理学面から研究する学者のなかには、”ギフテッドだからユニークな性質、特徴を合わせ持っているのではなく、ギフテッドが生まれ育つ文化的背景がギフテッド個人に影響を与えるが故にギフテッドがギフテッドであること(=ギフテッドネス/例えば上記の特徴など)を強く体感してしまうのだ” と解釈する者もいます。

つまり、そのユニークな特徴は “ギフテッドの資質” ではなく “純粋に個人の資質” で、その資質を際立たせてしまったり、ときには生きにくくしてしまうのは、周りの文化なり社会、環境だ、と考えているわけです。

NAGC のメンバーでもある教育者、心理学者、研究者が共同で行なった2002年の調査では、ギフテッドがユニークなソーシャル&エモーショナルな性質や特徴を持っているか否かを結論づけるに十分なエビデンス/証拠はない、と報告されました。(下記の英文テキストを参照)

逆にギフテッドは、周囲の理解や適切なサポートさえ得られれば、備え持つ資質で自ら逆境を乗り越え、能力をフルに開花させる強さがある、と結論づけられています。

"A comprehensive review of research was conducted by a task force of educators, psychologists, and researchers from National Association for Gifted Children (NAGC; Neihart, Reis, Robinson, & Moon, 2002). This report revealed a limited research base on which to draw conclusions about whether gifted students have unique social and emotional characteristics and traits. The NAGC task force concluded that there was no evidence that gifted young people were more vulnerable or flawed in their social adjustment. Rather, they noted that many gifted young people have assets that, when supported, many actually augment their ability to overcome adversities and utilize their talents to achieve personal fulfillment. The task force members called for educators to respect the unique and varied characteristics related to giftedness seen in young people."(Hébert, p. 54)


改めて結論


ギフテッドの子達を実際に育てたり教育したりしている我々は、前述した両論を考慮しつつ、とにもかくも個人を見て、その子が健やかに成長できるよう配慮すべきだと思いました。

又、アカデミック・ニーズに合わせて環境を整えるだけではウェルビーイングを保てない子達、才能を伸ばせない子達も実際にいることから、表面上の困り感だけでなく、その由来なり原因を究明し、それに合った適切な支援や対応を行うことが何よりも大事だと思いました。

例えば ギフテッド、ADHD、双極性障害は、その多弁や注意欠陥、多動性などの特徴が類似していますが、学習環境を整えるだけで “困り感” がおさまるのは おそらくギフテッドの子だけでしょう。(ギフテッドかつ知的障害以外のチャレンジを持つ者は2eです。ギフテッド+発達障害だけが2eではありません。例えば鬱や双極性障害、身体障害のあるギフテッドも2eと見做されます。)

必要のない支援や介入(ときには治療)も、じつは必要であるのに受けられない支援(=放置)も、どちらも その子個人の健やかな成長にはマイナスです。その子自身に適切な支援、介入、ときには治療の有無を見極める判断力、思考力が、親や教師を含む支援側には強く求められていると思います。


Reference
Hébert, T. P. (2010). Understanding the Social and Emotional Lives of Gifted Students. Waco, TX: Prufrock Press. ISBN-13: 978-1-59363-502-2

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