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SEM・全校拡充モデルの基礎の基礎。

全校拡充モデル(Schoolwide Enrichment Model 以下 SEM)とはコネチカット大学(以下UConn)のレンズーリ教授らが開発したカリキュラム・モデルです。

レンズーリ教授らは数十年に渡るリサーチとテストを重ね、当初はギフテッド認定された生徒のみが対象だった拡充プログラムを、すべての生徒が公立校のクラスルームで受けられるよう発展させました。

SEMは "学びに対する Enjoyment(楽しみ)が Engagement(没頭)へと繋がり、さらに強力な Enthusiasm(熱中)へと発展していくという3Esの概念" (Renzulli & Reis, 2014)を基盤にしています。この3Esがうまく機能していると、生徒の学習力はより高まり、より良い成績や結果をおさめることが調査報告で明らかにされています。

SEM(正確にはTriad Model)は、Type 1、Type 2、Type 3という3つのタイプのエンリッチメントから成り立っています。

Type 1エンリッチメントは、すべての生徒にありとあらゆる物事を見せる、体験させる、体感させる拡充学習です。美術館や博物館、工場見学などの社会見学、本やドキュメンタリー映画、ゲストスピーカーを招いてのディスカッションなどがType 1のアクティビティに含まれます。

Type 2エンリッチメントもすべての生徒を対象にしており、創造的問題解決能力や批判的思考力、理論的思考力などなど、さらには効果的なリサーチの仕方やインタビューの仕方、プレゼンの作り方など、実践的かつ具体的なスキルを、少人数のグループで課題を共に探究しながら学んでいきます。

Type 3エンリッチメントは、すでに各学校で選抜されたタレントプール(いわゆるギフテッドプログラム)に所属する生徒のための徹底したプロジェクトで、プロ意識を持って "real problem(本物の問い)" を探究していく拡充学習です。それぞれのテーマや課題をやり抜く強い意思と意欲(task commitment)が問われ、タレントプールの子達でも辞退する自由があると同時に、タレントプールに属していない生徒でも、このタスク・コミットメントが認められた場合、受けることができます。

SEMは、アメリカのみならず世界からも注目されています。例えば中東や南米、中国やアジア諸国など、各国の研究者が国を代表してUConnへと派遣されています。レンズーリ教授らが(各国に招待され)出向くことも多々あります。(最近は控えていらっしゃるそうですが。お元気でもやはり80代ですので… ^^; )

インクルーシブ教育が盛んに叫ばれるアメリカでも、すべてのインクルーシブ教育=SEMというわけではありません。又、SEMはどのカリキュラムにもインプリメントできる柔軟なモデルですが、やはりファシリテーターであるSEM専門の教師が不在であると(とくにType 3の)学習効果がフルに発揮できないことが報告されています。

故にUConnでは、ギフテッド教師、地域のギフテッド・コーディネーター、もしくはギフテッド教育に関心のある一般教師を主な対象に、Confratuteという1週間のカンファレンス兼ワークショップ&交流会を毎夏開催し、子ども達の才能を効果的に伸ばせるSEM教師の育成に力を入れています。

可能な限り多くの子ども達にエンリッチメント教育を受ける機会を与え、それぞれの才能を最大限に伸ばし、より多くのクリエイティブな人材を育てることがSEMのゴールです。

Reference
Renzulli, J. S. & Reis, S. M. (2014). The Schoolwide Enrichment Model (3rd ed.). Waco, TX: Prufrock Press. ISBN-13: 978-1-61821-164-4

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6月3日の記事『ギフテッドとギフテッド教育。』が note編集部のお気に入り記事に、そして「おすすめ」にも掲載され、びっくりしました。始めたばかりで、まだ手探りで書いている最中ですのに、ありがとうございました。。

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