ホストパロ/真田×鹿嶋

(※嘔吐描写注意)

 新宿歌舞伎町、区役所通り沿いにあるビルの2階。〝SAMOSS〟と言えばこの街ではそこそこ有名なホストクラブだ。在籍するホストのレベルが高く、その分売上げ目標もエグい数値に設定されている。在籍ホストは全員正社員雇用、保険完備で福利厚生も手厚いが、どうして労基に見逃されているかは分からない。
「色々とうまいことやらせてもらってるからねー」
 と、オーナーの宇月翔は言うが、あまり深く突っ込まないように努めている。
 俺はひとまずこの店で売上げを立てなければいけないのだ。
 このホストクラブのNo.1として。
 真田亮司――源氏名〝亮司〟は、SAMOSSが出来て以来ナンバー落ちしたことのないトップ中のトップだった。今ではNO.1として店を牽引するようになり、時期店長とも名高い。
 が、店長として裏方に回れない理由が真田にはあった。それは、No.2の鹿嶋幸に起因する。
 この男、真田が監視していないとすぐに寝る。そして吐く。

 鹿嶋は、理想の顔を追い求める真田にとって、まさに究極の顔面の持ち主だった。この男と出会ったのは五年前、まだアパレル勤めだった頃。同僚として紹介されたその日、真田の頭のてっぺんに雷が落ちた。
 兎にも角にも、その日から真田の人生は鹿嶋の顔面の質を保ち・守ることを中心に設計されるようになった。鹿嶋も鹿嶋で、真田のそういった献身を一切気にしない稀有な存在だった為、二人は流れるように同棲を始め、今に至る。(なんで? というツッコミは受け付けていない)
 なんならキスもするしセックスもする。真田は鹿嶋の顔じゃないと興奮しないし、鹿嶋は男に殴られないと興奮しないドMだし。利害は別に一致していないが、二人してホストとして引き抜かれた結果、女性は全員客に見えているのも大きい。

 今日も今日とてテッペン超えて朝まで元気に営業中。
 締日が近いこともあって客入りは普段の倍以上で、真田も一つのテーブルに長く着くことは出来ないでいた。
 鹿嶋もNo.2故に指名は延々と続き、店中にシャンパンコールが響き渡る。鹿嶋のシャンコは世界一テンションが低いと名高く、そのダウナーさが最高だと大好評――なのも謎だ。
 ホストにあるまじきサービス精神のなさが逆に燃えるらしいが、でもそれだけでナンバー張れるほど世の中は甘くない。鹿嶋は鹿嶋なりに客の話に耳を傾けるし、誰にも影響されない考え方に救われている客は大勢居るだろう。
 だが。鹿嶋のスイッチは突然切れる。それはもう唐突に、俺以外誰にも予測出来ないのだ。
 それは許容量以上の酒を入れたときに起こる。アルコールに体が浸ってしまうと、鹿嶋の場合、強烈な眠気に襲われるのだ。その一瞬手前を見計らって、「ちょっと一瞬こっち来い」と手招きするのが真田の役目だった。
 このまま放っておけばそのうちテーブルに吐くことは、過去に経験済みだった。

 従業員用のトイレにふらつく鹿嶋を突っ込んで、個室へと一緒に入る。直前に大量の水を飲ませたので、本当は腹を蹴れば一発なのだけれど。そんな乱暴なことは出来るはずもない。
 はじめこそ、便器に顔を向けさせ「吐け」と言うだけだったが、鹿嶋は極端に吐くのが下手な男だった。口が小さく喉も細いせいだろう。そもそも吐くこと自体億劫なようで、今では真田の介抱なしには吐くことが出来なくなっている。
 まあ、俺に全てを委ねるこの感じは、悪くないけど。
 鹿嶋を便器の前に膝立ちさせ、背後から顎を持ち上げて中指と人差し指を突っ込む。その時点で鹿嶋の鳩尾あたりがびくついて、そのタイミングで更に奥へと指を突っ込んだ。口蓋扁桃に指先が触れそうになったところで、一気に引き抜いた。
「う゛ぇっ、おええっ」
 ごぽごぽと水音が響いて、便器へ吐瀉物が落ちる。一度スイッチを押せばあとは背中をさすってやればいいだけで楽だった。
 この間、メインフロアにはNO.1も2も居ないのかと思うと少し笑える。そして、他の従業員も、客達も、真田が鹿嶋を介抱していることを知っているのだ。それもまた一つの名物。
 狂った客は「鹿嶋くんが吐いたもの集めてちょうだい♡」なんて言ってくるけれど(それも複数)、鹿嶋の髪の毛一本だってやりたくない俺は、「俺のじゃダメ?」なんて言って笑うのだった。いや俺だって他人にゲロ渡すなんて絶対ごめんだけども。
 うぇ、げほ、げほ、はあ、はあ。
 苦しそうにしている鹿嶋は、それを気持ちよがってる。だから〝あえて〟酒量をコントロールせずにいるのだ。お前本当はめちゃくちゃ強いくせに。
 こいつはそういう変態で、その変態に付き合っている俺もまあ、人のことは言えない。
 今日帰ったらセックスしてぇなと思いながら、口を濯がせるための水を取りにフロアへ戻った。

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Twitterリクエストよりサルベージ。
ホストパロ大好きなので、またしっかり書きたいですね〜。

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