うまくやりたくて【スペシャルゲスト回:阪田仁乃助】

うまくやりたくて。
褒められたくて。

そんなきっかけだったような気がします。
僕は大学1年の最初の方から演劇部に所属しました。
しばらく同期は誰もいませんでした。僕以外みんな先輩。楽しくやれるのかなという不安で押しつぶされそうでした。

初めて演劇部の「全体練」なるものに参加したとき、ドアを開ける瞬間、不安と緊張で押しつぶされそうでした。
僕はその日、開始時間よりも数分遅れて参加することになりました。練習部屋に行き着くまでも1人不安でしたが、なんとか部屋の前まで足を運ぶことができました。
ドアを開けて顔を少しだけ覗かせました。するとみんなが一⻫にこちらをみました。一瞬、静かになりました。誰かの「わー!」という声が聞こえました。僕はそれにドキッとして、何も言えませんでした。しだいに温かく出迎えるような言葉が聞こえてきました。 僕は緊張で閉じた喉から、聞こえないくらいの声で「うす...」と精一杯出しました。ゆっくりと部屋に入っていき、慌てて居場所を探しました。隅っこが空いてそうなので、そこへ歩いて行きました。それまでの一挙手一投足が、みんなに見られているような気がして、顔から火が出るほどの思いでした。生ぬるい空気を懸命に吸っていました。
僕はこの空間で、この集まりの中で、うまくやらなきゃいけないのだなと思いました。

そんな僕が皆さんと仲良くなれたのは 3月の定期公演の時でした。その公演で僕は役者に立候補しました。無事に役者として選ばれて、自動的に皆さんと交流する機会が増えてい きました。そのタイミングで今回演出の福田さんと共演し、演劇部の先輩方とも打ち解けて仲良くなることができ、それはたくさん可愛がってもらいました。
その時は、福田さんからいただいた「どんどんいけ」という助言を頼りに、できるだけ遠慮を捨てて先輩方と接していました。どんなことを言えば笑ってくれるのか、好きになってくれるのか、必死に考えながら、言葉、振る舞いを選んでいました。うまくやれたような気がします。

思えば、これまでの人生も同じような心の働きがあったように思います。
テストで良い点をとる。
習い事で賞状を獲得する。
部活の大会で1位になる。
うまくやりたくて。
褒められたくて。

クラスのみんなが笑えるようなことを言う。
好きなあの子にも、好きでもない人たちにも振り向いてもらえるようにカッコつける。
机の上の落書きも、廊下の溝に溜まった埃も、テストの名前の欄も、全て綺麗にする。
うまくやりたくて。
褒められたくて。

授業中、手を上げる所作を何度も練習する。
街でかっこよく歩けるように、家の鏡で動作を何度も確認する。
遠くの人に向かって声を張る時、不細工にならないように、声質、姿勢、手の位置、体の重心、全てにこだわる。
うまくやりたくて。
褒められたくて。

申し遅れました。今回、スムっとさんの公演にお邪魔させていただく、SPECIAL GUESTの 阪田仁乃助(さかたじんのすけ) と申します。
20 歳、また1番年下ですが、スムっとの皆さんがとても親しみやすいので、緊張することなく過ごせております。感謝です。

本番まであと1ヶ月ほど。それまでの稽古、演出の福田さんとの会話、皆さんとの会話。これまで通りうまくやろうとするのでしょう。
ともかく、この縁に感謝しながら、楽しく頑張っていけたらなと思っております。

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