母のこと

わたしの母も、血液の癌だった。半年前に亡くなった。
病の発見から死まで、1年と2カ月。
体調不良からは1年6カ月。

母の不安や心配は聞いてきたけど、幡野さんの文章を読んで母の言葉を聞いているようだった。
「死ぬのは仕方ない。苦しいのはいや」
「安楽死したい」

母は、2月上旬の夜半、病室で一人でなくなった。
夕方「また明日来るからね」というと、「よろしくお願いします」とほほ笑んでいた。
それから6時間後のことだった。

お医者さんの話によると、死亡推定時刻の1時間ほど前の見回りでは異変はなかったそう。
病院に到着したとき、母はまだ暖かかった。
表情も、口をぽかんと開けていたほかは、別段苦しそうでもなかった。

病状の悪化のペースが速く、数日ごとに「5年ずつ老いているのではないか?」と思うほど、衰えていった母。

ずっとそばにいたけど、母の恐怖を、言葉をきちんと聞き取れていたとは思えない。
幡野さんの言葉は重たくもつらくもあるけど、母と対峙している気分になる。

初盆は、妹と甥っ子と、静かに母を迎えるつもりです。


京都生まれの京都育ちの京都在住。まんがを描く人。香道と茶道を勉強中。プロレスは中邑選手推し。