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アンドロイド転生180

都内某所の邸宅

エリカは敵を倒した事に喜びを感じていた。パートナー兼通訳として従事していた過去の違いに驚いた。私は進化した…!別の生き方を知った…!自分の新たな存在意義を見出して嬉しかった。

タケルがゴーサインを出した。屋敷内に忍び込む。廊下に無数の赤い線が見えた。エリカ達の瞳は赤外線を捉えた。一瞬にして計算し、身体が赤外線に触れないように前転、側転し前に進んだ。

屋敷内部のマップが立体になってエリカの内側に浮き上がる。予めインストールされたものだ。皆もそれぞれマップを見ている。足音も立てずに廊下を進み目的地の部屋の前に到着した。

ドアのロックを外す役割はチアキが担い、数秒で解除した。室内に侵入し目的の絵画を見つけた。世界的に有名な油絵の価値は驚く程だろう。屋敷の主人も盗まれた事を知って驚くだろう。

慎重に額から剥がして丁寧に丸め其々背中に背負っている筒に入れた。合計3本。次に金庫のロックを解除し中からダイヤモンド数十個を手に入れた。守備良く終えて4人は満足だった。

こんなに呆気なく手に入るものなのか?エリカは驚く思いだった。まだ塀を乗り越えてから30分も経っていない。廊下に出ると、白人の老人がライフル銃を構え立っていた。人間だ。

老人はワナワナと唇を震わせ顔を真っ赤にして怒りを顕にしている。後ろには中年の男女がいた。3人とも白人だった。親子かもしれない。
『おまえら…よくもやったな…!』

英語だ。老人は銃を構えると発砲した。4人は瞬時に散った。立て続けに発砲するが、壁を撃ち抜いただけで当たらない。タケルがバネのように跳ねて瞬時に老人の目の前に立つ。

彼の腕からあっという間に銃を奪い取って弾を抜くと投げ捨てた。老人は腰を抜かした。
「じーさん。銃刀法違反だぜ」
タケルが鼻で笑った。

「絵画のコレクションもダイヤも一体どんな悪どい事をして手に入れたんだよ?」
『おまえらアンドロイドのくせに何をやってる?今すぐ返せ。このクソマシンめ!』

エリカの口から英語が飛び出した。
『悪い事をして得た物を私達が奪って何が悪いの?それに、人間だから何なの?そんなに偉いの?アンドロイドだからって馬鹿にしないで』

老人は負けじとばかりに立ち上がって腕を振り回した。気概だけは充分だ。タケルが老人の額を軽く弾くと彼は目を見開きヘナヘナと座り込んだ。
「長生きしろよ。でも余生は改心しろよ」

タケルがニヤリと笑った。エリカが微笑んで通訳した。老人は暴言を吐き続けた。
「よし。行くぞ」
タケルは3人を振り返った。

エリカ達は頷き、邸宅を後にした。闇夜に紛れた彼らの姿に気付く者はいなかった。走りながらエリカが満面の笑みを浮かべた。
「タケル!私、楽しい…!」
タケルは満足そうに頷いた。

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