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ワシントン大学附属図書館訪問ほか

東北大学はシアトルのワシントン大学と連携プロジェクト(アカデミックオープンスペース:AOS)を行っており、2022年5月に第二期発足の調印式をオンラインで行いましたが、このたび記念キックオフイベントがオンサイトで行われ、ワシントン大学を再訪しました。

第1期のAOSは化学や材料科学分野での教員・学生の相互派遣が行われたのですが、第2期ではさらに、災害科学とダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)も柱の1つとなったために、私自身も参加。初日1月18日には、東北大学災害科学国際研究所の江川新一教授により「Human resilience in disaster science: Is it possible to leave no one behind?」と題する講演が行われ、改めて東日本大震災の経験をどのように防災・減災に活かすかということを再認識しました。

Suzzallo LibraryのSmith Roomにて講演を行う江川先生

会場となったのはワシントン大学の附属図書館Suzzallo Libraryの一室、Smith Roomというところでした。高い天井と美しいステンドグラスが印象的。

夕方は在シアトル日本国総領事公邸にてレセプション。稲垣総領事のスピーチ等から、シアトルは1930年代に氷川丸が訪れる港のある場所で、いわば、日本から見た米国の玄関口だったことを認識しました。確かに、横浜港からの直線的な距離で言えば、もっとも近いですね。

翌日19日には、Allen LibraryのPetersen RoomでUW-AOS Workshopが開催。改めて稲垣総領事他のWelcome Remarks頂いた後、最初のセッションがDEI関連でした。ワシントン大学のカウセ学長が6月の東北大学DEI推進宣言記念シンポジウムのためにご用意くださったビデオメッセージを皮切りに、両大学のダイバーシティ推進についての講演が行われました。

開会挨拶の稲垣総領事、Anita Ramasastry副学長、山口副学長、Ricky Hall副学長
UW-TU AOS WorkshopのWelcome RemarksからDEIセッションのスケジュール

東北大学YouTubeチャネルに公開しているカウセ学長のビデオメッセージはとても素晴らしいので、ぜひご視聴下さい。

私の講演は、日本で最初の女子大学生の誕生の地であることから始めて、東北大学のダイバーシティ推進の歴史と各種女性研究者支援の現状、これからのワシントン大学との連携についてお話しました。

ワシントン大学でDiversityというと、一番の中心はエスニシティになりますが、本学では学部レベルの留学生が2%未満、外国人教員は10%未満という現状からは、まずはジェンダーパリティ(公正性)の達成、次に学生の関心の高い性の多様性と思っています。つまり、東北大学のDEIの中では、Diversityのターゲットとして性の多様性、Equityはジェンダーパリティ、Inclusionは国際対応と捉えています。

司会をされたワシントン大学の佐々木教授、Science ADVANCEプログラム担当のSheryl Kaiser教授、Women CenterのSarah Ngyuen博士

さて、会場となったのは両日ともワシントン大学の中心となる附属図書館Suzzallo Allen Librariesの会議室でした。Suzzalloは同大学の元学長の名前で、建物は1926年に完成しました。ファザードの様式やステンドグラスから、米国の1920年代であることが容易に想像できます。さらに増築が何回か行われ、Allen Libraryの南北のwingsが加わったのですが、その名前は、マイクロソフトの共同創始者であるPaul Allenの父であり、図書館機構にも関わったKenneth S. Allenにちなみます。古い方のSuzzallo Libraryの建物は耐震対策が為されたたために、2001年のNisqually地震に耐えることができました。図書館は他にも、専門別に多数ありますが、なんといっても執行部の建物にも近いこの図書館がメインで、ワシントン大学の象徴的な建物として知られます。

セッションの後に、図書館ツアーに参加しました。職員の方がユーモアを交えて見どころを短時間でご紹介くださいました。蔵書数は約600万冊。現在は、図書館に来る学生は閲覧よりも勉強場所として利用することが多いようです。意外だったのは、開館時間は9:00-17:00と短いこと。米国では寮等、学生の住居でのWiFi完備などが日本と違うのかもしれません。

ニューヨーク公共図書館と似たシンメトリーな印象のSuzzallo Libraryのメインの閲覧室は、両側の壁にぎっしりと本が並べられた書架がある「QUIET」スペース。飲み物は、蓋が付いていれば持ち込み可能。
Suzzallo Libraryではこのような耐震対策が随所で為されています。
Allen Library側の入り口、右手にResearch Commonsがあります。
Allen Libraryの方はモダンなデザインでコモンズエリアはグループ学習等に用いられる。ただし、コロナ禍以降はどんどんオンラインでの活動が多くなって、利用者は減少傾向。
普通のエリアは「CHATTER」というモードで、オンライン会議での発言可能。写真は左から山口副学長、稲垣総領事、説明してくださった図書館職員の方(お名前を記録損ねました…)。
マイクフィルムが保管されているエリアの側の閲覧・学習スペースは「LOW HUM」で、オンライン授業・会議で繋いでも構わないけれど、発言は控えめに、というエリア。マイクロフィルムから各自がPCに取り込むことが可能となっているとのこと。
Suzzallo Libraryの正面ファザードを背にしてRed Squareという広場のさらに奥には、太平洋が望まれる。もともとこのエリアはシアトルで開催された万博の会場となっていたとのこと。
そして、Suzzallo Library正面入って右側にはStarbucksがあるのでした。お昼時は学生の長い列でできます。シアトルはスタバの聖地ですが、今回は本店を訪れる時間は無し。

今回、図書館の中の会議室を使わせていただきましたが、どちらもアートが多くて素晴らしいと思いました。

Allen LibraryのPetersen Roomのアートからピックアップ。
こちらのポスター関係も面白かったです。

今回は他に、University Marketing & Communications (UMAC)担当のJack Martin副学長、Diversity(とくにethnicity)担当のRicky Hall副学長、障害を持った高校生の高大連携プログラムを中心とするDO-ITのScott Bellman先生、神経倫理が専門のSara Goering先生のところにも訪問でき、種々の学びがありました。

UMACのJack Martin副学長とその直下のVictor Baltaさん(Interim Assistant Vice President for Communications and University Spokespersonという肩書)からは、大学ブランディングについて学びました。

とくにDO-ITのプログラムはすでに、数学者のSheryl E Burgstahler先生により30年前に始まったとのことで、日本の大学で遅れているところと思うので、取り入れていけると良いと思いました。

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