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『信長公記』は偽書か?

徳川家康の初手柄は「大高城兵粮入れ」であり、
徳川家康の初陣は「寺部城攻め」である。

※徳川家康の初陣:他の武将の「初陣」同様、寺部城を攻め落としたのではなく、城下に火を放っただけである。また、この初陣「寺部城攻め」は、初手柄「大高城兵粮入れ」とセットだという。

「天下の御意見番」こと大久保彦左衛門は、著書『三河物語』に、「大高城兵粮入れ」は永禄元年のことであり、その後、徳川家康は、岡崎城に戻り、改めて寺部城の城下に火を放ったと書いている。

「永禄元年戊午の年、御年十七歳尓(に)シテ、大高能(の)兵ラウ(ひょうろう)入ヲ請取セラレ給日(ひ)而(て)入させ給ふ。」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992777/63

江戸幕府お抱えの学者が集まって書いた江戸幕府の古式文書『徳川実紀』には、「大高城兵粮入れ」には諸説あるが、寺部城の城下に火を放ってから行ったと考えるのが合理的であると書いてある。

「『大高送粮』の事、異説、区々なり。その一説、尤も審なり。其の故は、信長、寺部、挙母(ころも)、広瀬の三城へ兵を込め置きて、今川より軍粮を大高城へ入ることあらんには、鷲津、丸根両城へ牒し合せて遮りとめんと設たり。烈祖、早くその機を察せられ、先(ま)ず、鷲津、丸根両城を捨て、寺部の城下を放火し、その城へせめかゝらん体(てい)を示し給へば、鷲津、丸根の両城は、寺部を救わむ用意する其のひまに、難なく軍粮をば大高城へ運送したまふといふ。此説、是なるがごとし。」

(【現代語訳】「神君大高城兵粮入れ」については諸説あるが、その1つが最も真実に近いと思われる。その理由は・・・織田信長は、寺部、挙母、広瀬の3城に兵を入れ、今川軍が兵粮を大高城へ入れようとした時は、この3城と鷲津、丸根の2城の連携で遮断しようとした。徳川家康は、早くからその事に気づき、最初に鷲津、丸根の2城を落として(戦って、兵を失って)兵粮を大高城に入れるのではなく、寺部の城下に火をつけ、寺部城を攻めるふりをして、鷲津、丸根の2城の城兵が寺部城へ救援に向かう準備をしている隙きに難なく兵粮を入れた(味方の兵を1人も失うこと無く、大高城へ兵粮を入れた)・・・とする説が、もっともらしいからである。)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/772965/21

 ──太田牛一『信長公記』では「神君大高城兵粮入れ」を「桶狭間の戦い」の前夜とする。

 なぜ、こんな見え透いた嘘をついたのであろうか?

 読者は「永禄元年にもやっているから、その経験を生かせと任された」と騙されるであろうが、危険な兵粮入れを徳川家康に深夜にやらせるとは・・・徳川家康に死んで欲しかったと思わざるを得ない。兵粮入れなど、次の日にみんなでやればいい話である。「半日遅れたら城兵が餓死する」なんてことはありえないから。

 小瀬甫庵『信長記』には間違いが多くあると指摘する大久保彦左衛門であるから、著書『三河物語』には史実しか書いていないと思うが、「桶狭間の戦い」の「大高城兵粮入れ」については、「今川軍が行い、今川義元は、そのまま大高城に泊まった」と書いている。(太田牛一は、徳川家康だけが大高城兵粮入れをしたことにするため、「今川義元は、攻められにくい平山城(丘城)・大高城ではなく、攻められやすい平城・沓掛城に泊まった」と変えた。沓掛城は、「桶狭間の戦い」後、織田軍が攻め、火矢を放つとすぐに落ちた城である。)

 嘘をつけばボロが出るもので、『信長公記』に、織田信長の言葉として、「あの武者、宵に兵粮つかひて、夜もすがら来なり、大高へ兵粮を入れ、鷲津、丸根にて手を砕き、辛労して、つかれたる武者なり。こなたは新手なり」と載せてしまった。『信長公記』によれば、兵粮入れした徳川家康隊は、大高城で休んでいて、「桶狭間の戦い」には参加していないのである。言い換えれば、「桶狭間の戦い」の今川軍は、昨夜、大高城への兵粮入れはしていない。沓掛城からやって来た元気な兵士であるから、生死をかけた大戦で織田信長は誤情報を掴まされていたことになるが、『三河物語』によれば、今川軍全員で大高城に兵粮を入れたのであるから、織田信長が言っていることは正しい。

 ──太田牛一は「桶狭間の戦い」に関して、なぜ嘘をついたのか?

その答えは、
「徳川家康への忖度」
「徳川家康は、大高城にいて、「桶狭間の戦い」に参加しなかったことにしたいため」
だとしか思えない。「桶狭間の戦い」でなぜ今川義元に織田信長が勝てたのか───その答えは、織田信長と徳川家康、そして、太田牛一が知ってる。
 戦後、徳川家康は、今川方のふりをしていたが、今川氏真にばれると、徳川家康は、織田信長と清洲同盟(尾三同盟)を組んで今川と対抗した。

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