マガジンのカバー画像

小説

14
運営しているクリエイター

記事一覧

彼の決意は壊せない -砕かれた【黄金比】-

彼の決意は壊せない -砕かれた【黄金比】-

 ――さあ、今日も『勉強』だ。
 グラバールで、かつて『天才』と呼ばれた蒸気機関技師、アルトゥ・シャオンは、工具を手に取った。

 青い空から暑い日差しが降り注ぐ。天気は快晴だった。
 朝、アルトゥは家を出て、アルフライラ郵便公社へと向かっていた。カバンのなかには《手紙》ではなく、彼自身が愛用する工具が入っている。普段は特務局員の一員として局内を出入りしているアルトゥだが、今日の目的は別にあった。

もっとみる

アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』にノベルを納品しました(『【代贈】ホワイトメッセージ-降り積もる真白な想い-』/『三太翁と六人の弟子』)

先日、アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『【代贈】ホワイトメッセージ-降り積もる真白な想い-』

千梨/ホワイトレター/(C)アルパカコネクト

子供たちにプレゼントを贈るという、クリスマスっぽいノベルです!
どういう展開にしようかな、と考えながら、色々楽しく書かせていただきました。
おまけノベルとして、『三太翁と六人の弟子』も納品いたしました

もっとみる
安らぎの場所 -小さな故郷-

安らぎの場所 -小さな故郷-

 大陸横断鉄道の列車から見える街並みの景色が、少しずつ東方系の色を帯びてきていた。
 ――帰ってきたな。
 ルーシン ウェイは故郷に近づくにつれ、顔の緊張がほぐれていくのを感じていた。普段は気づかないが、外の世界にいると、やはりどこか身体に力が入ってしまうものなのだということを、自覚させられた。
 アルフライラ北東区、イェンルー老街。その近くの小路にある、小さな商店。ここが、ルーシンの実家だった。

もっとみる

アルパカコネクトPBW『東京インソムニア』にノベルを納品しました(『ガラスの檻から連れ出して』/『ガラスのなかの心』)

先日、アルパカコネクトPBW『東京インソムニア』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『ガラスの檻から連れ出して』

千梨/東京インソムニア/(C)アルパカコネクト

いくつか描写したいシーンが思い浮かんだので、どれにしようか悩みながら執筆させていただきました。
おまけノベルとして、『ガラスのなかの心』も納品いたしました!

記憶の波、揺らす蒼海(わだつみ)

記憶の波、揺らす蒼海(わだつみ)

 常夏の都市、アルフライラ。なかでも「南のリゾート地」とも称される、南東区。ナーディルは、特務局員エージェントの訓練兼、配達部の手伝いで、この地区の海岸近くにある邸宅へと訪れていた。
「ありが、とう」
 《手紙》の受取人からサインを貰うと、まだ慣れない、たどたどしい公用語で、ナーディルはお礼の言葉を述べた。
 一通り配達が済んだ後、仕事の報告をするために分局へと戻ろうとしたが、ふと、出発前の上司の

もっとみる

アルパカコネクトPBW『東京インソムニア』にノベルを納品しました(『【ハロパ】重ねた心、思い出ひとつ』)

先日、アルパカコネクトPBW『東京インソムニア』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『【ハロパ】重ねた心、思い出ひとつ』

千梨/東京インソムニア/(C)アルパカコネクト

アルパカコネクトさまのワールド『東京インソムニア』にて、初依頼をいただきました!

6人合わせでの納品でした!  ハロウィン・パーティのお話。
中盤はドタバタ感やコメディチックな感じで。
キャラクターの仮装イラス

もっとみる

アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』にノベルを納品しました(『【ゴンドラ】芸術が結ぶ《縁》-中央区ゴンドラ遊覧-』/『交錯する想い -芸術祭開催に向けて-』)

先日、アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『【ゴンドラ】芸術が結ぶ《縁》-中央区ゴンドラ遊覧-』

千梨/ホワイトレター/(C)アルパカコネクト

今回はキャラクター四人分を描写したノベルになりました!
それぞれのキャラクターが上手く描けていたら幸いです。
ゴンドラは優雅で良いなと思います。自分も乗りたいです。
おまけノベルとして、『交錯する想い

もっとみる

アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』にノベルを納品しました(『青い鳥のスーベニア』/『青い鳥のダンケシェーン』)

先日、アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『青い鳥のスーベニア』

千梨/ホワイトレター/(C)アルパカコネクト

キャラクターのかわいらしさを上手く表現したい! と思って執筆してみました。ほのぼのとした日常を感じていただければ幸いです。
また、おまけノベルにて、本編の後日談『青い鳥のダンケシェーン』も公開されています! そちらも合わせてチェック

もっとみる
BARD――世界は囁く(前編)

BARD――世界は囁く(前編)

 それは今日のことか、昨日のことか、明日のことでありましょうか。
 とある小さな村に、バードという名の娘が暮らしておりました。
 バードは、風や木や虫たち、その他様々なものと話をすることができる娘でした。川の楽しそうな笑い声、土の優しい子守唄、星たちとの秘密の内緒話。他の村人たちが知らないことを、世界の神々の囁き声から知ることができました。
 時には神様たちの話を皆に伝えることによって、村人たちを

もっとみる
紅(くれない)に水くくる

紅(くれない)に水くくる

「はぁ……やっぱり綺麗だなあ」
 様々に色づくもみじと穏やかな川の流れを見て、私はため息をついた。秋の山の暖かい色は、こっちまで気分を上げさせてくれる。それは私の名前が、くれないの葉――つまり、漢字で「もみじ」と書いて「くれは」と読ませるように付けられたので、もみじそのものに親近感を得て育ったせいなのだろうか。
 昔から私はもみじが好きだった。夏に育った瑞々しい青い葉が、秋になると赤やオレンジ、黄

もっとみる
melting of snow ‐六花の伝承‐

melting of snow ‐六花の伝承‐

 ――息子よ、娘よ、そのまた子供たちよ、よくお聞き。今から雪の精霊についての物語を、話し始めるから。
◆8/21 YouTubeにてイメージソングを公開
◆10/22 BOOTHにて冊子版・DL版を頒布開始

BOOTHにて冊子版・DL版を頒布開始!BOOTHにて小説『melting of snow ‐六花の伝承‐』の冊子版・DL版を頒布開始しました。

特に冊子版は装丁にこだわって制作したので、

もっとみる
水中庭園

水中庭園

 水のなか 小さな小さな箱庭に
 透明少女は暮らしてた
 無色な壁 静かな世界に
 小さな少女は暮らしてた
 小さな少女 小さな世界を知っていた
 硝子の世界を知っていた でも
 外側のことは 何にも知らない
 だって 硝子の住人は
 世界の外のことなんて
 興味も何もないのです

 澄んだ流れ 穏やかな水
 少女の柔らか 触角の髪
 ふわり ふわり
 水の風が吹いている
 ふわり ふわり 撫でて

もっとみる
カシオペア

カシオペア

※前書き※
 この小説は、コラボ企画展 HAKOLIEN文×画「椅子のある部屋」(箱の中のユーフォリア様主催) に千梨が参加し、展示された作品の再掲載です。
 コラボイラストは、坂本みちよ様に描いていただきました。ありがとうございました。
 ファンタジー、シリアス、ほのぼのなイメージで描きました。5000字作品です。
 加筆版を収録したコピー本が存在しています。
※前書きおわり※

○本編○
 

もっとみる
かつて竜になりたかった少女が見た夢

かつて竜になりたかった少女が見た夢

※再掲載。8000字程度。

〈プロローグ〉
 お嬢さん、また来たのかね。人気のない山道を若い娘一人で行くのは危ないだろうに。一体何故ここへ来るのかい。

 ――この湖の景色が、あまりにも綺麗だったから。そしてもう一度、あなたに会いたいと思ったのです。

 ……ふむ。確かにここの景色は美しい。しかし、私に会いたいと思うのは、おかしな理由だね。人間にはよく嫌われているから。何せ見ての通り、私は

もっとみる