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セトリ通信(7) ‘Senri Trio’ Japan Tour 2019

‘Senri Trio’ Japan Tour 2019 : Brooklyn Parlor Hakata(5/13), Blue Note Nagoya(5/14), Brooklyn Parlor osaka(5/15), Blue Note Tokyo(5/17,18,19), Blue Note Hawaii(5/21)

まず2パターンのセトリを交互もしくは適宜組み合わせて行う予定だった。

A and B!!!

しかしAri, Mattとのリハを重ね、そのままリハスタから移動してトミジャズをAパターンのセトリでやり、これを成功させて、一気に盛り上がったのだが、僕は心で「直前にもうひと揉みしよう」と企てた。

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“Too young to be old”が若干1コーラスが長い。そしてこれはミッシェルルグラン追悼を込めて書いた曲なので若干、企画色が強い。せっかくのBrand Newだが、難解な曲なので敢えて落とそうと思い立つ。またの機会に。

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アメリカを回るステージで”Fried Green Tomato”がとっつきやすいこともあり前半に位置することが多かったので敢えてそれを外して後半に位置させていることが自分でウザく感じ始める。とっつきやすいのであれば素直に前半にやればいい。

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“Arigato”で始まるBなどは企画色が強すぎる。1月のコンサートの最後がこの曲だったから、なんてはっきり言って関係ない。せっかくのトリオの勢いをオープニングで出さないのはどうも違っている。

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“bikini”” Indoor Voices”などの新曲はまとめよう。『B&G』からの曲もまとめよう。トミジャズのあとそういうアイデアがふつふつと浮かんでいたので敢えてそれを纏めずに福岡直前まで引っ張った。最後の最後にメモ用紙の裏側に今回のセトリをスラスラ書いた。いっぺんでで「いける」と思った。それがこれ。

1 Tommy
mc
2 Fried Green Tomato
3 Akiuta
mc
4 Wallabee Shoes
5 Never See You
6 Rain
mc
7 bikini
8 Indoor Voices
mc
9 YOU
10 Uncle Senri
11 Orange Desert
mc
12 Garden Christmas
encore: Mischievous Mouse

まずTommy”でスリルいっぱいに始める。5拍子と4拍子が入れ替わり来る曲なので9拍子の感覚が続く曲。これをSenriの自由なルバート(テンポを決めずに弾くこと)のイントロで始める。カウントオフで一気に9拍子の世界へ。

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人の心はスリルで始まると緊張する。そのいい緊張感を今回は丁寧に運ぼうと思い立つ。まるでロックやポップのコンサートのように頭のmcでお客さんを巻き込もう。そしてそのエネルギーを借りて一気に”Friend Green Tomato”へ。そのまま僕のIDでもある”Akiuta”へ。

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“Tommy”から始まって”Friend Green”~ “Akiuta”は僕にとってチャレンジングなオープニングだった。ただ守ることは一つ。革新的なことなどやらずただただジャズの基本に忠実に演奏するを中心にそこからぶれずにやろうと決心した。

次のセクション、”Wallabee” “Never”” Rain”はポップ時代の曲をソロピアノジャズにアレンジしたものを更に今回はトリオにTransformさせてお披露目。なので蕾が花を咲かせるように楽しくのびのび演奏しようと思う。このセクションに限ってはARiもMattもソロがない。僕がメロディもソロも全部やる。

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次のセクションの”bikini””Indoor Voices”は新曲。1月のコンサートでも披露した曲だが、トリオになってより陰影が浮かび上がった。

このツアーの初日のサウンドチェックで初めて固まった”YOU”。これがこのツアーで最もハプニングした曲だ。6/8のフィーリングで一気に楽しいポップの要素もジャズの要素もごちゃ混ぜにてんこ盛りにどんどんヒートアップする。それがエンドでAriのソロでピークを迎える。

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“Orange”は真ん中のソロをMatt & Senriでユニゾることにした。この曲はロックぽいが非常にジャズの醍醐味が同時に味わえる。その一つがこのソロパートでのユニゾンだ。ありとあらゆるアイデアをつなぎ合わせたソロパートは細かい弾き方まで全部Matt と合わせて二人三脚で行った。

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この新しいジャズはお客様に受け入れられたと思う。3人で考えたエンディングも功を奏した。ひとりじゃないって素敵なことね、心からそう思った。

“Garden”に関してはスイングフィールの難しさだ。このトリオで過去最高のスイングを記録する中、ローレンの歌ったメロディの抑揚を伝えることの難しさを痛感した。

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ローレンもツアーの動向が気になるらしく何度かFBにコメントをくれた。僕も「うまく行ってるよ」と返事はしたけれども今度会った時に、いかに彼女のスイングフィール豊かな歌をピアノで再現するのが大変だったかをきちんと伝えようと思う。

記し忘れはないかな。とにかくセトリは直前まで諦めちゃダメだ。保険で作ったものを何度もreviseして更にショーの直前で完成形ができる。それもスリルでジャズっぽい。

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今回は箱が箱だけにジャズファンがたくさんいらしていた。もちろんポップファンも。この混合が会場の熱気を更に大きく倍増させていた。「ああ、格好悪い、ってどっかで聞いたことある」そういうドライなジャズファンが大きな拍手をくれる瞬間や、「大江千里のポップが好きだ」な人が音符の渦に巻き込まれて恍惚の表情を浮かべている瞬間を、心から感謝の気持ちで心に刻ませてもらった。

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音楽は楽しい。音楽に垣根はない。音楽が全てを乗り越える。

このセトリは今後を占う大きな意味を感じた。

文・写真 大江千里 Senri Oe, PND Records 2019

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