見出し画像

ブルックリン物語 #51 きみの友だち “You’ve Got A Friends”

N Yに生活しているとモノを回していくという発想が普通にある。不要になったモノを「誰か使うかな?」 と路上に置いておくと知らない間に必要な人の元に渡りなくなっている。もともとブルックリンは地元のモノを地元で回す発想のある地域だ。人から人へ。肥沃な土地はないが、ビルの屋上でタネを撒き野菜を作る。収穫物を地元の小売店に卸し、ブルックリンを愛する人々の胃袋に入る。この地産地消(サスティナビリティ)の発想が「リサイクル」の世界でも活きているように思う。

「これ、いいんじゃない?」
「持って帰れるかな?」

そんな会話をしている人によく出くわす。何を隠そう僕もそんな一人で、家にある家具の多くはこうして道端で偶然出会って手に入れたものである。

画像1

バスルームにある黄金色の猫足テーブルは思いの外重宝している。シャンプーやソープを置く台に、トイレタイムの読書に、お香を置くスペースに、マルチ活用である。元々、夜中にゴミとして出されていたけれど程度がいいのはすぐにわかった。何人かが目をつけていて誰が最初に手をつけるかという緊張感の中おそるおそる僕が先に手を伸ばした。すると、その中にいた一人の中近東系の男が、

「いける。ペンキで別の色を塗ってもいいし、形が非常に優れている。持っていくべし」

と太鼓判を押した。振り返ると別の白人女性が、

「悪くないわね。持って帰るべきだと思うわ」

と首を縦に振った。

また偶然通りかかる黒人のおじいちゃんが、

「裏に住んでるマイクがペンキを塗るのがむちゃくちゃ得意で綺麗に塗ってくれるはずだよ」ってそのマイクって一体誰?
「僕はラッキーな男だね!」

笑いながらテーブルを小脇に抱える僕。その場はさながら、捨てられていた猫足テーブルをお題に集まる「大喜利」だった。みんな、ネタが欲しくてうずうずしているのだ。何かしら「気の利いたセリフ」を「誰か」に喋りたがっている。ブルックリンの路上には下町な空気感がいつも漂っている。

画像2

ここから先は

3,517字 / 10画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?