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Spin the wheel! The rest will come.

僕がよく使う英語のフレーズにこのような言い回しがある。とにかくやってみると、あとはついてくるから。まあ、そんな感じなんだろうか。なんかこの指の上で軽々と観覧車でも回すような絵柄を思い浮かべると口に発しながら、ニコッとして元気になってる自分がいる不思議なフレーズだ。

昨夜はSpin Magazineの毎日夜9時にやってるLullaby Sessionsに参加した。いつやるのがいいだろうってLAのPRのジェニと話をしてて、僕は今週の金曜日(つまり昨夜)がいいって提案してたのだけれど、実際にSpinから「めちゃくちゃエキサイトしているから。金曜日で行くわよ」って言われたのが直前木曜日だという。ただでさえインスタがどうなってるのかよくわかってない「写真を撮られると魂が抜かれる昭和世代」の還暦おじさんは、「Spin編集部から直接彼らのインスタへのアクセス暗証番号をSenriに直前に知らせるらしいわよ。だからそれを受け取ったら勝手に中に入って9時になると始めて、演奏が終わったら勝手にオフにしてね。じゃあ、グッドラック!」

ジェ
ジェ
ジェニファー。


ポツネン。

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ジェニは自分で決めてきた仕事が盛り上がって上機嫌だ。若い彼女が当たり前にできるインスタライブも僕からすると「魂が抜かれる」以上のプレッシャーだ。なんせ去年ずっとやっていた「Hmmm Channel」も自分でアップできずにジェニが代わりに時間になると毎回セットアップしてくれていたくらいだったからだ。

ああ、どうしよう。

「何かあったらいつでも言ってね」そう介護口調で言われるとひねくれ者の僕は一人でやってやるわいと思ってしまう。僕より少し若いPRのチーフであるロリはまさにSpin世代なので「でかしたわよ!ジェニファー!やったわね!Spinよ、あのSpinなのよ!」と大騒ぎだった。ジェニは冷静に「もしSenriに興味あったら」なんて言い回しで別に断ったって良いわよ的クールビューティーコクボでこっちに聞いてきたけれど僕は「絶対にやるやるやるやる」と即決だった。

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今それぞれのSNSに僕のライブが終わった後の現在のSpinのインスタスクショを載せているが、リビングカラーや他の錚々たるアーテイストとともに僕のライブカバー写真が掲載されている。しかし、、、携帯を横にしてライブを行ったので、、、、僕だけの軸が、横を向いている。

は〜、なんでこうなるの←欽ちゃん

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さて昨夜の顛末だけれどやはり事件は起こった。割と早い段階で仕上がってリハも終わってリラックスして待ってた僕は暗証番号をもらったらすぐに入れれるようにPCを近くに置いて携帯がもし見れない時にはそっちを使用しようと「万全の体勢」で控えていた。せんちゃんそういうとこあるよねえ^_^

「30分前にもう一度Teaserを出してね。煽るのよ」とジェニ。

はい!とせんちゃん。

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孫に言われたとおり「Teaser」も31分前に出した。あとは本番を待つだけだ。やはりちょっとだけ胸騒ぎがしたので、ジェニにメールをしたら「もうあなたの演奏が待ちきれない。最高のサクセスが今夜は待っているのよ」と興奮したメールが返ってくる。還暦おじさんはそれを言われるとやたら

逆に、、、なんか、、、、

不安になってきた。

果たして「魂を抜かれる」僕が何事もなく入れるのだろうか。

ああ、ダメダメ、

変なこと考えるな!

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Spinからは15分前までは入らないでくれと言われていた。そうか、ということは万が一何かが起こった時は僕は一人で本番までの15分の間に対応しないと本番は

「しーーーーーーーーーーん」

試験放送中です、状態で。

何も起こらずにララバイララバイおやすみよ、ギザギザハートの子守歌!になっちゃうわけだ。

ダメーーーーーーーそれだけは絶対

ダメーーーーーーーー。

せっかくのチャンスをもらったのに。
っていうか、それはもうプロ失格!

人間やめますカッ!の次元。

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とにかくなんとかジェニのアテンションを惹きつけておいて若い子が普通にできると思っていることに不安を持っているSenriをアピールしておこう。

相談しよう、そうしよう。

1分1分の時間がものすごく重くのしかかる。呪い。基、ノロい。やっと15分前になった。

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冷静に自分のインスタを切ってからSpin のインスタのユーザーネームとパスワードを記入してクリック。で、、慎重にログインする。

すると、しばらくPCがじっと考えているような時間があったのちに、、、、真っ赤な文字が「警告」として出てきた。

「不法侵入者がいます。普段アクセスしない地域からの不法アクセスがありましたのでそれをただいま阻止しています」

ががががががが、レデイーがが。

やっぱりほらっ。起こったっつーーーに。

赤い衝撃
大映ドラマ
山口百恵

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すぐにスクショを撮影したものをジェニに送る。Spin編集者の携帯へコード番号の催促メールをインスタから送るのでそれをジェニを通して僕に教えてくれと淡々と告げる。僕の携帯のスクリーンではジェニの既読は「Delivered」なので読んではいるはずだが返事がない。この沈黙の電子世界の緊張感。待ってる時間がただただ刻々と過ぎていくので

不安は募るが


もう悪くなることを考えてもしょうがないので、

ひたすら待つ!

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するとジェニから1324567とコード番号が届く。僕は日本語(関西弁)で(英語じゃダメ)「イチさんにいよんゴッろくなな」と3回声に出して唱えて五感でそれを覚えてからすぐにインスタへ行って書き込む。で、ログインアゲイン。さあ、南無三。

文明開化の鐘はなるか?

どうして電子の世界はこうして人を試すようなことを行うのだろうか?5−6秒、インスタは考える人だった。

僕は張り裂けそうな胸に手のひらを当てながら祈った。

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そうすると、パッと神様が降りてきたような明るい画面になって、Spinのインスタが開く。僕は無事に中へ入ることができたのだ。ジェニにそのゆえをスクショで伝えると返事もない。ため息をつく彼女の顔が浮かぶ。

そうそう、前にGlobal CitizenのLive at Homeをやった時もインスタライブだった。インスタのアイコンをクリックする。ここら辺にライブへ向かう入口があったはずだから。気は焦っているので普段目に見えてることが脳に信号を送らない。アイコンの「Spin」の文字をクリックして自分の顔が映し出されるとすでにもうパニック状態に陥る。

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なんとか落ち着いてインスタライブの文字を発見しなければ。時間はまだ10分ほどある。ジェニだっていざという時はいてくれるわけだし、さっきのやりとりでSpin編集者とも2−3分で繋がることが証明済だ。慌てることなど何もないじゃないか。万が一若干遅れてスタートしたってそんなの大したことないじゃないか、

Who cares?だよ。

やっと気持ちが落ち着いてきた僕はREEL, LIVEなどの文字を画面下に見つけることに成功した。よかった。


そうだよ、このLIVEを押すとインスタライブっちゅう奴が始まるのだよ、声に出して自分に言い聞かせる。だから今嬉しくて押してもいいけれど、そうするともうすでに集まってくれてる人にこの額に汗びっしょりの還暦おじさんの不安そうな顔がアップで映し出されてしまうのだよ。

気をつけて、ボス。

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桜たまこの「オッジさーん」が浮かんでしまうが口ずさむどころじゃないさわぎだ。携帯をセットしてピアノを弾く姿をもう一度確認する。だがこの時

オーマイが! 画面がクライ!表情が見えない。

昼間にリハをやった時はお日様の灯りがあったのだ。部屋は電気をつけているとはいえ夜なのだ。顔の表情が全く見えない。また事件だよ。どうする?

貧すりゃ鈍する。

僕はリビングに置いてある花を照らす手元灯ライトを見つけてそれを抱えてきて携帯の横に素早くセットする。大家のジョンがつけてくれてた窓の仮のインド綿カーテンが照明にやたら絡みつく。

インドメーン

やりまメーン

絡むな絡むな

なんとか顔が見えるようにまで光の位置を決めてからみんなから見えるアップライトの上のPCにテイデイベアを置いて新作"Letter to N.Y."を持たせてみる。


携帯の画面で確認すると小さすぎで見えないがまあいい。もう1分前なのだから、ああだこうだやってる場合じゃないだろう。余裕を持って待機してて
結局は

この有様だもの。ったく。


ああ、魂は抜かれてないか、感電してないか、今間違えてボタンを押してないか、リアルに生きてるか、

頑張れ。

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時計が9時になる。と同時にLIVEボタンをクリックするとのっぺりそこには還暦おじさんが不安そうにひょこっと顔をのぞかせた。世界に繋がった瞬間だ。


しかもSpinで映る顔はすっぴんで。っとかダジャレ言うとる場合かおっさん。はよやらんかい!

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僕は粛々と自分の世界へ入ってゆく。いきなり決まったから今日は世界初のアルバムからの演奏になってしまった。もう何も考えずにひたすら弾く。

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その様子はこちらへ。

instagram.com/spinmag/

文・写真 大江千里 Senri Oe, PND Records 2021

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