ハッシュタグ

蜜の味 #ハッシュタグ


#ハッシュタグ

なんでもハッシュタグをつけちゃえばいい。

その精神が気に入らない。

このまえの引っ越しの時も結局そうして

なにも断捨離ことができずにいた。

あれもこれもそれもどれも大事なものは

なんだって分け合っちゃえばいい。

繋がって共有しちゃえばいい。

その精神の骨子が気に入らない。


梅の花がネックレスのように垂れた道の

影と日向をかき分けながらそっとスキップ

した午後の澱みにきみはなんて吐いた?

「春はひとりになりたい」

つぶやきの先で落っことした指輪の答えは

すでにむくんだその指には

合わなくなっていたのか?だからそのときの

ぼくからのアンサーは「は〜?」だ。


灰色を刷毛で塗ったような空

蕾が肩をすくめ様子見している枝

剥がれた文字の分だけ

見慣れて別の意味を持ってしまった看板

石ころがはさまったズックの裏を

歩道の淵にこすりながら

どこまでぼくたちはじゃれあえばいいのか

考えあぐねていた。


最初の桜は土手沿いの一番高い場所から

手が届く。

ほんのりの白に頬紅を刺したようなピンクが

あれよあれよというまにそれこそ

ハッシュタグをつけたように

景色のフレームの外へと手を伸ばす。


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