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NEW DAYS #3 「新しい日々は始まってる?」

新しい日々は始まっている?

4月に入ってアパートの住人たちはセカンドハウスからN Yへ戻ったようで、あちこちから音が聞こえる。何より「暖房」がコンスタントに入る。アパートを見上げると窓にポツポツ灯が灯る。さっき朝のうちにゴミを出そうと短パンにTシャツで廊下に出るとマルチーズがニコニコ挨拶しにきた。後ろから会計士マーレーの奥さんが真冬の重装備で散歩からご帰還だった。

「おはよう」
「久しぶり」

ぶっきらぼうな顔にピンクのニット帽。手袋にマフラー。あれ、今日は寒かったか。案の定真冬の気温に舞い戻っていた。爆音でマイアミサウンドマシーンを窓全開でかける中古のボルボが横にとまる。ニッと笑って体を揺らすと、運転していたヒスパニックの男の子は爆音をさらに上げた。

部屋に戻るとぴがあちこち練り歩いていた。最終的な立ち位置は冷蔵庫の前、顔を上げてじっと何やら見つめている。もう朝ごはんやネイチャーコーリング(うんこ、しっこ)もすでに終えている。目薬、耳藥、歯磨きもだ。散々ご褒美をパパからせしめているにも関わらず、部屋へ戻ってきたパパの足音を聞き、先回りでこのポーズが何か報酬ももらえるベストな体勢だと確信しているのだからすごい。なんせ尻尾の先っぽまでが「ぴ」とその名の由来のごとく神経が行き渡り、張り詰めるエネルギーがこっちまでピリピリ伝わってくるようだ。

十割そば

ほんの少しだけご褒美をあげてテーブルで仕事をしているとぴが移動し始めた。廊下の先にあるベッドルームへ。パパは静かに先回りして壁に追突せぬよう両足で挟み込みクッションを作ってやる。そうすると微かに風が伝わるらしく、さささと歩いて難なく左折し、ベッドの前まで到着した。両脇をサッと抱えると自らその体をジャンプさせてベッドのいちばんお気に入りの場所へと着地した。

 ぴ戦闘機、ベッドに着陸

タックスリターンが終わりいくつか驚いたことがあった。昨年11月から毎月入れるべき小切手を忘れていたのだ。11月から現在まで。年明けから始まった週一の短期決戦コラム(半年)に無我夢中だったのだなとため息をつく。記憶を辿ればまるでつい先月くらいに小切手をATMで入れたような、あれは確か、え、もしや、2021年?会計士がコロナに罹ったのが12月だから、え? もしやトミジャズやクリスマスライブの準備に入った頃にはもう小切手振り込みという行為自体をすっかり忘れていたのか?

大丈夫か? 光陰矢の如し。もう5月の一歩手前まで来ているぞ。

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