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これから世界で起こること

「Senriさん、夫のところへ子供達を預けようと歩いてたら襲われちゃいましたよ。私マスクして長い黒髪で二人子供連れで、なんだか『いかにも無防備なアジア人』って感じすぎたのかもしれないんですけど、怖かった」

クイーンズ地区のFlushing は中国人、韓国人が多い。教育のレベルが高いということもあり、彼女はそこに住み子育てをしている。しかし流石に「中国人が多い場所での子供の保育はこれ以上感染の観点から危険」だろうとブルックリンの元夫の元へ子供達を預けるため3時間半かけててくてく歩いている途中だったらしい。

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NYはロックダウンが続きEssential Store (生活に必要なものを売る店)以外全てが閉まり、我々は家の中に24時間いる。カフェやバーやレストランが閉まると人出もバッタリで街はゴーストタウン。地下鉄やバスは動いているにはいるが基本的に一般人はまず乗らない。一輌に2人か3人、医療関係者や小売店で働く人などだけだ。ガラガラの地下鉄やバスが一日中動いている様はある種異様なものがある。

「でも明るい方向へ必死に逃げて無事に切り抜けました。今は本当に危ない時期ですね。Senriさんも気をつけてください」

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ヘイトクレイム。僕も何度か経験したことがある。理由はシンプルで僕たちがアジア人だからだ。彼らからすれば中国人か日本人かの区別などつかないから見つけたらこのクソ中国人めと言って叩くのだ。

だから男の僕でさえ外に出るときは明るい道しか通らない。今は怒りや鬱憤が溜まってる時期なので、人はささなことでキレやすくなっている。ただでさえ、2分置きくらいに救急車のサイレンが鳴りまくっていれば、普通に人の心は萎える。15分に1人、コロナで亡くなっている。しかも公になっている病院で亡くなった数以外にもこのゴーストタウンに見える窓の灯りの中で、人知れずにコロナだと診断もされないままに亡くなる人が大勢いるのだ。

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パンデミックになってわかったことは、我々が普段複雑怪奇に感じている「生きる」と言うことは実は命に関わるゲームになると、とてもシンプルで平等だということだ。原因のタネがあって途中の運があって結果がある。コロナは資産家もホームレスも公平にかかる。そしてかかれば運が悪いと死ぬ。ある意味ラスベガスのルーレットのように大負けするのだ。どんなに感染しても重症化しないように気をつけていようが、狭い住居に3世帯住むとか、いい医者が周りにいないとか、栄養が足りないとか、そう言うコマがいくつか揃った時点で、もう勝負は見えている。それはあまりにドライで、感情の入る隙間がないほど冷酷なゲームだ。

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僕も持病に気管支炎があり年齢も今年60歳で高齢者の入り口にいる。かかれば危ない。だから気をつけているのだが、数日前、肺が万力で締め付けられるほど痛くて熱が出た。喉はナイフが刺さったような激しい痛みでやたら咳が出た。平熱が34度台の僕が36、9度にまで上がったので、僕世界じゃ高熱部類でかなりしんどかった。栄養をとってユーカリを塗ったマスクをして胸にメンソレータムを塗りただただ眠った。

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「それはコロナですよ。かかって治ったんじゃない?  免疫があったんですね。じゃあ、今は抗体があるね。あたしと一緒だ!」

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