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洗足オンラインスクール・オブ・ミュージック

新型コロナウイルスの影響で私たちの生活はさまざまな変化が生じています。音楽教育においてもコンピューター技術を要する機会が増え、レッスンでもリモートによる指導がしばしば求められています。本学においては昨年度から入学試験にオンライン入試を導入し、受験生は自宅などでも試験を受けられるようになりました。
洗足学園音楽大学は時代を先取りし、2007年から「洗足オンラインスクール・オブ・ミュージック」を開校しています。オンラインの受験システムを短期間で制作することが実現できたのも、オンラインスクールを開校して以来蓄積した技術力によるものが大きいでしょう。そこで今回は、このオンラインスクールが生まれた経緯、内容、展望などをお話ししたいと思います。

https://www.senzoku-online.jp/index.html


洗足オンラインスクール・オブ・ミュージックとは

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洗足オンラインスクール・オブ・ミュージックは、洗足学園音楽大学が学内・学外の音楽学習者に向けて無料で発信する、オンライン上で学習できる音楽学習システムです。

当スクールは、より多くの人たちの音楽学習の機会を身近なものにするという理念のもと、<2007年>に発足しました。発足当初は楽典、聴音、そして映像の再生などが主でしたが、次々と新しいコンテンツを開発してきました。

<2010年>
ロールプレイングゲームの感覚で音楽力を鍛えられる聴音RPG【失われた音問村】をリリース。

<2012年>
リズム打ちソフト【りずむん】をリリース。

<2015年>
和声課題を自動で採点してくれる和声学学修支援システム【和声の祭典】をリリース。

<2020年>
対位法学修支援システム【地球の旋律線】をリリース。

これらのコンテンツは本格的に音楽を学習できると同時に、無理なく継続的に学習してもらえるよう“楽しさ”も重視しています。具体的には、ゲーム感覚を取り入れることで向上心に火をつけ、また、親しみやすいキャラクターを取り入れるなどして、子どもから大人まで誰でも学習しやすい環境を整える工夫もしています。

では具体的にコンテンツを紹介していきます。


聴音RPG【失われた音問村】

ロールプレイングゲーム(以下、RPG)とは『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』に代表されるような、ストーリーを通して主人公が成長し、より巨大な敵に立ち向かっていくようなゲームです。たいていのRPGでは、成長していくのはゲームの中の主人公ですが、【失われた音問村】において成長するのは、プレイヤー自身です。

このRPGのモンスター(音霊)とのバトルでは“音を聴く力”が問われます。

・1つの音を聴いて音の高さ当てて戦う“タノン”

RPGタノン



・2つの音を聴いてその音程を答えて戦う“インターバルーン”

RPGインターバルーン


・和音を聴いてその種類を答えて戦う“ワオーン”

RPGワオーン


これらをはじめ、 様々な種類の音霊が主人公の前に立ちはだかります。終盤に行くにつれ徐々に強くなっていく敵を倒しつつ、気付けば自分自身の“音を聴く力”が向上しています。
近年では、このゲームでRTA※を行う勇者も現れました。

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聴音RPG『失われた音問村』戦闘シーン

※ RTAとは、リアルタイムアタック(Real Time Attack)の略で、実時間でいかに早くゲームをクリアできるかを競うプレイスタイル。


【和声の祭典】&【地球の旋律線】

音楽大学で学ぶ作曲理論には“和声法”と“対位法”の二大作曲理論があります。主に作曲を学ぶ学生やクラシック音楽を中心に学ぶ音大生が学習しますが、それらには学習段階で様々な規則があります。課題を実施することで、それらの規則に合致しているかを自動で評価してアドバイスを表示するシステムを、当スクールで実現しました。
それが、和声学学修支援システム【和声の祭典】。これは“和声法”の課題を解き、自動採点をしてくれます。学習者が作った和声進行を分析し、禁則なども細かく指摘します。ちなみに、“和声学”とは、和声法を学ぶ科目の名称です。

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【和声の祭典】課題実施画面


2020年の4月には、対位法学修支援システム【地球の旋律線】をリリースしました。このシステムは好評で、TwitterなどのSNSでも話題になりました。
課題(定旋律)は当スクールが作成したものや既存のテキストで用いられている定旋律から選びますが、その解答の可能性は無限大です。自分で作った旋律の禁則を指摘し、旋律の良し悪しも対位法の観点から評価します。

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学習者が解いた対位法課題を自動で評価


ゲーム感覚でリズム感を鍛える【りずむん】

最後に、リリースしてから人気の衰えないリズム打ちソフト【りずむん】をご紹介します。【りずむん】は楽譜に提示されたリズムをPCのキーボードで叩き、その正確さで高得点を狙うコンテンツです。「片手モード」や「両手モード」の2つのモードが選べ、難易度も「10級」から「覇王」まで、幅広く課題が用意されています。楽譜が読めない人にも、「図形モード」で図形を表示させることで、リズムゲーム「○○の達人」のような感覚で学習することも可能です。

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このコンテンツは幅広い年代に人気で、本学の学園祭でオンラインスクール・ブースを出展した際には、何時間も【りずむん】に挑戦し続ける小学生が多くいました。一度ハマると癖になり、楽しみながらさらにリズム感も身につくコンテンツです。


洗足オンラインスクールの今後の展望

今回の記事では、当スクールのごく一部のコンテンツをご紹介しました。他にも、楽典や音楽理論、ソルフェージュ、音楽史などのそれぞれの学習内容に応じた様々なコンテンツを用意しています。これらのコンテンツは、コロナ禍においてさらに利用率が上がり、緊急事態宣言のさなかでは、全国の小中高等学校でも自宅学習に取り入れられました。

音楽学習の機会を身近にすることを理念として立ち上げられた洗足オンラインスクール。
あれから14年、現在では音楽教育においてコンピューター技術を駆使することは、もはや必須の時代となりました。

今後も音楽学習に有用なコンテンツをさらに充実させていきたいと考えています。


Text by 清水 昭夫(洗足オンラインスクール・校長)


▶▶洗足学園音楽大学:https://www.senzoku.ac.jp/music/

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