表紙

瀬尾順のプロット公開

昨日、先輩シナリオライターの保住圭(https://twitter.com/hozumik)さんとツイッターでプロットの話題になった。
別に隠すものでもないので、いっそnoteで皆さんに公開しよう……と思ったが、よくよく考えたら仕事関連のモノはさすがに載せられない。
なので、ゲームシナリオではないのだが、僕が以前書いた同人小説「君からの距離、君までの距離」のプロットを代わりとして載せよう。
細かい内容についての解説はかなりの文章を割かないといけないので、ここでは割愛するが、ある程度脚本術というものを学んでいる方が見れば、超ベーシックな作りだとお分かりになるだろう。

■君からの距離、君までの距離 プロット

[テーマ]
・内緒です

[あらすじ]

[Sプロット 60]
・孤独な少女が同じような境遇の少年と出会い
 心を通わせるが、薄荷と決闘においこまれ
 殺してしまい唯一の友達を失ってしまう
 悲劇的な話。

[Mプロット 200]
・架空の世界、ゲームとしての戦争を楽しむ一部の富裕層とゲームの駒として扱われる多くの貧民層に分かれる世界。父親に娼館に売られた少女遊は生きる希望を失っていた。自暴自棄になっていた遊は自ら志願し戦争に参加する。
・遊はただ淡々と日々を暮らす中、同じような境遇の少年薄荷と出会う。遊は自分でも気づかないうちに薄荷に心を開いていく。しかしある日、二人は富裕層の命令により戦わなくてはいけなくなる。
・薄荷は遊に勝ちを譲って死ぬ。遊はようやく薄荷が自分の友達だったと理解し泣いた。


[予定容量]
・四百字詰め原稿用紙350枚

[プロット]

■プロローグ
(1)
・真夜中、暗い繁華街の裏道。娼館から逃げてきた少女、遊は二人の男達に追われていた。
 初めての客となる男達から逃れようと石畳の道を走っている遊。捕まり乱暴されそうになるが何とか男達の手から逃れる遊はある男の家に逃げ込む。
・ギーのうらぶれた部屋の中。ギーと呼ばれる元兵隊だった男は遊をかくまう。怪我の手当てを受けて遊はギーに言う。
 「十三になったから客をとれって言われたの」
 「じゃあ、ギーが私の最初の客になって」
 そういう遊を馬鹿なことを言うなと言うギー。
 いっそ殴るか、犯かしてくれれば良かったのに。そうすればまだ救われたのに。
 遊は最後にギーに告げた。
 「私、戦争に行くね」

■ACT1

(2)
・空色の電車に乗って町へ、窓から見える景色、一年経過したことの描写。
・無人駅、鉄柱にくくられたクッキーの空き缶に切符をほうり捨てた。駅前は田舎町。ジェット機の音。
 白いワンピースと麦わら帽子の薄荷と出会う。学校から遊を迎えに来たという。オンボロのライトバン。
・車の中で会話。クラシックを聞く。会話(世界観、雰囲気)戦闘勃発。
・市街戦。何とか生き延びる二人。手馴れた感じの遊と圧倒的に強い薄荷。
 「生きてる?」
 「なんとか」
 「よかったね」
 「どうかな」
 ※武器等の専門用語で雰囲気を出すこと。
(3)
・世界観の説明、学校の描写→世界観の描写(シャッフルとか)
(4)
・学校。遊の新しい日常生活。授業、昼食、戦闘演習、寮での生活。
 世界に絶望している遊は機械のように淡々と日々を暮らす。
 薄荷をふくめた全てと距離を置こうとする。
・寮、風呂場で薄荷の身体を見てしまう遊。実は男の子。
・教室、クラスメートにイジメられても笑ってる薄荷。担任は日和見。
 (ここは軽めの描写? 男のくせに女の格好してるからぐらいの見方でぼかす)
・夕方の帰り道、薄荷はやたらなついてきて友達になろうといってくる。<CQ>
 遊はそれを拒否する。「そういうの作らないことにしてる」
(5)
・学校を休んだ薄荷の見舞いに行く遊。トウモロコシ畑。
 薄荷は定期的にれ療養所へ通っている。
・療養所でも性的虐待を受けてるっぽい薄荷。それでも薄荷はにこにこ笑っていた。
・療養所の先生から薄荷はまともじゃないから相手にするなといわれる。
 ココロが壊れた薄荷の事情(泣けない)を遊は知る。
(6)
・学校、ある雨の日。薄荷の花壇が荒らされていた。
 遊は雨の中作業する薄荷をほっとけない気持ちになり傘をさしかけた。
(7)
・学校の屋上、遊はクラスメートに薄荷を無視するように強要される。断る遊。
 すると遊は薄荷とともに学校のクラスメイトの暴力を受けて怪我をしてぶっ倒れる。
 「自殺は嫌だけど――」
 「早く死にたいね」
  遊は、うんと答えた。
(8)
・二度目の戦争勃発。舞台は学校。校舎の中での大規模な戦闘。
 クラスメートの大半がやられる。遊と薄荷は生き延びた。二人は特別優秀な兵士であることが証明された。
・戦場で薄荷を乱暴したクラスメートが大怪我で苦しんでいた、助からない怪我。
・どうすることもできない遊を尻目にとどめを指す薄荷。
 「どうせ助からないし、生きてても苦しいだけだし」
そして狂ったように笑う。
 薄荷はもしかしたら泣いてるのかもしれない、と遊は思った。<TP1>

■ACT2

(11)
・オンボロの寮、夏休みの始まり。
 この間は戦闘はなくクラスメートの多くは故郷へ帰る。
 しかし遊は帰らない。薄荷も帰る場所などない。二人で寮で過ごす。
 自炊、洗濯、スイカ食べたり、退屈だが平穏な日々。
(12)
・ギーからの葉書。故郷の町の遊とギーのサブエピソードを遊が回想
 少し里心。
(13)
・寮、薄荷が遠くの海のそばにある療養所に薬を取りにいくことになる。
 (非戦闘区域についての説明)
 近くの療養所が閉まっていて誰もいないらしい。何て無責任な。
 本当は薄荷は出歩くのを禁止されているが別の療養所に取りに行くしかない。
 薄荷はついてきてほしそう。でも遊里帰りするんだよね?
 しかし遊はギーからのはがきに元気だとだけ書いて投函する。
 「おいしーもの食べられるんでしょ?」薄荷と出かける遊。
(14)
・田舎道、ちっとも来ないバス亭、線路なんかをたどりつつ海へと向かう。
・田舎町、あるファミレスで薄荷が言う。「財布なくしたかも」「おい!」
(15)
・田舎道、戻るにしても金がないのでどうするか。ヒッチハイク?。
 ヤダどうせロクなヤツはいない。ひどい目に会うのがオチ。
 警察?無断で寮を出たので後でメンドーがおきそうだ。はぁとため息。
 療養所にたどり着けばお金が借りれるので歩いていくことに。畑で作物を盗んだり
 川で水を浴びたりしてしのぐ。とんだ貧乏旅行だ。
 屋根に穴のあいた掘っ立て小屋で星空を眺めながら寝る。赤錆だらけのシャワー。
 薄荷、遊が買ってくれたリボンを大事にしている。
(16)
・海辺、ようやく海が見えてきた。療養所にたどりつく。
 薄荷の知り合いの女の子がいる。
 気が強い子で表面上は薄荷につらくあたる(以前、セレクションで薄荷が傷つけたから)。
 「あんた薄荷の何?」
 「同じ部隊のチームのメンバ。それだけ」
 「ふぅん、ならいいけど」
 「もしかして、薄荷が好きなの?」
 「ち、違うわよ! あんな変態っ!」
 薄荷は女の子におみやげを手渡す。それは花壇で薄荷が育てていたものだった。
 今年は直接渡せて嬉しい。
 (薄荷の過去のサブエピソード、遊同様両親に虐待された。泣くと殴られた。女装を強要された)
・薄荷、墓参りで日射病になる。薄荷を助けるために人工呼吸する遊。<MP>
(17)
・療養所で三人の暮らし。ぎくしゃくしつつも楽しい感じ。
 薄荷にしっとする女の子に自分も微かに嫉妬しとまどう遊。
 三人の食事、ベッド二つしかない、何かの小動物とか、花火とか。
(18)
・療養所に来訪者(富裕層)が来る。嫌な感じを受ける遊と女の子
(19)
・ふいの敵襲。突発イベント。戦闘。たった三人ですごい戦果をあげる。
 が、女の子の怪我。→気にしつつも帰る二人。
(20)
・帰り道、女の子がたぶんやられたことを知る遊。それを薄荷には隠す。
 「冬休みもまた来ようね」
 「うん……」
 薄荷の髪にはリボンが揺れていた。
(21)
・二学期の始まり。シャッフル(セレクション)の予告。<TP2>

■ACT3
(22)
・どこかの街。市街戦。
 薄荷はシャッフル予告後も変わってない様子。
 遊と薄荷のコンビで戦果はすさまじかった。ワンサイドゲーム。薄荷のリボンを見て遊は薄荷の本心を計りかねた。(薄荷はすでに自分が死ぬつもりでいた)
 
(23)
・遊の態度や言動は薄荷との戦いを拒否していることを示す
(具体的に:クラスメートなり教官を倒す。独房へ)。
 「それなら殺されたほうがいい」
(24)
・遊が薄荷との戦いを避けていることを知った管理者側が動く。
 薄荷とギーに対して何らかのプレッシャーを与えられる。薄荷が呼び出される。
・その後、遊が学内で狙われるような事件。
(25)
・面会にきたギーから戦うことを頼まれる遊。遊はギーに失望する。
 「さよなら、お父さん」
(26)
・遊の小さな抵抗(具体的に:薄荷と脱走)。しかし失敗。
・薄荷、遊の目の前でリボンを捨てて笑う。事件の首謀者だと言う薄荷。
 「じゃあ僕に殺されてよ、遊」
 遊は薄荷に対して「あんたと殺しあう」と宣言してしまう。
(27)
<CM>
・遊は薄荷を殺してしまう。薄荷は遊のためにわざと死んだ。(空砲? ダミー弾?)
 遊は薄荷が友達だったとやっと気づいた。肩にリボンを巻いていた。捨てたんじゃなかったの?
 「私は、友達を殺した」


ただ、一点。
本編のラストはこのプロットとは違っているのだ。
何故、そうなったかと言えば、それだけ登場人物達が強かったということだと僕は思っている。
気になる方は、随時公開中の本編(https://seojun.site/)を読んでいただければ幸いだ。

あと、テーマを隠したのはさすがに小っ恥ずかしいからだ。
そういうのを書き手が直接的に伝えるのは、無粋だろう。

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