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2012年3月11日


一年目のその日の光景を、私はよく憶えている
私は、津波に洗われたまちを訪れた


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海辺には、流されたものたちが片付けられ、
高く積まれた「瓦礫山」があった
人びとがぞろぞろと並び、それに登っていく
私も列についていくことにした

たいして高くはない山の上からは、流されたまちが一望できた
すっかりと晴れて、どこまでも遠くが見える
周りの人たちは、ひそひそ声で話し合いながら、
ここに何があったのかを思い出そうとしているようだった


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人びとの列は山の頂上で終わっている訳ではなく、
山の反対側へ、そしてさらに海の方へと繋がっている
私もそろそろと着いていく

仮設の防波堤の上に、人びとが一列に並んでいた
お喋りをする人はおらず、黙ったまま、海の方をまっすぐに向いている

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防災無線が鳴り、そして、沖合の舟が汽笛を鳴らす



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黙祷のあと、人びとは移動をはじめた
そして、流されたまちのそれぞれの場所へと迷うことも無く進み、
花を手向けていく

私はその時、このまちに、
こんなにもたくさんの人が居るのをはじめて目の当たりにしていた
流されて一面平らなまちに、
人びとが手向けた花がぽつりぽつりと鮮やかに光っている
生きている人と、亡くなった人、そしていまここには居ない人たち
みながここに集っている
まちが、ここにまた、立ち上がっている

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青くつややかな空にくるまれたその光景は、とてもうつくしかった


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