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R5予備論文憲法を振り返る〜出題趣旨を踏まえて〜

0.はじめに
どうも、司法です。ご覧いただきありがとうございます!本noteが皆さんのお役に立てれば幸いです。
今回は、R5予備論文の憲法について、出題趣旨を踏まえながら、書けたこと、書けなかったことを振り返っていこうと思います。出題趣旨全文引用していますが、すでに出題趣旨をご覧になった方は、「」部分を全て飛ばしてご覧下さい。
なお、再現答案の作成は行なっておりません。X(Twitter)上には、複数の合格者の方々が再現答案を作成なさった上で緻密な分析をなさっています(その意味で私のは簡易版だと考えてください。)。いずれも本当に素晴らしい内容となっておりますので、まだご覧になっていない方は、是非他の方の分析もご覧いただくことを強くお勧めいたします。

1.振り返り(「」内は、出題趣旨の引用です。)
「本問は、フリージャーナリストが民事訴訟において取材源について証言を求められた際にそれを秘匿することについて、憲法上の根拠の有無及び保護の範囲を問うものである。この問いに答えるためには、報道を行う上で不可欠の前提である取材の自由及び取材源秘匿について、それを享有する主体の範囲を含めて、判例及び学説の正確な理解とそれを事案に適用する能力とが必要である。」

まずはこの部分についてです。取材の自由と取材源の秘匿については、並列した形で書きました。他方で、主体の範囲については殆ど書いていません。また、今回の私の憲法での大きなミスとしては、第三者の立場からの当てはめを殆どしていない、ということが挙げられます。単に時間不足でした(55分)。別途noteを書こうと考えていますが、R4は真逆で、判例名を挙げて書いてはいないが大量に当てはめをした、という感じです。去年も今年もB評価であることからすると、おそらく判例の理解(最低限の規範や考え方など)をきちんと示せていればCはつくと考えられます。そこから、いかに事案に即した検討をするかによって、CかBかAかが変わってくるのでしょう(ちなみにR4の場合、私は当てはめ段階で二度ほど軽く全農林に触れただけで、保護範囲、制約段階においては全く判例を示さずにいわばテキトーに認定を行ないました。)。
なお、あくまで私見ですが、「事案に即した検討」をしていれば点数はつき、目的手段審査か判例の定立した基準(比較衡量)か、という点はあまり大局に影響はないと考えています。判例の挙げた基準を使えば、それは判例の理解を示せることになるとは思いますが、目的手段審査を使った上で、当てはめの中で判例との異同を踏まえた検討がなされていれば、結局判例についての理解を示せることになるからです(結果的に判例との違いが踏まえられていれば、実際に異同を意識しているか否かは関係ありません。)。近時は特にですが、判例の理解を示すことが強く要求されている憲法の試験では、「理解の示し方」の相違はそんなに大きな影響がないだろうと考えています。
やや長くなりましたが、次の部分を振り返っていきます。

「第一に問われるのは、取材の自由及び取材源秘匿の憲法上の位置付けである。判例(博多駅事件(最大判昭和44年11月26日刑集23巻11号1490頁)) は、報道機関の報道は国民の知る権利に奉仕するものであり、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法第21条の保障の下にあるとする。取材の自由はそ の不可欠の前提であり、判例は『憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値いする』と述べる。そのため、学説においては、憲法第21条は取材の自由を直接保障していないとするものもあるが、表現の自由の一つとして憲法第21条の保障を受けるとする見解が有力である。また、取材源秘匿については『取材の自由を確保するために必要なものとして、重要な社会的価値を有する』と認められている(NHK記者証言拒絶事件(最判平成18年10月3日民集60巻8号2647頁))。」

次にこの部分です。私が今回明示的に判例名を挙げて紹介したのは、博多駅事件とNHK記者事件の2つです。いずれも、(〇〇事件参照)という形で書きました。取材の自由については、3者間で対立軸を作りました。また、これと並列して取材源の秘匿についても書きましたが、「重要な社会的価値を有する」云々は書いていません。取材の自由とおんなじことをそのまま取材源の秘匿にも適用した感じです。第三者(=私見)の部分で、「憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値いする」を書きました。出題趣旨を読むと、私のような対立軸の作り方は必ずしも是とされていないようにも読めますが、あまり点数には影響しなかったようです。判例の文言を書けたからでしょうか。


「ただし、上記の各判例は、いずれも『報道機関』を対象としたものであり、フリージャーナリストの位置付けは、判例上明確に示されていない。そこで、その点を どう判断するかが第二の論点となる。報道は国民の知る権利に奉仕するもので、そ のために、取材の自由は『報道機関』に対して特に認められたものである。しかし、『報道機関』の範囲をどう捉えるかは議論の余地がある。Xのようなフリージ ャーナリストに取材の自由の保障が及ばないとすれば、そうした区分の合理性が問題となり、実質的に報道機関としての性質を備えているかで判断するとすれば、 『報道機関』としての性質をどう捉えるかが問題となる。」

次はこの部分ですが、報道機関の範囲や、報道機関としての性質などは全く書いていません。フリージャーナリストも一種の職業で、記事を書く前提として取材の自由大事だよね、みたいなことを書いてあっさり認めました。対立軸さえ作らず、第三者の立場からの論述でいきなりこれを書いた、という感じです。全く書いていないわけではないが、ちゃんと論じているわけでもないという何とも中途半端な感じですが、本番では何が正解かなんてわかりませんから、触れただけでも自分を褒めたいですね。


「第三に、本問では、フリージャーナリストは、取材相手に対して民事上の守秘義務契約があると知りながら、それに反する行為を強く迫っており、これが正当な取材活動に当たるか否かが問題となる。この点については、外務省秘密電文漏洩事件 (最決昭和53年5月31日刑集32巻3号457頁)における『報道機関といえども......取材の手段・方法が......一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、 その手段・方法が一般の刑罰法令に触れないものであっても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びる』との判示が参考になる。本問は、刑罰法令違反ではなく、民事上の守秘義務違反が問題となる事例であるが、上記判旨を踏まえ、かつ、本問で事実として示された取材の態様に照らして判断を示す必要がある。」

さて、おそらく私の今年の憲法の一番大きなミスは、西山太吉に全く気づかなかった点でしょう。正当な取材活動か否か、は全く触れていません。代わりに「職業」にあたるか、ということを書きましたが、西山太吉なんて全く気づいてないわけですから、的外れなことを書いていたと思います。書いたのは、フリージャーナリストは職業なのか?みたいな事です。そんなの職業に決まってるだろ、と言われればそれまでですが、いろいろある事実をどう使えばいいのかわからなくなり、こういうことになってしまいました。ちゃんと勉強し直そうと心の底から思いました。

「最後に、民事訴訟法第197条第1項第2号は一定の職業について、職務上知り得た事実で黙秘すべきものであることを理由とする証言拒絶を認め、さらに、同項第3号で概括的に『技術又は職業の秘密に関する事項』について証言拒絶を認めている。フリージャーナリストは同項第2号に列挙された職業には該当しないため、 同項第3号による保護が及ぶかどうかが問題となる。これについて、判例(NHK 記者証言拒絶事件)は『職業の秘密に当たる場合においても......直ちに証言拒絶が 認められるものではなく、そのうち保護に値する秘密についてのみ証言拒絶が認められ』、『保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲となる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられる』とした上で、『報道関係者の取材源は、一般に、それがみだりに開示されると、報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ、将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり、報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので、取材源の秘密は職業の秘密に当たる』 としている。上記判旨をも踏まえて、結論を示す必要がある。」

最後の部分です。上記の通り、私は、第三者の立場からの論述で、殆ど当てはめをしていません。何を書いたかといえば、「フリージャーナリストXの言う通り、確かに取材の自由大事!ただ今回は甲の被る不利益が大きい!裁判を受ける権利大事!」ということをそれっぽく書きました。この当てはめは、52行目から始めて、60行目(「以上」の行)で終わっています。しかもそのうちの1行は5文字ぐらい書いて改行しましたから、いかに書いていないかがわかると思います。
社会的影響・関心事などの事情には一切触れていません。終わってから、刑事系が始まるまで、ずっと後悔してました。出来ないことに目を向けるのは宜しくないですが、出来たことを見ようとすると自然と目に入ってくるぐらい出来てません。憲法の勉強は、試験に対応できるような形でもう一度やろうと思います。

2.むすびに
以上、今回は出題趣旨を踏まえて、私なりにR5憲法を振り返ってみました。当てはめをこんなにもしておらず、またメイン判例1つに全く触れていない答案でBなのは相当意外でした(最悪Fも覚悟していたぐらいです。)。憲法で何を書くべきなのかについて少し方針が読み取れるかも知れませんね。今後の予備試験受験生にとって少しでもお役に立てれば幸いです!それでは。

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