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R5予備論文行政法を振り返る〜出題趣旨を踏まえて〜


0.はじめに

どうも、司法です。ご覧いただきありがとうございます!本noteが皆さんのお役に立てれば幸いです。
今回は行政法を振り返っていこうと思います。出題趣旨は各項目冒頭に引用しています。
結論だけをご覧になりたい方は、中黒のみをご覧いただければと思います。それでは振り返っていきます。

1.問われていたこと(全体)

「本問は、……競業者の原告適格、更新制を採っている許可制に係る取消訴訟の訴えの利益の存否に関する基本的な知識・理解を問うと同時に、本案での主張を判例及び参照条文から組み立てる力を問う趣旨の問題である。」

・原告適格、訴えの利益、裁量逸脱・要件の(不)充足が問われています。配点は順に、20点、10点、20点ほどでしょう。
・全体の難易度は、普通〜やや難です。
・競「願」(≠競「業」)関係の訴えの利益については、R3司法試験で問われており、連続性がある印象を受けます。
・裁量逸脱・要件不充足は特に変わったところはありませんが、違法を導く構造がやや複雑です。

2.原告適格

「〔設問1〕(1)は、最判平成26年1月28日民集68巻1号49頁を手掛かりにして、いわゆる競業者の原告適格を問うものである。問題文中に示された一般廃棄物収集運搬業務の性質を前提として、……制度の仕組みを踏まえ、本件許可については、許可業者の濫立等によって事業の適正な運営が害されることのないよう、一般廃棄物処理業の需給状況の調整が図られる仕組みが設けられていること、それゆえ既存の許可事業者の営業上の利益が法律上保護されていることを導く必要がある。」

(1)答案の方向性

・原告適格の一般論(小田急)については正確に書くことが必要。
 ∵判例の(最低限の)理解を示す。
・需給調整の話は(超)上位の要件で、上位のためには不要((2)も参照)。
 ∵ 素材判例の事案における争点を押さえなくとも、出された問題の事案に即した検討が法令を踏まえて行われていれば上位になり得る。

(2)個人的な印象、感想

・法令を踏まえて、一般廃棄物収集運搬業の特徴を(複数)書けていれば点数はつく。
 ∵平成26年判例の争点である需給調整の話を書いていなくとも、一般廃棄物収集運搬業の特徴を踏まえて論じられていればそれなりに点数がきている方が多い。
・許可事業者の営業上の利益が法律上保護された利益に当たらない、としても大幅減点はなさそう。
 ∵書けている人の方が少ないことと、相対評価であることからすると、結論(のみ)によって大幅な減点がなされるとは考え難い。
 →どれだけ事案(法令)と向き合っているか(判例を踏まえた検討が出来ているか)が点数に大きく影響していると考えられる。
・おそらくこの設問の出来は全体的に良くなかった。
 ∵ 後述5のやらかしにも拘らず、私はC評価。

3.訴えの利益

「〔設問1〕(2)については、」法第7条第2項に基づく政令、法第7条第3項「等の参照条文から、本件許可については更新制が採られており、本件許可の期間経過後も訴えの利益が維持されることを主張する必要がある。」

・この小問は、「法の規定をいかに丁寧に検討し、表現したか」や、「更新制という基礎概念を示して書けたか」により若干の差がつく。
 ∵殆どの人が書ける(書けている)。

4.実体的違法事由

「〔設問2〕は、……まず、……法第7条第5項第2号の要件に関して、最判平成18年11月2日民集60巻9号3249頁を手掛かりにして、同計画の策定及び内容の変更に係る計画裁量の存否を明らかにしたうえで、新計画の違法性を、事実誤認、事実に対する評価の誤り、考慮脱落及び他事考慮等の面から検討する必要がある。次いで、同項第3号……に関して、問題文に示された事実を挙げつつ、Dの事業遂行能力の欠如について論じる必要がある。」

(1)答案の方向性

・法7条5項2号の要件該当性判断の中で、法6条の規定する計画の計画裁量について、①その存否(及び広狭)、②逸脱濫用の判断基準、③②の当てはめをすることが要求される。
 →このうち、①②については、小田急訴訟本案(出題趣旨引用判例)が参考になるので参照。
・考慮遺脱や他事考慮、評価の合理性欠如、などのワードを用いてコンパクトに説明する必要がある。
 ∵重要な事実の基礎を欠く、社会通念に照らし著しく妥当性を欠く、の双方に当てはめる事実がある。
・法7条5項3号の要件については、要件の欠如を主張することが要求される。
 →なお、裁量逸脱と要件欠如の関係については、興津先生の『行政法Ⅰ行政法総論』430頁、448頁をご覧ください。非常にわかりやすいです。

(2)個人的な印象、感想

・計画裁量についての裁量逸脱濫用を、事情を拾って書いていれば点数がついている。
・計画裁量についての裁量逸脱濫用と、本件許可の違法性との関係について書くことは、(超)上位の要件。
 ∵ 書いてない方でもAがきている。
・答案の方向性で記した、①②③の順序は守るべき。
 ∵②を一旦飛ばして結論部分で②を示したり、②をそもそも書かないで裁量の逸脱濫用があると書いたりすることは相当印象が悪いと考えられる。
・3号該当性に関しては、BとDの実質的同一性に加え、(Bと合わせた)Dに事業遂行能力があるとすることの不都合性を、具体的に書いているか否かで相当差がつく。
 ∵当該事案に、より向き合って検討している

5.個人的なやらかし(時間配分なども含めて)

(1)書いた順序、時間配分、行数について

行政法(85分(答案構成25分ほど)、83行)→憲法(55分(答案構成10分ほど)、60行)の順で書きました。行政法も憲法も相当悩みながら書いたので、実際に書いた時間は順に53分、40分といった感じでした。

(2)やらかしについて

(ⅰ)小問1(1) 35行ほど→需給調整の説明に拘泥し、その他の特徴や法令の仕組み解釈を丁寧にやらなかった
(ⅱ)小問1(2) 12行ほど→法令の趣旨にまで遡った説明をできていない
(ⅲ)設問2 35行ほど→参照判例が全く違う

このうち(ⅲ)がおそらく最も足を引っ張っています。ほぼ0点ではないでしょうか。
私が引用した判例は最判昭和56年1月27日の、工場誘致と信義則違反の判例です。あの長ったらしい規範を、理由づけを含めてフルで書き、やれ住民自治の原則だ、やれ信義則だなどと諸々を書き散らしたので、おそらく理解が全く無いと思われたでしょう。またこの際、事実誤認や考慮不尽などを当てはめで書きましたが、体系的な位置付けが駄目だと点数が入らないものと考えられます。
挙句、3号の要件欠如はBとDの実質的同一性に言及したにとどまり、5行ほど書いて終わり。絶望的ですね。これでもCがつくわけですから、受験生の行政法の出来は全体的にあまり良くないことがお分かりいただけるのではないでしょうか(私がいうのもなんですが。)。

以上で終わります。皆さんの勉強の参考になれば幸いです!また、noteの内容や形式については試行錯誤中なので、ご指摘やご批評、ご要望をいただけますと幸いです!それでは。

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