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小説14.敧て

開業しました。11:04、いつもとは違ってリビングです。リビングというかダイニング。ダイニングテーブル。真横につらなっているので僕の家は。さあいこう。今日はツイートから始まったんだ。

食わず嫌いはまあ良くないんだろうけど言われてすぐ食いたくなるもんでもないし来るべきときみたいなタイミングがくるまでのらりくらりと他所でやってくしかない

今は嫌いでもちらっちらっと気になって仕方がないものはそれとわかるし、どうせ巡りあうことは分かっているしそれとは別に動き続けているので夢物語ではないんだろうし、ただこの別に言葉にせんでもよさそうなときの説明が致命的にめんどくさい、からうるせんだよほっとけよ、に落ち着くのもったいない

そういうもんだ、それが人間、それが人生、このへんはとるに足らないギャグとして使うか最後の切り札にとっておきたい

昨日の帰り道、そう家に着く直前の、歩いてここまで向かう道のりで僕はいつもつぶやきたくなる。たいてい後ろに単発のやすみか2連休が控えている。今回もそうだったが、夕飯をレンジで温めている間に忘れてしまった。温める前だか後だかにラップをこちょこちょしていたら、その瞬間はもうこの二つは絶対に呟かれなくてはならないんだと思っていたのに片方忘れてしまった。配膳が終わって、何口かずつ満遍なく飯を口に運んだあとだったか、真っ先に白飯だけ食った直後だったか、まず味噌汁に箸をつけて米粒が箸に引っ付かないようにするという、どっかのばあちゃんの知恵袋からきた作法に今日も則っていたまさにそのときだったのか、やっぱり忘れた。

お菓子を食って、おまけに変なダンスを一通り演じてきてしまったので若干気持ち悪い。米が炊けたからといって、また健康なライフサイクルに欠かせない早めの昼飯に適した時刻だからといってだから食いますとはならないくらいには。鼻が臭いな。絶対蓄膿症なんだよな。たけえんだよな手術。まあこのままいくんだろうとは数ヶ月前にもここに書いたが今もそう思っていることである。ほうじ茶も冷めてきた。カヌレと、ブラウニーとなんつったかな、抹茶とホワイトチョコのブなんとか、を食べた。すべて切れ端。でも一口サイズと形容できるくらいの立派な切れ端。同い年のギシンが専門学校の催し物で買ってきてくれた。彼は出勤日でもない日によく差し入れを持ってきてくれる。特筆すべきは彼も一応千葉県民で、まあ市川の方だからほとんど東京都もとれるけれど乗り換えで船橋の方までいかなくてはならないみたいなのでやっぱり職場に来るには手間がかかりすぎる。今回は持ってきてくれた上に数々のお菓子を全て人数分にカットしてくれた、おかげでミホさんと僕は大きくちぎった青いラップに夢いっぱい詰め合わせることができた。カヌレとブラウニーとブラッシュみたいなブリリアントみたいなあれと、チョコチップクッキーとブレーンと抹茶のスコーン。あとノバさんが長崎土産で当日期限のカステラを買ってきてくれたからバクバク食いやすくてよかった。ミホさんが私が買ってきてくれと言ってしまったからガンガン食べちゃって、と言ったので3切れ食べた上に1切れ持って帰ってきてやった。とはいえここでの一切れは俗にいうカステラ一切れの半分くらいのサイズだから、ほんとはもうふた切れいってやってもよかった。人目がなければ、そしてその3時間ほど前に僕が米の食わなすぎ、パンとお菓子の食べ過ぎで腹を壊していなければ。つまりはやりようがなかった。

綿野恵太さんがTwitterをフォローしてくれた。で、というのも何か音が変だからをと書いた。校正されかねない。逆張りの研究はいま図書館で予約している。たびたびTwitterの、いまは長い時間見ないようにしているおすすめの方のタイムラインでみかけては面白い、しょうもないこと言ってるなと思っていたので機会を得てフォローした。思ったよりしょうもなくてちょっとフォローを外そうとも考えたがまあまあとみっかかんくらい踏みとどまっていたらフォローを返してくれた。嬉しいね。千葉さんや鳥羽さんたちより下の年代であることは察しがついていたが、もしかするとまだ20代なのかな、とまだ調べていない。そのうえでフォローバックもきたので、なんかもっと調べなくてよくなった。無理に何かを売りつけるようなことはやめて、ただ好きなものをチェックして飽きるまで追っかけて飽きたらちゃんとやめて、俺もしゃべる、しゃべり出す練習を続けていればちながりたい人と繋がるのは見かけ以上に簡単なのかもしれないと思った。ほんとうに、じっくり粘り強く観察すればいま僕がいて、たぶん死ぬまでいるのはひとりで動きやすい時代で国なのか。

飯のつくりどきがやってきたようだ。腹は座ったままではいまいち空いていないが、11時半を回ったのがその証拠になる。この手の腹具合は味噌汁を作っている間に正反対とも言える方向に展開するのだ。味噌汁を夕飯の分と合わせて作る、まじでお湯を沸かし始めてしまえばはええんだ味噌汁って。じゃーって、お椀で3杯ちょっとはかって、2食分の時は4杯弱入れて、蓋をして弱目の強火にかける。強め、弱めって中火にしか使わないのなんなんだよ。それだけじゃねえだろが!?作ります。タイマーをセットするよなもんだから、お湯沸かすのって。それでいて沸かし直してもいいわけだし、次ははええし。お湯はなかったことにならないからやめられねーよ。そうだろ。

再開。14:19。ゆったりめ。どちらかといえばバイトがある日の執筆リズムが今の僕にとって自然なのだとすればいつものペース。9時出勤、今月中に一回だけあるがその日はこの辺で昼休憩に入っていそうだ、7時だと16時までだからさすがにここまで遅くならなくて、8時スタートの時はあってもおかしくないけど意外とない。わからない、最近8時出勤がほとんどないから月の後半にてまた観察していくことになる。飯を食い乾いた洗い物を食器棚に戻し、ようやく下に降りてきた妹に昼飯を出す。妹が降りてきたから食器を片付け始めたんだった気もする、棚に片付け始めたのは間違いなくそうだが、であればそれまで僕は食器を机に出したままだったんだっけ?ここ3週間くらいはそういう時間大事だなと思って、まあ体も楽だし身を任せる形で食事後の動作としてそれを取り入れてみてはいるが、妹が降りてくるまでそうだったか?そんなに動作が切り替わり方がぱっきりしていなかった、たぶん一応そろそろか、となんらかのきっかけで重い腰をあげ、食器を水につけるだけつけて、妹を呼んでこようか、そっちのほうが洗い物の段取りはすっきりするだろうから、とシンクを前に考えていた記憶がある、あれは食後だった、食器棚に皿を戻したのはコーヒーをいれるために電気ケトルでお湯を沸かしている最中だ、そうだ、自分の分はとりあえず洗って、そうそう妹の分もまとめて洗えたら手っ取り早くはあったのだがまあ別々に、自分のペースでノルマは進めた方が気持ちがいいかと諦めて自分の分だけ無言で洗って、一息ソファでついていたところで妹が起きてきたのだ。先に目があって、少ししてから食べる?昼、と聞く。こういうとき、特に最近は真っ先に言葉が出てこないことが多いが、目があって、あるいはとりあえず話しかけてから、言葉を使って本格的に会話を始めるまでの変な時間を僕はあまり嫌なものだ、忌避すべきものだとは思わなくなってきた。これも動作が先、あ、いま言葉に詰まってるな、出てこないな、をあー、とか話しかけた時に出した最後の音をぐーーっとかき消えそうになりながらもなんとか延ばしているとき、これでいいのだと思えるようになってきた。思える、が指し示すようにこれは僕にとって喜ぶべき変容である、あるいはその萌芽、かすかにみえた好機の影、ゴールの匂い、そう言ってみても面白いかもしれない。物語的で、ワクワクして。

最後はサクッと、もったいぶらない。完成させる、完成させる。完成させるっていうかって書こうとして2秒澱んだので2連で言ってやりましたよ。2秒で切り返してくださいよって天谷吏人もいってましたからね。ライトウイングをご存じない?サクッといくつもりで、スッと心に入り込んでくる波の音に耳をそばだてる。手は止まっている。そばだてるって書こうとして打ち間違えて変換までされちゃって、そのときはそばだてるが変換されてると信じきってるからこれっきりの邂逅だなんて思ってなくて、消してからそばだてるってこうかくの!?をやろうとしたら違う読みだったらしい。鼓みたいな字だった。特定班、コメント欄までお願いいたします。はい、簡単に私の方でも調べてみます。まず鼓から逆算するやり方。つづみとコは知ってたけどクキってマメ科の、ってか大豆の別称をあらわすのにも使われるらしいよ。じゃなくてあれなんだったの。そばだてるを打ち間違えながら考えていくやり方。送り仮名はるだったな。さばだてる、そはだてる、一発で出てくるはずだから真上に表示されるタブを見ながら、今日はあと70回くらい試行できる余地がある。そばたてる、欹て、まで。お前だ!そばだてまで書いたら違うんだろうなとそちらの線を消して考えようと決断しかけた瞬間、尻尾をみた。ぬかったわね。ちなみに欹はなになの?いやまてこいつじゃない。スケープ・ゴート。お前は最後まで強かだったよ。敧。鼓みたいなお前を探していたんだよ。鼓はなんだったんだ、送り仮名も敧てだしもうガバガバですやんと切り捨てかけた瞬間、お尻が出た。割れているかは目視できなかった、(文字通り)片割れである可能性は主だって考慮すべきだし、しかしもちろんハナから割れていない、知らないケツだってあり得るわけで。勇敢だった、俺もお前もな。こんなに清々しいことってあるかよ。そばだて、俺はめんどくさがってポンコツ変換の世界に居座るだろうからよ、これが俺たちの魔法の言葉だ。るは要らない。

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