消極的なキャリア選択を減らすためのEngineering Manager入門

こんにちは。
株式会社GameWith で Engineering Manager をしています @serima です。

この記事は Engineering Manager Advent Calendar 2018 の 23 日目の記事です。

問題提起

Software Engineer が足りない!と叫ばれている昨今ですが、それと同じくらい、もしくはそれ以上に Engineering Manager が足りていないと言われています。
いわゆる Web 業界も成熟期を迎え始め、ミドルマネジメントレイヤーの重要性が増してきているのだと思います。

よくあるソフトウェアエンジニアのキャリアパスとして「マネージャー」か「スペシャリスト」があると思いますが「マネージャーになりたくないから、スペシャリストを志向する」という消極的なキャリア選択を少しでも減らせると良いなと思っています。

Engineering Manager というキャリア選択をした私の事例によって、今後だれかがキャリア選択をするときの参考になれば幸いです。

目次

・どのようにして Engineering Manager になったのか
・Engineering Manager 入門
・Engineering Manager の醍醐味
・Engineering Manager の目的と手段の話
・どのように手段を磨くのが良いか
・終わりに

どのようにして Engineering Manager になったのか

私は 2017 年 3 月に株式会社GameWith にサーバサイドエンジニアとして入社しました。
以前の職場では小さなチームのテックリードやエンジニアリーダーに就いたことがあり、今後はより一層マネジメントに携わりたいという思いがありました。
しかし、会社として「いまは手を動かせるソフトウェアエンジニアが必要であり、マネージャーのポジションをすぐに用意することはできない。将来的にということであれば」ということで入社しました。

2017 年 3 月というのは GameWith が東証マザーズに上場する 3 ヶ月前で、サービスも成長を続けている、そんな時期でした。

開発チームは少数精鋭で、この規模感のサービスを 10 人程度で開発運用しているのかと驚いたのを覚えています。

前述の通り、入社 3 ヶ月目で東証マザーズに上場したこともあり、ポジティブな意味で会社を取り巻く環境がおおきく変わるのかな?と期待していた部分がありました。

たとえば、私が入社したあと数ヶ月間ソフトウェアエンジニアの採用が一切決まらなかったのですが、上場することで認知度が向上し、選考プロセスに乗る候補者も自然と増えていき、チームも自然と拡大していくのかな…と勝手に思っていましたが、それは幻想に終わりました。

入社後半年ほどはサーバサイドエンジニアとして、他のメンバにたくさんの教えを請いながら機能開発や改修を行っていたのですが、やはりエンジニアの採用がうまくいかない問題は、徐々に大きな組織課題として浮き彫りになってきました。

そこで、サーバサイドエンジニアとしての役割はいったん脇に置いて、業務時間のすべてを採用活動に注ぎ込むことにしました。
思えばこのあたりから「足りないピースを埋めに行く」行動を自然としており、あえて言い換えるなら Engineering Manager 業に片足を突っ込み始めていたのだと思います。

その後、多くの方とご縁があり、開発組織は少しずつ規模を拡大し続けています。(そのあたりの話はこちらのスライドで
その結果、新たなサービスを生むことができるようになったり、会社として Advent Calendar を行うことができるようになったり、外部のエンジニアに対する技術的ブランディングも強化されたりと開発組織として着実に強化されてきています。

その一方で組織が拡大していく過程では、今まで発生しなかったような課題が立ち現れます。そのたびに、それらに正面から向き合い、解決していくということを繰り返していきました。
ここに至るまで意識的にリーダーシップを発揮してきたというよりは目の前に困っている人がいたり、放っておくと自分を含め他の人が困ることになるので、やるしかない…という一心でした。

そして、約半年前から私は Engineering Manager として働いています。

Engineering Manager 入門

それでは Engineering Manager になったらまずは何をしたらよいのでしょうか?そして、どのような心構えで臨むとよいのでしょうか?

あくまで、ひとつの意見として捉えてもらえればと思います。

Do or Don't.

まず Engineering Manager をキャリアとして選択する際には、自分なりの覚悟は持っていたほうが良いと思います。

後述する役割次第ではありますが、一般的に Engineering Manager という役割にはピープルマネジメントが期待され、コードに触れる時間は間違いなく減ることになります。
そのような状況をあなたは受け入れることができるのかという一種の覚悟は必要だと感じています。

他の職種でも同じようなことがあるかもしれませんが、ソフトウェアエンジニア → Engineering Manager というキャリア選択には少なからず不可逆性があると感じています。
つまり、Engineering Manager としてのキャリアを歩み始めてからソフトウェアエンジニアの道に戻るには、スキルや勘を取り戻すためにそれ相応の時間が必要になるのではないかと考えています。

Engineering Management の醍醐味

私には、自分ひとりでは到底なし得ることができないことを、組織としてなし得ることができるようになることに対して喜びを感じるという特性があります。

また「昨日できなかったことが、今日できるようになる」という成長を見ることや成長を促すことに対してもモチベーションを感じます。

もちろん自分も成長を続けていかないと、その役割を果たすことができなくなってしまうため日々努力が必要です。

Engineering Manager はその役割上、ソフトウェアエンジニアが扱う領域よりも不確実性が一段高い問題に対処する必要があると思っています。

発生タイミングが読みにくい組織的な課題が突発的に現れても、柔軟に対処する必要がある点もハードではありますが、乗り越えたときの達成感はより大きいように思います。

役割を明確にする

たとえば「明日から Engineering Manager」と言われたとしたら、まず絶対にやるべきなのは「Engineering Manager は何をする役割なのか」という認識をすり合わせることです。
ただでさえ曖昧な役割なうえに、会社のフェーズや規模によって期待されることが大きく違います。
この認識が違ったまま走り始めると、全員が不幸になってしまうと思います。

口頭だけの確認ではなく、Engineering Manager に対して期待することを Job Description として書いてもらい、気になることがあれば対話し、双方で合意しましょう。

上司だけでなくチームメンバーとも認識のすり合わせを行うと、より良い関係値が築けると思います。

目的からの逆算思考

何をする役割なのかが明確になったら、それを達成するために今のチームに何が足りないのかを観察しましょう。

Engineering Manager 界隈でよく話題になる 1-on-1 や採用は目的でなく、手段です。ゆのんさん(@yunon_phys)が書かれている通り、真の組織課題を見つけ、そこにアプローチする必要があります。

もし組織課題がエンジニアのマネージメントであるなら、EMがそれにフルコミットするのが良い。 裏を返すと、全員が評価に満足しているのなら評価の話題をしないで良いし、いつでも困ったことを相談出来る関係性を築けているのであれば1on1もやらなくて良いし、既存のメンバーで理想の未来を描けるのであれば採用も不要である。 真の組織課題を見ずに、EMの仕事として評価・1on1・採用をもしやっているのだとしたら、危険信号かもしれない。

観察した結果、真の組織課題がチーム内に存在する場合もありますし、もっと大きな組織構造が原因であることも当然あります。

そのような場合でも、自分では手に負えないと匙を投げるのではなく、一歩ずつ着実に良くしていくという粘り強いメンタルと実行力を持つことも大事です。

手段の磨き方

これについては、いろいろな方法があると思います。

おすすめなのは、まずは書籍で全体感を把握し、個別の事象についてはブログで他の方の事例で学んだり、自社や他社の Engineering Manager と知見を共有し合ったりするのが良いと思います。

最近では Engineering Manager Meetup というイベントが定期的に開催されているため、こちらに足を運んで頂くのは特におすすめです。

それ以外にも、会社でマネジメント研修を行ったりしている場合は積極的に参加してみることもおすすめします。(自ら研修をやりましょうと働きかけるのも良いと思います!)

しかし座学や研修ではやはり限界があり、実際に体験してみないと分からないことが多いのも事実です。
会社のフェーズや組織規模などコンテキストによって対処法もぜんぜん違うので、書籍で学んだパターンがそのまま適用できるとは限りません。

そのうえでおすすめな本をざっと紹介しておきます。
ザ・定番で恐縮ですが、読みやすさや重要度などを考慮して、上から読んだほうが良い順としています。

終わりに

私はいまの職業をとても楽しんでいます。

なので、ほかの方にも是非!とそんな簡単には言いませんが、Engineering Manager をやりたい!と思ってくれる方がひとりでも増え、消極的なキャリア選択をする方がひとりでも減ることを願っています。

この半年間、具体的にどのようなことをやってきたか書こうとも思いましたが、さらにボリュームが大きくなってしまいそうだったため、今回は断念しました。

こちらの続編なども含めて Twitter (@serima) でも情報発信をしていきたいと思いますので、フォローをお願いします!

それでは、どこかのイベントでお会いしたときは、ぜひ熱い議論を交わしましょう。

良いクリスマスをお過ごしください!

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