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河川堤防の地盤改良工事はなぜ行う

河川堤防の地盤改良工事といっても、すぐに理解できない方もおられることでしょう。この記事では、治水対策の概要や河川改修工事のいろいろ、現代社会の抱える治水の課題を紹介した上で、なぜ河川堤防を地盤改良する必要があるのかを説明していきます。

河川の地盤改良 整形状況

洪水の影響を小さくするために

治水とは、水害を防ぐ目的または水運や灌漑の便を図る目的で、河川等を改良し保全することです。
上流部では、地すべり防止工事や、土砂が流出しやすい山地河川の山腹や渓流での砂防工事が行われます。さらに、ダムを設けて水を一時的に貯め、洪水時の河川の水位を下げるなど洪水調節施設の建設や維持管理も実施されています。尚、ダムには洪水調節以外にも、利水や発電・砂防など、様々な役目があります。
中流部および下流部では、治水・利水の目的で河川改修工事を行います。日本では諸外国に比べて多彩な技術が駆使されています。洪水が河道を越えて氾濫することを防ぐために築かれた堤防や、一時的に水を貯めて洪水調節する遊水地など、治水施設は日常的に目にしていることでしょう。
洪水が発生する頻度が高い日本においては、治水対策は基本的に、まずは施設で守ることとされています。堤防を築くことで、洪水の流れる断面を広げ、洪水を安全に流下させることができます。川幅を広げる工事や、河川を掘削する工事も、水の流れる断面を大きくして水位を下げて氾濫を防ぐ効果があります。他にも、屈曲した流路をなめらかにする河道修正工事が治水対策としてあげられます。河道の蛇行がはなはだしい場合は、直線河道を新たに設けたり、流路を短縮させて洪水の通りを改善したりする工事を行うこともあります。

現代における治水の課題

人口や産業が都市部に集中し、流域の開発が進んだことで、流域の保水および遊水の機能は衰えたといわれます。これによって河川への流出量が増加し、洪水の危険性が増しています。
かつて自然地(樹林地や草地・農地・池沼などの土地)で雨水が地中に浸透しやすかった場所も、今やコンクリートやアスファルトで覆われています。このため、雨水の大部分が河川へ流入するようになりました。河川の水位は上がり、洪水が起きやすい状態となっています。
都市部の安全を守るためには、河川改修工事だけでなく包括的な対策が必要です。例えば、自然地を守る・盛土を抑制する・公園や池で貯留する・透水性の高い舗装に転換するなどです。これらの流域対策に加えて、住民に対する地道な啓発や、住民や自治体・河川管理者等への防災情報の提供などを実施して被害軽減を図っていく必要があります。情報提供に際しては、過去に起きた洪水や災害の発生状況などを総合的に考慮することが前提となるでしょう。現代の治水対策では、より広範な視点が求められるようになっているといえます。

堤体を地盤改良する効果

河川堤防は、洪水をはじめとした浸透や浸食などの作用に対して、安全な構造を持つことが求められます。このため、矢板を設けて遮水するなどして工夫します。
堤体の地盤改良工事も、浸透・浸食対策のひとつです。地盤改良は、軟弱な地盤の強度を人工的に高める工事のことです。地盤沈下や不同沈下対策、液状化対策として知られています。建物を建てる前に行う工事というイメージをお持ちの方もおられるでしょう。
しかし、地盤改良が役に立つ場面は、建築構造物の基礎工事に限定されません。盛土地盤の安定処理・路床や路盤の改良・仮設地盤の築造・重機のトラフィカビリティ確保・護岸の強化など、様々な場面で活用されています。
堤体が軟弱な土で構成されている場合、氾濫のリスクが大きくなります。強度が小さい地盤は水の浸透や浸食を容易に許してしまうので、洪水が発生すればすぐさま河道の外まで氾濫させるかもしれません。こうした事態を防ぐため、強度が高く、透水性の小さい土質に堤体を改良することが大切なのです。


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