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河川護岸の地盤改良等における留意点

河川護岸の地盤改良や築堤など、河川護岸周辺の工事にはさまざまな種類があります。大がかりな工事になることが多く、周囲への影響も大きいので、綿密な設計が求められます。この記事では、護岸周辺の工事で留意すべきことを説明しましょう。

河川の地盤改良と整形

護岸周辺の工事において留意すべき事柄

護岸周辺の工事には護岸の地盤改良や護岸基礎工、河川構造物の築造・改修、砂防、樋管の新設・改修など、さまざまな種類の工事が含まれます。
共通するのは、工期や経済性、環境への配慮などについて、通常の工事以上にシビアに考える必要がある点です。
護岸周辺の工事では河川を一時的に堰き止める・河川の流れを変える・隣接する道路の通行を禁じるなど周囲に与える影響が大きく、また、環境への負荷が懸念されるので、できるだけ短い工期で完了することが求められます。コストを抑えつつ過剰設計を避けることは、環境への配慮につながる上に、高い経済性をも実現します。
こうした条件をクリアするために、工事の設計は綿密に行います。

設計変更のロスを小さくするために

河川護岸周辺の工事では、さまざまな事情で当初の設計から変更せざるをえないケースがあります。設計変更をできるだけ避け、やむをえない事情によって設計変更する場合も変更によるロスを小さくするためにできる対策を説明します。

○工事に着手する前に、現地踏査や測量をしっかり行う
例えば、低水護岸(雨・波・流水などの作用から高水敷きを保護するため、河岸に石やコンクリートブロックを貼ったもの)を新たに築いて既存の河川堤防護岸と一体化させる計画を立てていたとしましょう。工事開始後に測量したところ、新設の護岸の高さと既存の護岸の高さとが一致しないことが判明したら、大幅に工事内容を変更せざるをえません。この場合、嵩上げコンクリートで高さを調整するなどの対処が考えられますが、工期の延長およびコスト増は避けられません。工事を開始する前に現地踏査と測量を確実に行えば、「予測外の事態に出くわした」と慌てる心配はいりません。
現地踏査では工事を行う箇所を正確に把握し、何らかの変状が認められる場合は特に注意して記録をとり、状況に応じてより詳細な調査を行うことが求められます。さらに、変状を発生させている要因を推定し、適切な応急対策を講じることで工事全体をスムースに進行させることが可能です。

○発注者・受注者の双方が工事の諸条件を共有する
例えば、低水護岸工事で護岸基礎工のために掘削したところ、地下水の浸透があり、仮締切からの排水が必要となったとします。排水そのものは当初の設計で盛り込むのが一般的ですが、実際にどの程度の排水量が発生するか・排水に何日間を要するか・使用するポンプの規格はどれかなどは、地下水位の変動に影響されるので、工事に着手してからでなければ決定できない面もあります。場合によっては工期の延長やコスト増が起こります。
他にも、河川拡幅のために古い護岸構造物を撤去して新たに護岸構造物を築く工事において、現地を掘削した結果、それまで存在を把握していなかった護岸構造物が発見されたという事例があります。発見した護岸構造物を必要に応じて除去し、仮置き場を設けるなどの対策が新たに求められることとなり、工期延長・コスト増になります。
先ほどの事例とは逆に、コスト減となるケースもあります。例えば、軟弱地盤をセメントで地盤改良した上に築堤する工事において、採取した試料による配合試験結果に基づくセメント添加量より少なくても強度を保てることがわかった、といったものです。
コスト増につながるにしろ、コスト減につながるにしろ、仕様書や契約書に記載した条件と現地の状況が同じでない場合は、発注者と受注者が協議した上で、設計を変更する必要があります。仕様書等の内容をお互いによく理解しておくことが不可欠です。また、特に受注者においては状況報告を正確に行うことが必須といえます。
精度の高い工事を過不足なく行うためには、周到な準備と状況に応じた対応が不可欠なのです。

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