無理ゲーさせられた末に

父に付き添って病院へ行ってきました。

母も同行しましたが、足が弱っていてカートにしがみついている状態な上、ものすごく耳
が遠くて、ほとんど聞こえていないにもかかわらず補聴器を拒否しているので会話になら
ず、私が行かないと話にならない。

医者が言うには、患部を見た印象だけだとそれほど病気は進行しておらず、手術自体も大
変でないため、局所麻酔でオペ可能だろうと。あとは病気が、患部だけの問題であることを祈るばかり。
そうであれば、大病というほどのものではないようなので。

来週また検査のために行きます。今度は母が自分の定期通院のため他の病院へ行くので、
私がひとりで父を連れて行くことに。

見ていると父もだいぶ頭の回転が衰えていて、そばにいて一緒に話を聞いて理解したり、色々な状況を説明する人がいないと、本人も、医者や看護婦も困るような感じです。

母がそういう状態な上、私には兄弟がいないため、一人で介添えしないといけないのは仕方ないこと。やるしかないんです。

うちの息子も一人っ子だから、将来はそうなるのかな。あんまり彼の手を煩わせたくないですね……

それにしても、私が自由業みたいな仕事だからまだいいですけど、これがサラリーマンだったらやっぱり負担は大きいですよね。というかそうそう休んで付き合えない。

いま少子化しているし、日本人はもう共働きじゃないと生活できない家庭が大多数になっているから、誰にとっても親の面倒を見ることや介護は深刻な問題。

政府は「一億総活躍社会」とか美辞麗句を言っているけど、要するに、少なくとも七十歳ぐらいまでは年金に頼らず自分で働いて稼げよ、なんなら死ぬまで働いてねってこと。

でも、誰だって五十過ぎれば、こうして親の老化、認知症、介護の問題に直面するわけで。しかも基本的には老人の世話も、国や自治体から「家族」間の問題へと軸足を移したいという方向性ははっきりしているし。介護サービスも、だんだん自己負担を増やしたいのが見え見えだし。

たとえば何年も前に出た、最初の自民党改憲案とかで「家族」を強調してるのも、そういう文脈で捉えればそういうことね、と腑に落ちる。

公的なサービスに頼る、から家族単位での自助自立、自己責任の部分を重くする方向に、政治家や官僚は考えてますよ。

でもね、この止まらない少子化の中、共働きで、しかも親の介護もしながら七十過ぎまで現役で働くって、現実的にはかなりの「無理ゲー」ってやつですよ。

企業だって、ホンネを言えば、そんなじいさんばあさんを雇用したくないでしょう。

頭も体力も衰えた労働者には出来る仕事だって限られてる。今やってる仕事を、七十になって同じように出来る人がはたしてどれだけいるのか。

老人になってから全く新しい仕事を見つけなさい、就職して働きなさいと言われても、そう簡単に出来ない人が大多数だと思いますよ。そういう人をどうするの?見捨てるの?

こんなの庶民の現実を見据えた考え方じゃない。その上に、外国から安い労働力を入れて、企業の人手不足と人件費削減を両立しようという腹積もり。
若い外国人と、年老いた日本人の、労働市場でのパイの取り合いになりますよ。

そりゃ政策立案をする人たち、それを通す人たちは、お金持だから、老後の資金もたっぷりで心配ないでしょう。家事も親の介護とかも自費で外注して、悠々自適に暮らせるでしょう。

だから庶民も同じように、年とったり病気になったら自分のお金で何とかしなさいよと?家族同士の助け合いだ、自助自立だ自己責任だと?

じゃあ国や自治体ってなんのためにあるんですか?これから上がる消費税も含め(けーだんれんさんによるとできれば将来 20%まで上げたいらしい)、高い税金やら、社会保険料やら健康保険料やら介護保険料やら、何のために払わされてるんですか?

あれ「年貢」じゃないですよね。政府や自治体という機関を通して、結果的には自分たち自身のために有効に使ってもらうために、一時的に「預けてる」お金のはずですよね。

民主主義社会ってそういうもんですよね。「多数決で物事を決める」ことが民主主義じゃないですよね。

国民から「吸い上げた」税金を(たしか国会で総理はそういう表現をしていましたよ。がばっと下からものを持ちあげるしぐさをしながら)外国に行って、何千億円何兆円とばらまいて来ちゃうためですか?

いいですよ、将来その国と共同事業とかやって、日本企業も参加すればその企業は儲かりますからね。でもそういう大企業と直接関係ない人のメリットは?

上が潤えば下にも恩恵が滴り落ちる、というトリクルダウン理論、たしか政府も否定してますよね。

要するに上が潤ったら上だけ潤うんでしょ?改革開放以来、中国の富裕層が爆裂お金持ちになったのに庶民は貧しいまんまだったのとおんなじ。

だから、戦後最長の好景気!という超ゴージャスなことが起きているはず(?)なのに、庶民の賃金は上がるどころか実質下がるわ、食べ物や消費財は実質値上がりするわで、むしろみんな余裕なくなってるんですよね。

要するに大多数の庶民は、政府を通して間接的に、外国人(アメリカとかロシアとか)のお金持や、国内の富裕層に貢ぐだけ貢がされてるんですよ。

それだけ尽くして、歳とったり病気になったりしたら、ハイさよならあとは自分で何とかしてね!だなんて。

いやー切ないなーそんなの!顔も知らないどこぞの金満家に貢ぐ人生?そんなぐらいなら、愛人やらホストやらアイドルやらゲームの課金システムやらに貢いだ方が、まだ一時夢を見られるだけ、ずっとずっとマシ。

読んでいやな気分になった方がいたらごめんなさい。でも、これが今の我々の現実なんで
すよ。ちゃんと見ないと。

古代ローマ帝国など、封建制のもとに繁栄した歴史上の大国は、市民を統治するために「パンとサーカス」を提供しました。十分に生きて行けるだけの富=パンと、支配層への不満を解消するための娯楽=サーカス…...。

いまの日本の場合、サーカスはオリンピックとかですかね。でも、サーカスはあっても、
パンはどんどん減らして行くやりかた。これじゃローマ皇帝よりひどい。

「本当はひどい」統治をしてることをごまかすために、世界の歴史上で、さまざまな権力
者がやって来たことは……

1.庶民に「選民思想」を植え付けて気持ち良くさせること。

2.外部に敵を作り、憎ませること。

3.内部に差別される階級や個人を作り、いじめさせたり蔑ませたりすること。

1. に関しては、ユダヤの選民思想とか、ナチスのアーリア人優越思想とかありますね。

2. については、キリスト教徒とイスラム教徒の争い、アフリカの部族間対立、日本の少し前では「鬼畜米英」とか。

3. の例としては米国の有色人種差別とか、欧州のロマ差別とか、インドのカースト制度とか、日本の部落差別とか。

今日本の庶民にも、実はじわじわとマグマのように不満が高まっているから、この全部を、統治する人たちは一生懸命やってる様子ですね。

とくに、ツイッターとかの SNS や、娯楽メディアを見てると顕著に表面化しています。一例をあげれば……

1.に関してはテレビでよくある「日本ってスゲー」系バラエティー番組など。

2.に関しては、○○人ってサイテー、敵だやっつけちまえ!系の世論を煽ること。

3.に関しては、外国人労働者とか障害者とか在日韓国人朝鮮人もそうですけど、最近目立つのは若い人に「老害」という言葉を流行らせたりして世代間対立を煽ったり、フェミニズムを利用して、男女間の対立を煽ったりなど。

こうした大衆をなだめるための作戦には「もっともに思える事実」が巧妙にさしはさまれている場合もあるので、よほど注意しなと、ことの「本質」を見失わされてしまいます。

でも問題なのは、そんなことをしなければならないほど「ひどい政治」が行われている事であって、それを解決しなければ、本当は何ひとつ解決しないんですよ。

本当の問題からまんまと目をそらされはいけない。

ごまかしはいつか必ず隠しきれなくなるものだし、そうなったときに大衆から責められるのを逃れるため、権力者がとる方法はこの三千年間いつも同じ。どこかと戦争をすることです。

いま、もう用意し始めてますね。そろそろウソやごまかしが隠しきれなくなりそうだから、でしょうか。国民の不満や不安が限界に達する兆候が見えてきたから、でしょうか。

ちょっと前までは北のアソコが「仮装敵」でJアラート鳴らしまくってたけど、先方がアメリカさんと接近した結果、なんらかの「手打ち」があったんでしょう。おとなしくなっちゃった。かりあげ君の外交の勝利かな?

まあアソコについては、他の超大国の利害関係や利権もあって、実はややこしい事情を纏った国だというのもわかったんでしょう。

かといってChinaはあまりに強大になり過ぎちゃったし、勝手に何かおっばじめるとアメリカ様やロシア様からまでお叱りがありそうだし。

なんたって国連安保理の常任理事国ですからね。現実にケンカするのはヤバすぎ。

ヘタすると単独で複数の核保有国を敵に回すか、もしくは第三次世界大戦を引き起こして人類滅亡のきっかけになるかも、ぐらいの覚悟が必要な相手だから。

となると、仮想敵国に仕立てられる相手の選択肢は、もうあちら一択になる。

でもね、現代のリアルな戦争、そう簡単なものでもないですよ。なんたってあのアメリカが小国イラクを潰すのだって、あれだけのカネと物量と人的犠牲を払わなきゃいけなかったわけで。

ましてや戦争慣れしてない日本。始めたら間もなく相手が降伏してくれて「やったー!」というシナリオを描くのは甘ちゃん過ぎるでしょう。

もし勝てるにしても、血みどろのいくさになって、こちらも経済はガタガタ、国民生活はボロボロ、社会はズタズタ、大震災なんかとは比較にならない数の死者が出る、という事態をリアルに覚悟しておかないと。

まあ双方ともに国としてズタボロになるでしょう。

その覚悟があって煽ってる人、どれだけいるんですかね。これはゲームじゃない。

まあ大多数の一般人の生活が台無しになって、人生めちゃくちゃになって、それと引き換えに、支配層の人たちの失策の責任はチャラになるでしょ。

それでうれしい人は煽ればいいんじゃないですか?

……ということを、がんになった父を見て、老い衰えた母を見て、将来への不安を感じながら考えさせられました。

最後に、結果的にドイツ国家を破滅に追いやり、世界全体を地獄の戦場に巻き込んだ、ナ
チスのナンバー2 だったヘルマン・ゲーリングの言葉を引いて終わりにします。

『もちろん、一般市民は戦争など望んでいない。貧しい農民にとって、戦争から得られる
最善の結果といえば、自分の農場に五体満足で戻ることなのだから。わざわざ自分の命を
危険に晒したいと考えるはずがない。当然、普通の市民は戦争が嫌いだ。

ロシア人だろうと、イギリス人だろうと、アメリカ人だろうと、その点についてはドイツ人だろうと同じだ。

しかし、結局政策を決定するのは国の指導者達であり、国民をそれに巻き込むのは、民主
主義だろうと、ファシスト的独裁制だろうと、議会制だろうと共産主義的独裁制だろうと、常に簡単なことだ。

国民は常に指導者たちの意のままになるものだ。とても単純だ。

自分達が外国から攻撃されかけていると説明するだけでいい。そして、平和主義者につい
ては、彼らには愛国心がなく国家を危険に晒す人々だと、公然と非難すればいいだけのこ
とだ。

この方法はどの国でも同じように通用するものだ』

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