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フラクタル 2

2

 夢から目覚めたらはずであった。何の夢を見ていたかは覚えていない。けれど目覚めたはずであるのに脳裏には映像が流れ続けている。目を閉じているのに夢が続いているのだ。
 再びあの爆発の現場である。彼らの特殊部隊が劣勢であるのは、素人の私が見ても明らかであった。
 彼らの装備が散乱している。私を侮辱した忌々しいタブレットも、少し側面が変形しているものの機能している。画面はもちろんロックされてはいるが、何らかのメッセージを受け取っているようである。
 スカウターもある。簡単なゴーグルだ。私はあまり損傷のないゴーグルを装着してみた。
 「言語が違う…」
 見たことのない文字だ。ヘブライ語のようであり、楔文字のようである。オーラベッシュ?スターウォーズの宇宙言語?そのような印象だ。そもそも装着者の脳に、理解できる言語に自動で切り替えもできない程度の装備を使う部隊だったのであろうか?
 そうこう思案している内に文字表記が変わった。
『非対称者。女性。排除されるべき存在の者。』
スカウターにそう表示された。
「お前らの識別方法では女性かもしれないが、この星で俺は男なんだよ!このポンコツめ!」
『男性』
 表記が変わった。どうやら学習機能があるらしい。
 さて困ったことになった。スカウターが認識したということは、謎の軍団へこちらの情報が筒抜けになったということである。逃げも隠れもできないわけだ。
 それにしてもあの爆発は何だったのか?この装備を持つ劣勢部隊は何者なのか?劣勢側に加勢したくなるのはどうやら人類のサガのようである。
 仲間に救出されたのか、装備の持ち主は近くにはいない。私は残りの隊員を見つけるため爆発の中心であろう建物を目指して歩いた。少なくとも彼は、闇雲に私を撃とうとはしなかったので、私は見つかり次第射殺されることなどないと高を括っていた。
 それにしても何か不穏な電荷である。金属の焼け焦げたであろう匂いと、空気のノイズ?異常な帯電?プラズマがバランスを取ろうとするかのような振動が肌に伝わってくる。
 暫くすると煙の上がるガレキの上から降りてくる、ひとりの隊員と遭遇した。彼らの識別方法では男性なのであろうか。
 銃口がこちらを向いている…
私の読みは浅はかであったようだ。死に際に走馬灯が見えるなどとは迷信なようだ。私は初動で危機を察知していれば避けれたはずであるという後悔と共に記憶は薄れていた。夢の中で私は射殺され、排除されてしまったのであろうか。
 私はもう2度とあの現場には辿り着けないかも知れないという後悔の念を抱いたまま、再び眠りについていた。

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