ラウンジサウンズ

福岡のあるライブハウスに出演した時、客席にいたおばさんがいきなりステージに上がってきて、後ろで踊り出した。

おばさんはかなり酔っていたが、どうやら常連のようだった。
福岡で歌うのは初めてだったので、勝手が分からないが、もしかしたらこの街にはこういうノリがあるのかもしれない。
それならばここで演奏を止めて、注意するのは野暮である。
気にしないようにしてそのまま歌っていた。
おばさんが気持ち良さそうに踊っているのは、後ろからうっすら聞こえる衣擦れの音と軽快にリズムを刻む靴音で分かった。
ギター一本の弾き語りで、こんなにもノッてくれる人がいるというのは驚きでもあり、少し嬉しくもある。
地元の人に受け入れてもらえた感じもありがたかった。
曲が終わると、すぐにスタッフの人が飛んで来て、おばさんはステージから強制的に降ろされ、そのままいなくなった。

帰り際、スタッフの人が「あれ誰だったんでしょうね」と言った。

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