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青龍映画賞

玄関を出て、駐車場までの数十メートルを歩いていると暖かさを感じる。

スーッと鼻から息を吸い込むと、春の匂いがした。

少し埃っぽいというか、粉っぽいというか(もしかしたらそれが花粉なのかもと思うと今の所まだ症状はなくてもちょっと怖くなる)うまく表現できないけれど、冷たさがなくなり、ぬるま湯になったことで味がはっきりしてくる水のような、確かに感じる春の風味だ。


これまで何度か、賞の多い韓国エンタメ界の色々な授賞式について書いてきたけれど、数日前には映画に特化した「青龍映画賞」の授賞式があった。毎年年末にやっているイメージなのに、春を感じるこんな季節に? と思ったらコロナの関係で年末から延期されていたらしい。


主演男優賞は

ユ・アイン

主演女優賞は

ラ・ミラン

どちらもテレビドラマで知ったけれど、韓国は比較的この垣根がないというか、どちらかと言わず両方ともでみる俳優が多い気がする。

あの「パラサイト」パク・ソジュンが出ていたのも知られるところだし、この作品で“サジャンニム(社長)”の役をやっていたイ・ソンギュンを初めて知ったのは「コーヒープリンス1号店」というとてもポップなドラマでヒロインが憧れるという役だった。

その後コン・ヒョジンの「パスタ〜恋ができるまで」というこれも人気のドラマでシェフをやっていたのを見ていたので、ある時ホン・サンス「アバンチュールはパリで」という映画でパリに留学している北朝鮮の男性をやっているときはしばらくその人だと分からなかった。

そんな感じでユ・アインも最初は「成均館スキャンダル」ユチョンソンジュンギとともにヒロインを囲む役で知り、「密会」という天才的なピアノの才能を秘めているのに環境に恵まれない貧しい学生の役を演じているのを見たときは、広く見られるドラマで、朴訥で天才をこんな風に表現することができるんだと重く心の底に残った。

だからその後「ベテラン」という映画で完全な悪役を見たときはうわあ、何これ色々怖すぎる……(そもそも最後はスッキリするとはいえ、暴力シーンが全体的に辛かった)となったし、映画「バーニング」はもう完全に違う世界に行ってしまっている気がした。

彼のインスタを見ていてもどこかここではないどこかに存在している人のような気さえする。かと思えばものすごく無邪気な笑顔やリアルすぐそこにいるような馴染み深さを感じたり。

今回の受賞は「音もなく」という作品で、彼は全くセリフのない役らしい。15キロも増量して挑んだ役ということもあって、もう先に見てから後でそうかこれもユアインがやったんだな、と思うような捉え方の方がいいのかもしれないと思った。


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