それは奇妙。

ボカロどんぴしゃ世代なのでそんなかんじ。

さて。ここいらで『strange-orange』の解説といこう。なに? 聞きたくない? ページを閉じてくれ。まだ読んでない? ブラウザバックして今すぐにでも読んでくれ。逆になんでこのページを先に開こうと思ったんだ。ここはハッピーでハートフルな”まえがき”でもなければ楽しい楽しい音楽解説記事でもないぞ。それともあれか? 解説から読んで本文をどうするか決めるクチか? 危ないな、ミステリでそれやると死ぬぞ。ちなみにこの話はミステリだ。死ぬといい。

死んでもらっちゃ困るな。

解説のまえがきはここら辺で止めておくとしよう。みんなもう本文は読んだな? 始めるぞ? いいな? あとから文句言われても困るからな?

…………始まるぞ、覚悟は良いな!

◆◆◆

そういうわけで解説です。この話、『strange-orange』は鯛巻めきめ記念杯開催に当たり、山盛り怪文書(佳原雪)によって書き下ろされました。偽名です。なぜ偽名か。それはミステリアスを演出して広大なネットの海に現れた一条の流れ星と呼ばれたかったから……しかしページURLにID入ってるのを完全に失念していて速攻でばれた。これは『本当にありがとうございます』というやつだ。笑ってくれ。

真面目そうな文体で書くのは疲れるな。音楽の話題に移ろう。近頃は同人リバイバルブームが来ているらしい。そういうわけで執筆中に聞いた曲なんかをずらずら並べて行こうかと思う。どうも需要があるらしい。
まず、『THE SMITHS』。曲名じゃないな。とにかくこれを、これらを聞いた。馴染みのない音楽だ。しかし、聞いたことで私は”””わかって”””しまった。”””””わかってしまった”””””のだ。私は書いた。何がわかったのかまるで記憶にないし、何を聞いたのかももはやわからない。私の中には薄れた理解と”書いた”という実績のみが残った。私は理解を得、そしてそれを失ったのだ。結果があれだ。カミサマはなかなかなものをくれたと思わないか。そうだろ。そうだって言え。

次に、『共感覚おばけ』『ゴーストルール』『fallen(EGOIST)』『回レ!雪月花』『Love Doll(DECO*27)』『砂の惑星』『アンノウン・マザーグース』『ライアーダンス』ここらは一重に趣味だ。加えて『聖少女領域』を聞いたような気がしないでもない。この辺の曲は物を書く時のカンフル剤になる。そう思っているのは私だけかもしれない。一度聞いてみるといい。同じことを思うかどうかの保証はしないし何を感じたとしても責任は取らないが、良いものが書けるようには願っている。聞いてみるといい。

音楽の話はここまでだ。お気に入りの曲の話をしてもいいが、ここではやめておこう。それで……あとは何の話が残っていた? ああ、そうだ、この話が書かれた経緯だな。説明しよう。原案協力は知り合いの犬耳ちゃんだ。名前をドッグイアという。だから犬耳。あの毒っ気のある高音域で話すチャーミングな友人をそう呼んでいるのは私を除けばこの世界に誰一人としていやしないが、そんなことは些末事だ。どうだっていい。どうだっていい話ならするなって感じだよな。すまない。
……ええと、なんだ。とにかく私は夏にその犬耳ちゃんと海に行って、帰りに洒落たハワイアンレストランで食事をしながら吸うとか吸わないとかいう話をした。公衆の面前で。……テラス席は公衆の面前になるのか? わからない。ああ、無論、カ…ビスとかの話じゃない。もっと安らかで……凶悪なものだ。それを吸うとか吸うとか吸引するとかいう話題で私たち(言い忘れていたが犬耳ちゃんと私以外にも何人かいたのだ)はピザを片手に酒盛りをしながら一時間くらい話し合っていた。なかなかハードな空間だったと思う。私は酒が飲めないので甘いお茶の浮かぶ氷をつついていた。あのお茶はうまかった。最終的に犬耳諸氏は禁断症状が出るのでジェネリックの【軟膏】を買うとか買わないとか桐の箱がどうだとか言い合っていた。甘い茶をすすりながら私は『ああ、あれか』と思った。どれとは言わないが市販品なので見たことがある人もいるだろう。私は別の友人が使っているのを見たことがある。手の甲に塗り付けて揮発した分を鼻から吸うのだ。どうも気持ちが良いらしい。興味がないのでよくわからないが。

話を戻そう。その安らかで凶悪なもの、享楽のイデア。それこそが『strange-orange』の正体であり、この話のコアなのだ。ストレンジ・オレンジ。奇妙な橙色とはあの男の事に違いないが、あの男とはいったい何なのか? 無論カミサマ……『あの男』ではないことは確かだ。彼は神を三人称で語る。そう、彼は天使だ。否、もっというならば、『天使と呼ぶに値するもの』。
この世に天使と呼べるものがいくつある? 数えてみるといい。あるものは『そうだ』といい、あるものは『ちがう』と言うだろう。それでいい。美しく麗しいもの。それこそが天使のイデアたりうる。そういう、そういう話だ。わかってきただろうか。わからない? わからないならそれでもいい。

ちなみに”彼ら”が人間の乳で育つというのは半分くらい本当だ。半分が実際どれくらいなのかは諸説ある。

この話はおおむね””事実を元にした””ノンフィクションであるが、当然いくつかの誇張が含まれている。自慰の話だってそうだ。というかそこだ。ノンフィクションだと伝えて三秒以内に『自慰……』と呟かれる割合というのはいまのところ百パーセントだ。実に四人の人間がその返答をしている。即答だ。二人目までは面白かったがもううんざりだ。もう言ってくるんじゃないぞ。いいな。

閑話休題、誇張の話だ。この話に出てくる様々なものは半笑いの本当とひとさじの嘘で出来ている。一匙というのを人はバスキンロビンスの”ピンクい”スプーンだと思うらしいが違う。ここでいう匙とはアイスクリームディッシャーだ。ワンスクープ三連の三段重ねの嘘だ。これはそのつもりで聞いてほしい。そういうタイプの”ほんとう”、つまりまるであてにならないってことだ。
そういえば家の階段が新しいコガネムシを吐いた。前にいたのは踏みつぶされて塵と消えたが、いつの間にかまた補充されていた。しかも生きているのでまだちょっと動く。

他の場所でも少し書いたが、あの男にはモデルがいる。これは嘘じゃない。が、私の出会った男(男か女かわからなかったが仮に男としておこう)は言葉が不得手なようで、あの『strange-orange』のようには喋らなかった。とにかく彼は私に水をくれと言ったのだ。いや、言ったのだと思う。水を上げたら大喜びで飲んでいたのでその見込みは正しかったのだと思う。おそらく。
発声は独特で、大陸訛りの言葉……いや、フランス語っぽい話し方だったような気もするな……それは別のやつだっただろうか? あー……とにかく私は奇妙に喋る””それ””と会った。それは冬だった。冬の、まだ寒い時期。休館の札がかかった図書館の前でオブジェに腰かけて空を眺めていたときに、そいつはやってきた。そう、そんな流れだったような気がする。一言二言言葉を交わして…………と言いたいところだが、全く理解が出来ず、相手も私の言っていることが理解できていないようだったのでこの表現は正しくない。あんな気持ちはめったなことでは味わえない。たいていの場合相手が誰でも十話せば一くらいはわかるものだ。しかも私はその時語学をやっていた。図書館に行ったのもその為だった。だというのに、私には男の言うことがまるでわからなかった。ボディランゲージも通用しないと言うやつだ! 新しい上司はフランス人!

◆◆◆

めきめ杯が開催されるのはしばらく前から話題になっていて、開催が待ちきれない私はすごいスタートダッシュを切るために一ヶ月くらい前から話を考えていた。そう! 考えていたのだ! 開催初日にみるからにものすごいものを出して人をびっくりさせる! 完璧な計画だ。実際考えがまとまるのは開催二日前で、そこからミューズの声に従うまま五日後に完成の運びとなるが、それはまた別の話だ。間に合ってないじゃないかと問うのは愚問だ。実際間に合っていない。

あのチャーミングな犬耳が”””””啓示”””””をくれるまで、特にこれといって書くことが思いつかなかった私は、『オム・ファタール』でなにか書くぞ、くらいのことをぼんやりと思っていた。そんなような記憶がある。なぜオム・ファタールかと言えば、その近辺でずっとこねまわしていたので理解が深かったのだ。そして理解が深ければ深いほど、付け焼き刃のそれよりも”””良い”””ものが書ける。少なくとも私はそう信じていた。そしてそこに前述の””””””啓示”””””が飛び込んできた。それは『MY SUMMER CAR』のレビューと驚異的な融合を起こし、道に落ちたセミの千里塚やドブのような河、あのむかつく気候とクソッタレな……失礼、忘れてくれ。それと近くに読んだ室生犀星の『蜜のあわれ』を巻き込んでこんな形になった。丁度自分の中でホットな話題だったので視覚的イメージは文豪のゲームの絵柄の影響が色濃い。毛皮、毛皮だからな……!
イメージソースはそんな感じで、この通り色々なものを吸いこんでうまいことブラッシュアップされてできた話だ。匿名で出す関係上、神経をゴリゴリにチューンして書いたので実際二度はできないんじゃないかと思う。というか、脳の演算領域を執筆に割きすぎて書いたあと一週間くらい社会生活に難儀した。奇跡の一作、楽しんでくれたら幸いだ。

そうだ最後にもう一つ。

””タイトルコールとポストスクリプト、男の口癖が繋がったときに、きっとすべての謎が解けることだろう””
解説を読んだあと、あなたが”彼”について考えてくれたなら、それはとても嬉しい。それでは今回はこの辺で。

(山盛り怪文書改め佳原雪)

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