メタモルフォーゼの後書き(ショート版)

完結の記念に後書きを書く運びとなりました。お付き合いくだされば幸いです。(この記事はコピーモデルのあとがきを参考に作成されています)

◆書こうと思った切っ掛けとか
何だったかな。コピーモデルを終わらせたことで『別側面の青髪人間小説』を書こうという機運が高まり、そのように。たしか。何しろ三年も前の話なので。

◆テーマ
前作が愛の話だったので拒絶・無理解に焦点を当てる感じになりました。愛と尊敬のないギスギスした関係。話を練っているときのログに『幼馴染ケンカップル淫乱受け』とあったので、淫乱もたぶんテーマだったんだと思います。蓋を開けたら幼なじみでもなければケンカップルでもないっていうこのていたらく。厳密に言えば受けでもないんですよね。怒鳴られる淫乱。何?

裏テーマとして、コピーモデルの再話をやる、というのがありました。似たような話を書くぞ、と意気込んでいたのは確かですね。二匹目のドジョウやめろ。はい。
前作はエッセンスとして『他人の趣味のものを入れる(例:手袋・ゴム手・異形頭・サイバネティクス)(ほかにもあったかも)』という縛りがあったのですが、今回は『男夫婦・TS・淫乱受け』がそのあたりです。当時(男→女の)TSが流行ってたんですよ。本当に。
それ以外にも、もともと『コピー・モデル』の返歌として書いていた話なので、似たモチーフが多数出てきます。例を挙げると、クローニング、サイボーグ、水、アナトミックな生殖・性別の話、代替可能の命などですね。ああそれと、いつまでも続く日常も。一つの終わりと変化の話だけど、日常自体は永遠に続く。良いですね。それが出口のない円環暮らしなのか、落ちぶれることのない安寧なのか、停滞なのか、沈黙をもたらす死の代替なのかは解釈一つで変わり得る! さあて今回はどれでしょうね!!!!
話は変わって、今回は性暴力の描写に力を入れました。性暴力! BLっぽいですね(熱い風評被害)(今回は屍姦はありません)(そういえば前作、愛と尊敬の話のわりにイニシエーションとして屍姦がでてくるんですよ)(儀式的屍姦描写)(イエーイ)前回に引き続き、世界全体の倫理観の欠如(命の使い捨て)や、他文化の人間同士における価値観の違い、捻れた親子関係のギミック、黙して語らぬ人間複数によるすれ違いの蓄積など、要素要素を踏襲しつつ味わい深い仕上りになったと思います。

トータルとしては、男夫婦で情事のシーンがあるにもかかわらずBL詐欺(その上での女注意)(女注意?)なおかつリバっていう、多方面から怒られが発生するやつになったな……って感じです。これを純正BLだと言って人に読ませるのには抵抗が。いやどうだろう、前回も似た感じだったので……(リバあり・屍姦あり・残酷描写ありのラブラブクローズド研究所生活)(タグ付け要素とそれに相反する要素が同時に出てくる話を書くのは楽しいですね)いつか怒られるんじゃないかと不安なのですが、今のところノー怒られです。位置かカウントが回る日が来るのか。永遠にこないといいね。


◆BL
BL詐欺ですよ!!!!!!! でもメタは男。
『SFといえば男社会! 男社会と言えばBLだ! (ジャンルに対する偏見)』って前回は言いましたけど、外部からのS型第二世代ヒエラルキーだと子供を産む女の方が価値があるんですね。まあ外も男社会なんで、権力者が子供を設けようって話になると必要になるのはS型の女。
内部的な方向で見ても、(第一世代に女王がいたのも相まって)女性の神聖視は発想としてある感じですね。神降ろしの器は巫女であり、この世界の『巫女』は代名詞ではなく原初の女神を示唆するアトリビュートなので、民俗学方面を掘っていけば女系信仰があるんじゃないかと。まあ、遺伝特性で女と男と揃わないと子供生まれない上に今の世代はほとんどがデザイナーズチャイルドなので何言ってんのって感じなんですけども。女神は無から人間を生んだぞ。

うっかり子供を作ってその事実を隠蔽しようとする、って導入からもわかるとおり、アズールは最悪なやつなんですけど、そのほとんどが純粋な悪意によるものではなく、私利私欲やうっかりの結果に集約されるんですね。更に最悪なやつ! ただ事後処理のノウハウがあるので、一度も捕まったことはないです。良いのかそれで。そうしてそこに差し挟まれた『モルフォ』というイレギュラーが本編の導入な訳ですね。余談なんですが、『14歳あたりで排出されるように作られた』、『モルフォになるはずだったメタのクローン』の話が中盤でも出てきますが、アズールは性的な楽しみのために彼を作ったんですよ。そう、二眼くんがやらなかった『性処理目的で素体を作って殺す』を未遂とは言えやっているんですよね。やべーな。あの(浮世離れしていて禁忌を禁忌と思わない)スナップショットがやんわり咎めるような悪事ですよ。しかもそれとは別に臓器のコレクションをしている。ヤバい。話を戻そう。殺さず育てたのは足がつくから、と説明の通りなんですが、いくらクローンといえど(密造に限らずメタモルフォーゼ世界のクローンは『非・人間』扱いを受けるのがデフォ)、いくら情人(メタ)と同じ姿をしているからと言って14の子供を犯すのに抵抗を見せないアズールが、何故モルフォを『対象』に選ばなかったのか、という話が疑問として出てくるんですね。ああ見えてちゃんと風呂に入れたりしているんですよ。本人着衣でですけど。
年若いメタが良くてモルフォがだめな理由。中盤に出るセレナとの結婚話で、アズールが据わりの悪そうな顔をずっとしていたのと絡めるに、彼は生粋の男色愛好者だったんじゃないか、と導き出せるわけですよ。メタにも『男じゃなかったのか』と叫んでいることですし。思い至ってちょっと納得しましたね(無から生える納得)まあ、加害欲求の発露として殺そうとはするんですけど。(最悪)

力関係が対等であることが重要なBL、という話を前回したんですが(しました)、アズールとメタの関係は対等とは言いづらいんですよね。メタは武器を持っているので一見彼がイニシアチブを取り、アズールを完全に御していると見えるんですが(作中で出てこない他の研究職員はおそらくそうだと思っている)、実際は請われて断ることもできないまま寝させられている。さらに、アズールから解放されたとしてもメタのその後は『アルビノに理解のないS型第二世代の中で暮らす』か『S型第二世代に理解のないアルビノコミューンで暮らす』の二択しかない上、メタは『S型第二世代であること・サイボーグであること・本当のアルビノではないこと』をそれぞれに伏せているので、どこに行っても窮屈さはつきまとうんですね。つまりメタはアズールから逃げられない。ただ、少なくともアズールはメタのやること、メタのあり方に一切の干渉をしない。関与どころか関心が無いあまり、何をして何を感じてもさして響かない故の特級人権侵害をかましてくるわけですが、これは銃を向けて言い聞かせれば半分くらいは改善するので……いやどこ行っても地獄だな? 虐待ですよこれは。虐待です。成人男性に対する虐待です。ええ。作者の趣味です。どうもどうも。
話を戻すと、話を聞かない、内心をおもんぱからないというのはかなりポイントの高い虐待なんですよね。まあメタはチェレンだった頃から本人の意向完全無視で身体を弄られたりしていたはずなので(その中で自由意志をもつ脳だけが不要とされた)、こういう待遇には割合慣れて……いやほんとうに酷いな。良いことない人生にもほどがある。男になって『外寄りの空間』で社会人デビューしてからも、自由恋愛市場で取り合いされて、肉体関係を持つ段になる度、その生殖不可能性によって振られてきたんですよ。生殖がある種の美徳とされるS型第二世代であるのに。女性から『男らしさを行使できない』って理由でなじられる男性、純粋暴力って感じですね。可哀想。いや別に可哀想がりたいわけではないんですけれど。よくあることですよこれは。
さて、その上でアズールと娶せられたことが、メタの救いになったのかどうかは引き続き考察の余地があります。アズールの悪名は業界内に知れ渡っているので、彼の名を出せば大抵の用事はキャンセルできるという噂があります。どれだけ悪いことをしたらそうなるんだ? メタは周りから恐ろしく・有能な男だと思われています。アズールを押さえつけておける人間はこの世界にほとんどいないので、アズールの手綱を握っていると言うだけでどんどん評価が上がる。やったね。いいのかそれで。

アズールがメタのことを好きなのは、顔が良いのが大部分、頭が良いのがおんなじくらい、みたいな比率です。あとはまあ、何のかんの言っても自由にさせてくれるし(諦められているとも言う)しかも法を破らないように世話もしてくれる。すごい。秘書かな? 秘書は犯罪をいさめてくることはしないよきっと。好悪。逆にメタはアズールのことがわりと嫌い。当たり前だよなあ? 逆にあれだけ無茶苦茶されて、『わりと嫌い』で済んでいるのは寧ろ好きって事では? でも嫌い。前述の逃げられなさがあるので生かさず殺さずの距離で行かないと寄る辺がなくなってしまう。でもやっぱり嫌い。ただ、肉体特性を理解して、走ってるときには触ってこないのと、熱が上がってきたと言えば最終的にどいてくれる所、真冬に薄着で冷房のついていないところうろついていても何も言ってこないのはわりと得がたいな相手だなと思っている。これで何人かやけどさせたに違いない。正常性のパラメータとしてルックスがものを言うので、肌を焼く(物理)のはある種のタブーなわけですね。まあこれは現代社会でもそうか。

そういえば前作に引き続き、今回も性別捻転があるんですよ。前作の『子供を産む事を期待される男×女神の遺伝子を身体に宿した男』って組み合わせに対して、『遺伝子上の親である男(女)×パートナーから貰い受けた遺伝子によって子供に肉体を与えた(産んだ)男』になっています。メタとアズールのどちらが母親でどちらが父親か、というのを考えて貰うと捻転っぷりがわかりやすいと思います。モルフォにとっては親はアズールだけど、アズールとモルフォに血縁関係はなく、メタは親だが、彼自身はモルフォの出生には関わっていない。ややこしくなってきた。

受け攻め(男役・女役)で言えば、『メタ×アズ』で、社会的な親子関係で言えばアズールが男親で(しかし母体を用意したものアズール)、遺伝子的親子関係で言えばメタが親(性別不明)な訳です。まとめると、『独立した軸がたくさんあり、それぜんぶに求められるジェンダーロールがあり、両者男にもかかわらず男女のジェンダーロールを互いがてんでばらばらに拾っている』という話ですね。まとまってます? 分からなかったら読み飛ばしても良いですよ。とにかくこの辺はややこしいので。


因みにこの後書き、原文通りに書き連ねていくと優に三章分の文字量を超します。どんだけ書いてあるんだよ!! 前回は一万字くらい描きました。半分くらい『物語の描かれた背景の』解説だったので、今回は反省してもうすこし実のある話をしようと思います。実のある話。実のある話って何だ? 大分本編で滅茶苦茶を書いたのであんまり追加で書くこともないわけだけれども。と言うかいったんここで終わりにしよう。読む方だって疲れるだろうし。


前回の分には『やりたかったこと』という段がありまして、これはまあ前回読んだ人には言った話なので省くんですけど…… とにかくこう、よこしまな話が書きたかったんですね、前回も今回も。間に三年……いや、五年弱くらいの間があるのでその間色々ありまして、前回は脳が溶けるほどあまあまだった訳なんですが……何の話だ? まあ早い話、この空白の三年の間に成人男性の虐待ものに落ちまして。ないんですねこれが。無いんですよ。前回の時も青い髪の博士が出てくるSFはねえのかといってインターネットで暴れ回っていたわけですけど、今回もなかったんですよ。資料が。男夫婦もない。男夫婦に娘一人のひな形もなければ、成人男性の精神的リョナもない。ないんですね~~~~ 本当にびっくりした。というかそもそもリョナの人間(雑な括り)(これは当然と言えばそれまでなんですが)リョナ目的で読み書き(誤用)をするので、まともなフルスクラッチの物語に要素としてそのままのエッセンスを取り入れるには若干味が勝つといいますか、まあ喧嘩するんですね早い話。ねじ伏せていけ。死んだ。

ねじってねじって腕が捻れていくわけですよこれが。とんでもないな。そして毎回襲われる二万の壁。二万字超えたあたりから違法建築的に増やしていた文字数を体系立てて組み直さなくちゃいけないので、これが難しい訳なんですよ。連載とか出来ないな。幸いオチの部分は決まっていたんでそこまで線を繋ぎ繋ぎ書くだけだったんですけど、まあそれがどれだけ『だけ』じゃないかって言うのは知っての通り。オチが決まってたって言いましたけど決まってたの『希代の青』だけですからね。知性の青の半ば以降から全文書き下ろしです。しかも三回くらい前編改稿をしている。いやまあ連載とかしてないんで構造的にはほとんど書き下ろしと言って差し支えないんですけれども。大変だった。かぐわしい勝利! ビクトリーのブイ。

◆おわりに
青い髪の人間がどうこうするのが見たい、といって様々を書いてきたわけですが、とにかくバリエーションを変えて書き続ければいつかは理想に到達する、という構造があるんですね。頭の中に。あるんですよ! しかしこれは、理想のイデアである女神を権限させるために交配を繰り返して生食が茶を回し続けるS型第二世代のデザインコンセプトと似通うところがあるのでは?と思った次第です。次は何年かかるかな!? わあい考えたくないなあ。

(いったん終わり)

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