見出し画像

また妻と、城崎に帰りたい――夫婦円満の湯「鴻の湯」に入る朝は、いつも少し切ない【旅行記その2】

兵庫県豊岡市にある城崎温泉には毎年必ず妻と訪れるのだが、今年は両親の還暦祝いを兼ねて、ぼくと妻、父と母の4人で旅行に行った。今回のnoteでは、前回に続いて、城崎旅行記その2をお届けする。

今年の城崎旅行記(2日目)

城崎の朝食は、どこの旅館もなかなかに豪華だ。ぼくと妻が普段よく利用する宿は卵かけご飯が名物なのだが、今回泊まった宿は、いろんな食材をバランスよく提供してくれているといった感じ。カレイの一夜干しや卵焼き、湯豆腐など、朝から食べるにはお腹がいっぱいになるメニューだった。ごはんは豊岡市が誇るコウノトリ米で、おかわり自由。普段朝食を摂らないライフスタイルのぼくにとっては、胃がびっくりするようなボリュームだ。もちろん、残さず全部おいしくいただいた。

朝食後は、チェックアウトまで自由行動。ぼくと妻は、いつも城崎に来たらこのチェックアウト前の自由時間に夫婦円満の湯「鴻の湯」に入りにいく。

画像引用:豊岡市フォトライブラリー

この「鴻の湯」は、城崎温泉の外湯のなかで最も古くから開けた湯で、舒明天皇の御代(1400年前) 、コウノトリが足の傷を癒やしたことから発見されたといわれており、ぼくが一番好きな外湯だ。館内には内湯と小さな露天風呂があるだけで、「御所の湯」ほど広くもないし、「一の湯」のような洞窟風呂もないけれど、晴れた朝に「鴻の湯」の露天風呂に浸かってひとり物思いに耽る時間は、なにものにも代えがたいものがある。

画像引用:豊岡市フォトライブラリー

いつも「鴻の湯」の露天風呂に入ると、城崎旅行の楽しさと、それがもうじき終わってしまうことへの寂寥感から、少し切ない気持ちになってしまう。次はいつ来られるだろうか、また妻とここに帰ってきたい――そんな思いを抱きながら温泉に浸かり、丁寧に手入れされた庭園をぼーっと眺める。この時間が、ぼくにはとても大切だ。今回の城崎旅行でも、妻とまた城崎に来られたこと、両親の還暦祝いができたこと、おいしいカニ料理を堪能させてもらったことなどが思い出され、感慨にふけって30分以上も浸かっていた。

「鴻の湯」から帰ると、チェックアウトを済ませ、ぼくたちはお世話になった旅館をあとにした。チェックアウト後はいつもなら温泉街で食べ歩いたり、お土産を買ったりするのだが、今回は初城崎の両親が一緒なので、オーソドックスな観光地に足を運ぶのも悪くないと思い、「城崎温泉ロープウェイ」を使って、近くにある大師山の山頂まで登ることにした。

画像引用:豊岡市フォトライブラリー

大師山の山頂から見渡せる景色は、「ミシュラングリーンガイド」で一つ星に選ばれているほどの絶景。城崎の温泉街や円山川を一望できる壮大なパノラマは、何度見ても見惚れてしまう。この日は天気もよかったので、より一層綺麗な、澄み渡った景色を楽しむことができた。

山頂にある「みはらしテラスカフェ」では、名物のかわら投げをするためのかわらけ(素焼きのお皿)を購入することができる。奥の院大師堂の正面にある投げ処で、このかわらけに願いを込めて投げ、一願成就の的にヒットすれば願いごとが叶うという。せっかくなので、ぼくたちは4人分のかわらけを購入し、チャレンジすることにした。ぼくと妻は過去に何度かこのかわら投げをやったことがあるのだが、いままで1枚も的に当たったことがなく、難易度としてはなかなかのものだと思う。しかし……

母、なんと当てていくゥー!! すごい、当てる人初めて見た……しかも、初チャレンジで。どんだけ持ってるんだこの人。ただ、どんな願いごとをしたのかはなぜか教えてくれなかった。おそらく最近熱狂的にドハマリしているBTS(防弾少年団)に会いたいとか、そんな感じの内容だとは思うが……。ちなみに、ぼくや妻、父のかわらけは1枚も的に当たらなかった(笑)。

画像引用:きのさき温泉観光協会公式サイト

かわら投げを楽しんだあとは、温泉街に戻り、「SACCA」というフレグランス専門店へ。ここでは、客がたくさんある香りをひとつずつテイスティングしながら、専任スタッフと一緒に自分だけのファブリックミスト(直接肌につけるのではなく、衣類や寝具などの生地や織物にふりかける香水のこと)を作ることができる。以前、妻とふたりで訪れて楽しかったので、今回は両親にそれぞれ香水をプレゼントすることにした。

ハワイが好きな父は、ココナッツ系の甘い香水を作っていた。一方で、母は(どんな香りをチョイスしたのかは忘れてしまったが)、店員さんに香水の色を紫に着色してもらい、「Dynamite」という名前をつけて印字していた(紫はBTSのグループカラーで、「Dynamite」は彼らの代表曲)。もちろん楽しみ方は各者各様なのだが、還暦を迎えてもよくここまで韓流アイドルグループに熱狂できるものだなあと、ある意味感心してしまった。

画像引用:きのさき温泉観光協会公式サイト

香水を作り終えたら、今回の城崎旅行最後の食事を食べに「おけしょう鮮魚の海中苑」へ。ここの海鮮丼は鮮度抜群で、めちゃくちゃおいしいのだ。城崎は日本海がすぐそこなので、毎日新鮮な魚介類がたくさん水揚げされる。ぼくたちは初日に牛肉(但馬牛バーガー)とカニは堪能したが、魚だけはまだ食べていなかった。父と母に、ぜひ城崎のおいしいお刺身を楽しんでもらおうと思い、最後の昼食はここに決めた。マグロ、エビ、イカ、サーモン、イクラ、ブリ、ウニ、そしてカニ――豪華な魚介類が惜しげもなくふんだんに使用された海鮮丼は、筆舌に尽くしがたいほどおいしかった!

画像引用:きのさき温泉観光協会公式サイト

昼食後は、デザートに城崎プリン専門店「生萬きまん」を訪れた。ここのプリンは砂糖少なめで、卵の黄身のみを使用して丁寧に作られており、本当に絶品。ぼくも妻も、毎回必ず立ち寄るほどに大好きなお店だ。

「たまごプリン」、「クレームブリュレ」、「Kimanプレミアム」という3種類のプリンがあるのだが、ぼくのオススメは、これらのプリンがセットになった「アソート」。ひとつひとつの大きさは単品よりも小さめだが、一度に3種類すべての味を楽しめるので、お得感がある。個人的には、特にクレームブリュレが最高で、なんならいままでの人生で食べたクレームブリュレのなかでトップ・オブ・トップの味と言っても過言ではないほど。城崎を訪れたら絶対に食べるべき名スイーツだと思う。

プリンを堪能したぼくたちは、帰りにお土産を少しだけ買って、城崎の街をあとにした。最後に帰り道の途中で、玄武洞公園に車を寄せて、国の天然記念物である「玄武洞」を観光した。この玄武洞は、160万年前の火山活動によって山頂から流れ出したマグマが、冷えて固まる時に作りだした規則正しいきれいな割れ目が特徴的な洞。六角形の無数の玄武岩が積み上げられた不思議な美しさには、大自然の神秘を感じざるをえない。そのあまりの壮大さに、ぼくたちはしばらく言葉をのんで見上げるほかなかった。

――こうして、今年の城崎旅行は無事に終了した。すごく楽しかったし、これが初めての城崎だった両親にも喜んでもらえたので、こちらも頑張って企画した甲斐があったという思いだ。城崎には、ぼくたちが今回訪れたところ以外にも、「城崎文芸館」や「城崎マリンワールド」など、素晴らしい観光地がまだいくつもある。とてもじゃないが、1泊2日ですべてをまわり切るのは不可能なので、これらの紹介はまたの機会に残しておく。

近いうちに、今度は妻とふたりで、また城崎に帰ってきたいと思っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?