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期待と不安の狭間で ~NMB48『想像の詩人』~

この曲は、NMB48の2ndアルバムに収録されている、当時の研究生たちのために書き下ろされた楽曲。
後に、この曲と同じタイトルを冠した研究生公演が行われましたけれども、研究生全員昇格ということで、好評のうちにわずか半年足らずで終演しています。

ところで、これは推測ですけれども、この楽曲のモチーフといいましょうかヒントになっているのは、2ndアルバムがリリースされる半年ほど前に起きた、城恵理子の昇格辞退という出来事なのではありませんかね……。
城恵理子は、2期生としてNMBに加入し、わりと早くに正規メンバーに昇格もしていますけれども、加入してわずか1年半ほどで1度卒業しているのですよね。
卒業後1年後に4.5期研究生として再加入するのですけれども、再加入して4カ月後には昇格発表があり、そのことに対して周囲からも様々な声があり、また自分自身の戸惑いもあって、受け入れるか辞退するかで2転3転した揚げ句、最終的には辞退してしまうわけです。
そして1年後、他の研究生たちとともに昇格したのですけれども、おそらく、彼女の心の内ではいろいろと葛藤があったのだろうと思います。
一方で、他の研究生たちについても、タイミングとしては、そろそろ昇格を意識し始める頃でもあり、これから先の未来への期待やら不安やらも募ってきている時期だったわけです。
そういった彼女たちの心の揺れ動きを描いたのが、この曲なのではありませんかね。

1番の歌詞では、未来への期待が描かれています。

木の葉の
その背中に転がる
朝の雫のように
ちっぽけでも
とにかく僕は透明なまま
ずっと飽きることもなく
空を見上げたい

経験も浅く未熟な自分だけれども、目指すべき目標に向かって、純粋な気持ちのまま突き進んで行きたいといったところでしょうか。

誰かが言う
大人になることは
ここではないどこかを
知ること

人は成長していくにつれて、様々な経験を積み、いろいろな知識を身に着けていくことになる。
そしてそれは、今自分を取り巻いている世界よりももっと広い世界を知るということでもあるわけです。

1サビ前半

遠く鐘が聴こえたら
僕は思い浮かべよう
まだ行ったことない
世界とか
いつか出逢う大切な人

そろそろ次のステップに進む時期が来たときに、あるいは、別の新たな世界へ踏み出そうというときに、想像するわけです。
これから向かう先で、自分の目の前に広がる世界はどんな景色を見せてくれるのだろうか。
そしてまた、いったいどんな素敵な人に出会うことになるのだろうかと。
そんな期待に胸を膨らませているのでしょう。

1サビ後半

喜びとか悲しみは
どんな風になるのだろう
想像の詩人がいつしか
僕のこと迎えに来る
その日まで

新たな世界に踏み入ったとき、喜びだとか悲しみだとかの感情はどんなふうに変わっていくのだろうか。
今いるこの場所で感じるものとは違うものになるのだろうか。
そんな想像をたくましくしながら、その日が来るのをワクワクしながら待っているといったところでしょうか。

2番の歌詞では一転して、未来に対する不安が描かれています。

ゆっくり
ふわふわ流れて行く
晴れた日の雲のように
過ぎる時間
確かに僕は不器用だから
もっと今のこの場所で
考えたいんだ

落ち着かない気持ちのまま時間だけが過ぎてゆく。
自分はしっかりした考えを持っているわけでもなければ、要領よく物事を進められるわけでもない。
もう少し今いるこの場所で、様々な経験を積んで、いろいろと考えてみたいということなのでしょう。
期待もあるけれども、自分の知らない世界のことですから、やはり不安も生じてくる。

あきれられた
大人にならないとは
向上心が
ないのかなんて

なかなか踏ん切りがつかなくてグズグズしているものだから、大人たちに呆れられてしまったのでしょうかね。

2サビ前半

遠く鐘が聴こえたら
僕はそっと目を閉じる
見たくない
現実のあれこれ
耳もきっと塞ぐのだろう

別の新たな世界へ踏み出さなければならないとなったときに、想像するわけです。
今いるここでは見ることも聞くこともなかったような嫌なことを、これから向かう先で目にしたり耳にしたりすることになるかもしれない。
そんな不安が募ってきて躊躇(ちゅうちょ)してしまう。

2サビ後半

まだ少ない思い出に
満足してるわけじゃなくて
想像の詩人の言葉に
あまりにも感動して
踏み出せない

今いるこの場所で、もっといろいろな経験ができるだろうし、学ぶこともたくさんある。
まだまだたくさんの思い出も作れるはず。
そんなことを考えてしまうと、なかなか次に踏み出せないといったところでしょうかね。

ラスサビは1サビと同じ内容で、再度未来への期待に転じている。

学生から社会人になるとかといったような、何か一歩踏み出さなければならないようなときに、人は誰でもその先の未来に対して期待と不安を同時に抱くものです。
この曲は、そういった期待と不安の狭間で葛藤する若者たちの心情を描いているわけです。

引用:秋元康 作詞, NMB48 「想像の詩人」(2014年)


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