tapioca

夏が嫌い。 最近好きな作家はジョセフコンラッド。

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ツワブキ

知らない、野菜を手に取って でもそれは、知ってるものと 似ている 何にも似ていないものは 段々と私の世界から減ってきた そのことを苦く 寂しく思っているだろうか わからない 父の書棚から こっそりでなくヘッセ詩集を抜き取り 誰にも言わない旅に連れていく 私の日常は肉感を失っている 繋がりへの希求は煩わしくなり バランスを欠いているのは 世界ではなく私であるか ゆるやかに死にゆく誰かを 見送る時間を引き伸ばしたような日々 どんなものもそばに置けば腐ってゆく そんな僕の住処は

    • 待ち合わせ

      まだミモザが咲いているか 確かめに行った僕は 十日前、人だかりの中心にあった木々が 今日は素通りされていくのを目撃した 僕は君を探すように まだ黄色いミモザを探して歩き回った そして端っこの方に すみっこの方に 楽し気に揺れている黄色の塊を見つけた 君だ 君が僕を待っていてくれた 君が僕にとっておいてくれた 僕は愛しく眺め そっと触れた 君の愛らしさに敵うものなどこの世には無い それでも僕は この世の全ての黄色いものに これから君を重ね合わせて生きていくだろう 君のい

      • 一同は広島へ

        その気配に怯えながら愛した 血の呪いからも 輪廻の鎖からも 本能の質量からも ついに逃れることが出来なくても それがわかっていても 君の手を取ったのは どんなに汚くてもそれを 愛と名付けるしかなかった どんなに痛くてもそこへ 向かうしかなかった あの頃の僕を

        • ミモザとヘッセ

          ミモザ、ミモザ、ミモザよ 君の骸を囲ったミモザよ 君と共に炎に包まれたミモザよ 僕は君を探して あの部屋から春に引きずり出された ヘッセの絶望に触れながら 隣の女の会話が耳に入ってくる 生きる者は興味深い とうに死んだ詩人より 初七日だの四十九日だの 生者はとかくうるさくする 君は何の悪事も働かなかった 勲章に相応しくても 裁きを受ける謂れはない だから君よ早く生まれ変わって 僕の手の中に戻っておいで 何度でも僕の人生を君に捧げよう 恐れも痛みも喜びも全て 君への愛の内

        ツワブキ

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          7本

        記事

          錯覚

          君が生きていることを 左手で確かめながら 過ぎてゆく時間 死へ向かってゆるやかに 強まる絆に縋りついた 離れてゆくのに 近づいてゆく 別れは僕たちを 分かちがたく結びつける 共にすごした日々も 出会う前の僕も ひとりになった後のことも すべて同じことだ 君の気配で満たされている 死を恐れ怯えながら 君と世界の片隅で生きてきた 世界中のどんな不幸も 君に振りかからぬように願った 愛に迷いがなくなったのは 身を裂かれる痛みを知ったから せめて僕は全てを懸けたと そう思い込

          手段

          何かと関わる手段を 何かに倣うことをやめてみたい どうやってそれと関わるか それは自然と現れてくるもの 浮かび上がってくるもの 媒介者を限定しなくていい ある手段をもって 関わることが困難であっても 確かに何かと常に関係して 生きているのだから 僕はどう世界と関わる? 僕はどう君と関わる? それを規定した途端 全てをつまらなくしてしまう 想いの望む姿を 探り出して掘り当てていく 感情の行く先は 感情に決めてもらおうか 漂流の最中でさえ 何かと繋がり続けている 君は僕と

          きみ

          君はあの雨の昼下がり 僕の手の中で永遠になった もう君を捕まえるものは何も無い 大空へ羽ばたき 太陽に触れても焼けることが無い 出会いの日からずっと 後悔することが怖くて 毎日愛の言葉を囁き続けた それが自分自身のためだと恥じていたが 君を失って気付く 君が好きだと言ってくれたのは 僕を好きでいてくれたからなのだと 後悔を先に立てようとすると 別の後悔が生まれる仕組みらしい とにかくそれはやってきて 中には何かが詰まっているらしい だって完璧な愛なんて 人間の手では作れ

          ずっと

          君を失うのが怖かった 出会った日からずっと ずっと怖かったけど 君がいなくなっても その気持ちは消えなかった 愛したそばから 僕の心は綻びはじめる 永遠を望むはしから 時が漏れ出てきて 僕はゆっくりと溺れていく 恐怖の混じった喜びは 胸を繰り返し貫いた そうだいつかまた孤独になる 手を離さなければならない日が来る どれほどの時間を過ごしても 僕たちは決してひとつになることはない いつも出会い続ける そして別れ続ける 一瞬一瞬 君と生死を繰り返す 世界中のかわいいを

          雑感

          最近、鳥のお世話マシーンと化している私ですこんにちは。 (最近か?) 彼は今(執筆開始時)も私の左手でお食事中です。 片手タイピングが速くなっていきます。 温度湿度を上げ、 食べさせ、飲ませ、糞をチェックして処理し、 住まいはバリアフリーにして、 おがくずを替え、汚れた木やおもちゃを洗浄。 調子のいい日は一時間ごとに食べてくれる! 彼は老鳥で腎臓が弱っていて、 獣医さん曰く「不味くて皆(鳥の皆さん)なかなか食べてくれない」らしい 低たんぱくペレットのみの食事をしています。

          左手

          私の左手の中で生きているあなた ぬくもりで 身じろぎで あなたが生きていることを 私は確かめ続ける 声を出せなくなってから 心は次第に近づいた 愛は恐れを巻き込んで どんどん膨れ上がっていく 後悔を恐れて 懺悔のように 謝罪のように ただ抱いて過ごす 不自然な暖冬を 越えたらふたりで 痛みのない世界へ 私の左手に棲みついたあなた 今あなたとひとつになって生きている だったら一緒に行きたいよ 悲しみのない自由な空へ あなたの小さな翼で

          空間

          答え を 探している 出そうとしている いつも 正解に〇をもらいたくて 考えていた あなたの気持ちは ぼくが考えてもわからないし ぼくの気持ちは あなたが考えてもわからないし ぼくもあなたも 自分の気持ちがわからない でもなぜか ぼくは証拠を掻き集めて 人の気持ちを決めようとしている 愛の証明 悪意の証明 いくら記憶を旅しても 道の駅は見つからない 暗い道は地獄を巡って 終わらない苦痛のための労働 そうだね 疲れてしまったね 僕を悪に縛り付ける あらゆる言葉を憎んだ

          無感動ショコラ

          僕を支配していた あなたがいなくなった 僕の心に巣食い 僕の体を蝕み 僕を作りながら 破壊し続けたあなたが いなくなった 取り残されても あなたは消えなくて 僕はあなたの形にくりぬかれたまま 床に転がって天井を見上げている 手に入って求めるのをやめたら 嫌悪と憎悪が暴れ出す 悲しみと痛みは 存在を認められやしない 手に入れるどころかその手で作り出したのだから 好きに壊して遊んでいたんだろうね 新雪を踏み荒らすように 無遠慮な足と言葉で 愛など諦めてしまえばいいのに 今

          無感動ショコラ

          心中

          君が死んだら僕も死ぬ それって心中って呼ぶかしら いやいや後追いと言うのだよ 君を殺して僕も死ぬ それなら心中と呼ぶのかな いやそれは無理心中というやつだ 無理じゃなければいいのかい そうそうお互い望んで死ぬのが 無標の心中の指すところ 一家心中はどうなのさ 子供は同意していないでしょう そうだね三人以上は複雑だね 夫婦心中って言葉はないね そうだね夫婦はたぶん 別れるか殺し合うんじゃないか 太宰は何の罪に問われるの どうかな相手を殺してなければ なかなか罪には問い

          魂とはいつも どこかへ出て行きたがる そして出た先で園を作り その外へとまた出たがる 繰り返し繰り返しそうやって 浸かっては上がりを重ねて 創っては壊しを重ねて 拾っては捨てを重ねて 入っては出てを重ねて 魂とはいつも ひとところに留まりたがらない だのに人はいつもそれを どこかへ縛り付けようとしている 己を誰かに 誰かを己に 心を思想に 身体を現世に どこにも依らない魂は いつも宙を舞っている 空を掴み太陽を越えて 天を巡りまた体へ戻ってくる それを幾度となく繰り返し

          文栄フ利マ京徒…出店決定

          こんばんは~。 昨年…だっただろうか、文岳不利魔に申し込んだはいいものの、コロナが怖くて出店取りやめをしたのは。 今年もまあまあ悩んだけれど、いつかはリベンジするだろうと思ったので、 いつやるの!?今でしょ!?ってことで、申し込み&参加費支払いが完了しました。 何を出品しようかな?とちょっとワクワク。 そして何を着るかとか、のぼりとか看板とか色々準備もしなくては…。 焦らない焦らない。 自分が作れるものを色々持っていこうかなと。 保管してあるうさぎおみくじとか。 布小物とか

          文栄フ利マ京徒…出店決定

          短詩集 嘘

          1.明日がないなら未来のことは全部嘘だね 2.嘘つきと呼ばなきゃあの子は弱虫で済んだ 3.いつかバレるか誰かが知ってるホントのことも嘘のことも 4.いちごの数だけ作り笑いした人生 5.嘘が描く混沌と矛盾のマーブル模様が世界ってやつさボーイ 6.100万部売れたら何でも正義です 吸い込まれてくぼくのまごころ 7.心にもないことを言えるようになったら大人なんだね 8.本当のことを話すには あなたは少し理不尽すぎて 9.嘘にも美醜があってねぇ あの時のあれは酷かった

          短詩集 嘘