【雄手舟瑞物語#8-インド編】閑話休題、僕がインドに来た理由

「地球の歩き方」を読まず単独行動をしたおかげで、インド到着初日からとても”素敵な”体験をした。インド旅行2日目の話を本格的に始める前に、そもそもどうして僕はインドに一人旅をしに来たのか一旦時間を遡る。

当時僕は経済学科に在籍する大学2年生だった。僕は訳あって希望する学部に入れず、その代わりに絵に描いたようなキャンパス・ライフを送ってやろうと思い、一念発起してキャンパス・ライフの王道、テニス・サークルに入った。勉強には一切興味が持てず、実家のコンビニとコールセンターの深夜バイトに明け暮れる日々。サークルでは付属高校時代からの同級生と数人を除いて、あんまりしっくり行っていなかった。テニサーに付き物の、いやテニサーの代名詞である「飲み会」についていけなかった。コールをして、飲んで、吐いて、肩を組んで歌って、道端で潰れて、介抱しないと先輩が怒る。意味が分からない。そこに「コミュニケーション」はあるのか?個人はいるのか?いつも隅の席で青田君とタバコを吸いながら冷めた目で彼らを眺めることしかできない青年。殻を破れない内気な僕。

2年生になると、自分を勧誘してくれた4年生は引退し、何の縁もない新しい幹部である3年生にイライラすることが多くなった。僕の実家はコンビニだった。小さい頃から大学生に囲まれていたこともあり、年上を見ても先輩というよりも友達の感覚の方が強かった。先輩風を吹かす人に、つい嫌悪感を抱いてしまうのは、きっとその影響である。僕のテニス・サークルは老舗サークルだったが故、マイルドな仮面を被りながらもやはり「ザ・日本社会」「ザ・年功序列」感を有していた。その偽善に対する苛立ちが徐々に抑えきれなくなってきた時期だった。僕は先輩からタメ口で話すことを優しく注意され、「一歳や二歳違うだけで、敬語を使うって意味わかんないんだけど」と切り返し、炎上。僕はこういうことをわざとしていた。すいません。

そして夏前。サークルの部室で休んでいると、3年生たちが楽しそうにやって来た。「夏合宿のしおりできたよー」「八ヶ岳楽しそー」皆、受け取ったしおりを読んで盛り上がる。しかし、僕はしおりに書かれた一語に激しく反応した。

「強制参加」

僕はこの手のワードに滅法弱いのだ。

「強制参加ってどういうこと?体育会でなく、サークルですよね?体育会の真似事ですか?(笑)」いつもの如く、優しいメンバーが「雄手、まあまあ」と声を掛けてくれる。本当に良い友達に恵まれたと思う。それでも「サークルのくせに強制とは何事だ!」と僕は抑えきれない憤りを同期に伝え、「だったら、サークルのワーキャー夏合宿の正反対のことをしてやる!」

僕はついぞ数日前に聞いたコンビニ深夜バイトの先輩のインド一人旅の話を思い出し、「サークルのワーキャー夏合宿」の正反対=「初海外かつインド一人旅」という構図を浮かべた。そして、「俺は強制夏合宿には参加せず、インドに一人旅をする!」と一人勝手に宣言し、インドに至るのでありました。今となっては、それほどに「絵に描いたキャンパス・ライフ」や「サークル活動」を楽しむ人々に憧れていたと素直に認めよう。

さて次回はラジャとの旅の話に戻ります。


(前後のエピソードと第一話)

※この物語は僕の過去の記憶に基づくものの、都市伝説的な話を織り交ぜたフィクションです。

合わせて、僕のいまを綴る「偶然日記」もよかったら。「雄手舟瑞物語」と交互に掲載しています。


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