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そこには見てはいけないもの、なにか大切な、語られるべき物語が埋まっている…★劇評★【舞台=贋作 桜の森の満開の下(2018)】

 そこには見てはいけないもの、なにか大切なものが埋まっていることに、早くから気付いていた。それでなくても人柱が埋められているとか、花見はこの世ではない極楽の景色を見る儀式だとかおどろおどろしい気配に包まれた場所だという印象付けがされていて、近づきがたい場所だった。しかし桜の下に私たちが本当に知るべき真実が隠されていることにはほとんど確信に近いものがあった。ましてや満開の桜の下には、それだけでひとつの結界をかたちづくってしまえるほどの不思議なパワーがあり、人々はほとんど夢うつつの表情になってしまう場所だからだ。そんな私たちの共同幻想の中に、日本という国の理(ことわり)を封じ込め、それをあえて解き明かすような不思議な物語として提示し、世紀末へと向かう演劇界のみならず日本社会をも揺るがした野田秀樹の「劇団夢の遊眠社」時代の傑作がNODA・MAP第22回公演「贋作 桜の森の満開の下」として上演されている。しかも妻夫木聡(『キル』『南へ』『エッグ』(初演/再演)『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』)や深津絵里(『贋作 桜の森の満開の下』『キル』『半神』『農業少女』『走れメルス』『エッグ』(初演/再演))、古田新太(『贋作 桜の森の満開の下』『贋作 罪と罰』『ザ・キャラクター』『MIWA』『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』)、天海祐希(『パンドラの鐘』)、秋山菜津子(『THE BEE Japanese Version』、『エッグ』(初演/再演))池田成志(『THE BEE Japanese Version』『MIWA』『逆鱗』)、大倉孝二(『贋作 桜の森の満開の下』『赤鬼』『パイパー』『エッグ』(初演/再演))、藤井隆(『ザ・キャラクター』『エッグ』(初演/再演))、村岡希美(『贋作・罪と罰』『キル』)、銀粉蝶(パンドラの鐘』『ザ・キャラクター』『南へ』『逆鱗』)ら「劇団夢の遊眠社」解散以降の野田演劇のアイコンとでも呼ぶべき面々が一堂に集い、野田演劇の神髄のひとつである作品を舞台狭しと動き回りながら創り上げている様は、再演というよりも、壮大な初演作品づくりにも匹敵するダイナミズムにあふれた舞台となっており、隠しがたい高揚感が劇場を包んでいた。作・演出は野田秀樹。
 NODA・MAP公演「贋作 桜の森の満開の下」は9月1~12日に東京・池袋駅西口前の東京芸術劇場プレイハウスで上演された後、フランス時間9月28日~10月3日にパリの国立シャイヨー劇場で「ジャポニズム 2018」のプログラムとして上演。10月13~21日に大阪市の新歌舞伎座で、10月25~29日に北九州市の北九州芸術劇場大ホールで上演された後、再び、11月3~25日に東京・池袋駅西口前の東京芸術劇場プレイハウスで上演される。

★舞台「贋作 桜の森の満開の下」公式サイト
https://www.nodamap.com/sakuranomori/

★チケット情報(東京公演・大阪公演・北九州公演)=最新の残席状況はご自身でお確かめください。
https://www.nodamap.com/sakuranomori/ticket/

★パリでの上演スケジュールはこちら
https://www.nodamap.com/productions/sakura2018/schedule_paris_sakura2018.jpg
★国立シャイヨー劇場公式サイト=フランス語と英語のみ選択可
http://theatre-chaillot.fr/

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